第31回 パキスタン・自動車産業振興の夢に向けて(日本の経験に学ぶ官民学) Part2

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大田区の北嶋絞製作所にて

「VISION2030」達成の使命を託された今回のパキスタンの研修員は、連邦計画省のカーン氏をリーダーに、ラシード中小企業振興長官、スヘイル自動車部品工業会長、ワヒード自動車工業会事務局長、アフターブGC大学副学長といった官民学代表の5名。
一行は技術教育の関連現場として大田区の「株式会社北嶋絞製作所」を訪問しました。この製作所は1947年に開業し、当時はなべ、フライパンを中心としていましたが、時代と共に工業化を進め、現在では高度技術製品(水素エンジン用の燃料セル、使用済み核燃料の地底保存容器など)に移行しています。言葉や数字ではなく、経験や身体で会得する、学校カリキュラムで教えられるような技術ではない「へら絞り技術」に特化した北嶋絞製作所は技術の安売りをせず、一日でも早い納品を行う営業戦略を基本とし、安定した経営を実現しています。

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へらしぼり(Metal Spinning)技術を体験

また、技術教育・職業訓練の現場として「東京都立産業技術専門学校」を視察。
ここは即戦力になる人材の育成を行っており、インターンシップで学生を中小企業に配置したり、中小企業(例:前述の北嶋しぼり)の社長が学校で講義を行う、さらに中小企業の労働者構内の連携センターにおいて受講するなど、さまざまな形態で産学協調に取り組んでいます。
研修員からはパキスタンの技術教育・職業訓練機関への技術支援に関し、ぜひとも同校の講師陣の協力を得たいとラブコールが送られたようです

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都立産業技術高等専門学校で生徒作品に触れる。

『ハードスケジュールだったが、官民学の異なる立場の関係者が一同に日本に集まり、意見交換を行えたことは大きな収穫。』
『我々のこれまでの官民協調(Public Private Partnership, PPP)の取り組みは十分では無いことが実感できた。帰国後に我々自身で報告書を取りまとめ、提出させていただきたい。』
このように語るのは、パキスタン連邦政府で産業政策の立案に携わるリーダーのカーン氏。
今後、“夢”の実現に向かって、それぞれの立場で、どのような役割を演じていくのか・・・JICAが、日本がどのような形で支援をしていくのか・・・しばらく目の離せない技術協力の現場になりそうです。


アジア第二部 南西アジアチーム 高橋亮