第21回 ラオス・第1回視覚障害者ITセミナー(その3)

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シンサイさん、ラップトップをケオ君に

視覚障害者ITセミナーが無事終了し、ラオスのJICA元研修員として、シンサイ・ローさんたちは「視覚障害者のIT支援」に関するアクションプランを全て終えたことになります。
JICAとの約束。半年前、彼らが提出したアクションプランを改めて読み返してみると、これほどしっかりと、一歩一歩着実に実行できたアクションプランが今までにあっただろうかと思えるほどに、彼らの計画は思い通りに進んでいきました。

ここで第三者として冷静に彼らの行動を観察してみると、大変興味深いことが分かりました。一読するととても簡単で単純な法則ばかりですが、彼らはアクションプランの遂行にあたり、次のことを着実に実行しました。
1.ひとりで問題を抱えず、必ずグループ(仲間)とともに話合い、問題解決を試みた。
2.障害者が障害者を支援するというクロス・ディサビリティー支援が当事者の間で共感を呼び、受益者(視覚障害者)に好意的に受け入れられた。
3.現地JICA事務所の専門家や担当者、NGOなどにアクションプランに対する理解者、協力者がいた。
4.若い同年代の障害者の仲間たちに広く協力を呼びかけた。
5.JICA研修員として、アクションプランをしっかりと実行しなければならないという強い使命と責任感を絶えず持っていた。
6.決して弱音を吐かず、前向きに、地道に小さい規模から活動を続けてきた。

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この小さなITワークショップから視覚障害者の夜明けを!

今回は、問題分析の結果ターゲットにおいた「視覚障害者のIT支援」が、しっかりとそのサービスの受益者である若い視覚障害者のニーズに合致したことも成功の要因でした。
そしてシンサイさんの口癖だった「NATO」という言葉。
「前島さん、僕が一番きらいな言葉はNATOです。NO ACTION TALK ONLYという言葉です。」
真剣なまなざしで何度も何度もその言葉を口にしていたシンサイを思い出します。
シンサイさん、次の目標は何ですか?
「今度は視覚障害児向けの教材を充実させたいと思っています。学校に行っても点字教材がないんです。勉強がつまらなくなってしまったら、将来の様々な機会を自ら断念しているみたいですよね。教育の機会平等こそ、まずラオス政府が真面目に取り組むべき課題です。今の支援を一歩掘り下げて、次の段階へ進もうと思います!」

こうしてシンサイさんは、6ヶ月のアクションプラン最終報告書をJICA東京に提出しました。しかし、彼らの活動はまだまだ続きます。今後も彼らの活動に目が離せませんね。


(財)日本国際協力センター(JICE)研修監理員 前島 由希