第30回 パキスタン・自動車産業振興の夢に向けて(日本の経験に学ぶ官民学) Part1

パキスタン政府は2030年までに、産業構造の高度化、特に重化学工業化を含む製造業を発展させる、という「VISION2030」を表明し、JICAはその実現に向けて、2006年度に自動車産業分野を中心に産業強化調査を実施しました。パキスタン各地で開催したセミナーはマスコミにも大きく取り上げられ、今回は、その技術移転の舞台を日本に移し、引き続きパキスタンの自動車産業振興のための知的支援を行うために実施したものです。

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トヨタ自動車大学校で教材に触れる

準備に携わってきたJICA平島客員専門員(対パキスタン国別援助計画主査)は、研修参加者に向けた導入研修において、『日本のやり方をそのままパキスタンにコピーすることがこの研修の目的ではありません。パキスタンでは雇用創出に配慮した経済成長が重要ですので、中小企業振興を含めた産業発展のあり方を模索することが重要です。本研修では、(1)中小企業と大企業のつながり、(2)技術教育・職業訓練の仕組みと産業界とのつながり、(3)自動車産業振興における政府の役割について、日本の経験を学び、それを参考にしてパキスタンにおける望ましい工業化のあり方にかんする理解と議論が深まることに期待しています。』と述べました。

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自動車部品を供給する中小企業を訪問

この研修のために用意された訪問先は社団法人日本自動車工業会、トヨタ東京自動車大学校、スズキ株式会社、自動車部品工場や専門学校など全部で10箇所。各訪問先のみならず、移動中のバスの中でも、研修員たちは互いの知識やアイデアを出し合い、活発な議論を戦わせていました。パキスタンでは、官・民・学のオピニオン・リーダーが10日間も行動を共にし、議論を深める機会はほとんどない、とのことで、こうした議論の「場」を提供したことも、研修の価値であることを実感しました。


アジア第二部 南西アジアチーム 高橋亮