第20回 ラオス・第1回視覚障害者ITセミナー(その2)

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ITの可能性を説明

「視覚障害者の皆さんがITを活用することによって、皆さんの生活の質が大きく向上します」
1月22日、23日にラオスで行われた「視覚障害者ITセミナー」で、元JICA研修員シンサイ・ローさんが自らのアクションプランの成果発表を行いました。

残念ながら現在、視覚障害者に対するラオス政府の社会福祉支援は皆無であり、また教育面でも視覚障害者がITを学ぶ機会はほとんどありません。シンサイさんは、指導者に視覚障害当事者が少ないためにニーズの把握が難しい、とラオスが抱える問題を分析。パソコン音声ソフトJAWSプログラムの説明では、このプログラムが視覚障害者の情報バリアフリーに寄与すること、パソコンが使えるようになれば視覚障害者の人々の就労への機会も改善されることを力説しました。

シンサイさんの生徒であるジョットさんとケオ君も、IT習得のその経験を仲間の視覚障害者に話し始めました。
「コンピューターを習う前は、村でマッサージ師として働いていました。パソコンを勉強しないかと今回IT教室に誘ってもらったのですが、初めはコンピューターがどんな形をしているのかも分かりませんでした。」
「昨年の7月にITを教える所があると聞き、実家に帰るより面接を受けてみようと思いました。コンピューターやインターネットという言葉は聞いたことがあったので、とても興味を持ちました。その時英語で分かるのは“OK”という単語くらい。一所懸命勉強して、今はどうにか英語も理解できるようになり、JAWSプログラムでインターネットにもアクセス出来るようになりました。以前は海外の友人との連絡はとても難しかったのですが、音声ソフトでEmailを使って連絡が取れるようになりました。視覚障害である自分がここまで上達できたのはとても嬉しいことです。もっともっと多くの視覚障害者にITの勉強の機会を与えて欲しい。シンサイ先生、ありがとう!今度は僕らが講師になって、もっともっと多くの仲間に貢献したいです!」
ジョットさん、ケオ君の期待以上の学習効果と強い決意表明に、シンサイさんの顔から笑顔がこぼれました。

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パソコンに触れてみる参加者

「次のコースはいつ開始しますか?」「どうすれば応募できますか?」
参加者から矢継ぎ早の質問がシンサイさんたちに寄せられます。ひとつひとつの質問から、参加者がいかにこのプロジェクトに興味を持っているかが分かります。しばらくして一人の全盲の青年が恥ずかしそうに手を上げました。
「私は30歳で、英語も全然できません。それでもITを勉強できますか?とても興味があります。自分の可能性を広げたいです…」
シンサイさんと生徒のケオ君が顔を見合わせてニッコリ。
「生まれながらに何でも初めからできる人はいませんよ!大切なのはやりたい、頑張りたいという気持ちです。僕だって英語も全く出来なかったけれど、やりたいという気持ちがあるからこうして今があります。」
「今まで暗い生活をずっとしてきました。このITの勉強のお陰でやっと明るい光を照らしてもらいました。この明るい世界に終止符を打つのはもういやです。だから一緒に頑張りましょうよ!」
力強い連携、希望に満ちた当事者からの真実の声。それがシンサイさんたちを、そして聞いている私達をも突き動かす大きな力となるのでしょう。これこそが本当の意味でのエンパワーメント(自分自身を力づけていく)なのだ、と彼らの活動を見ていて強く感じました。


(財)日本国際協力センター(JICE)研修監理員 前島 由希