インド製造業のリーダーを育成する:インド製造業経営幹部育成支援(VLFM)プロジェクト本邦研修

JICAでは昨年の8月からインドにおいて、国家製造業競争力委員会とともに「製造業経営幹部育成支援プロジェクト」(通称VLFMプロジェクト)を実施しています。インド製造業の競争力強化のために、将来を担う人材の経営マインドの変革を目指したものです。

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コマツ小山工場にて

VLFMプロジェクトは4つのコースで構成されています。Aコースはシニア管理職、Bコースは若手管理職、Cコースは社長、Dコースは中小企業をそれぞれ対象としています。
今回は、5月25日〜6月1日の日程でAコースの受講者46名と引率者2名の計48名が来日しました。これまでインド国内で1年間にわたって5回のセミナー(それぞれ1週間)を受講し、最後が日本での研修です。本邦研修では、(1)日本のモノづくりの現場を視察すること、(2)外からの目でインド製造業を見直すこと、(3)日本社会が総体としてモノづくり社会であること、を理解することを目標としました。

製造業は製造の現場だけにあるのではなく、材料の調達から製品の流通・販売、また人材育成のための教育や社会・文化までも含んだ大きな概念として捉える必要があるというのが主旨です。日本で製造業が洗練されたのは、企業の努力にとどまらず、日本の社会風土も大きく影響しているということを体感できるようなプログラムとしました。

コマツ小山工場、日産自動車栃木工場、豊田自動織機といった日本を代表するような工場の見学、日印のビジネスマンの講義、また日本の象徴としての新幹線についての講義を織り込みながらの、非常にタイトなスケジュールの一週間でした。どの講義も工場見学も、日本の製造業の粋を伝えようという心意気が研修員にもビンビン伝わったようでした。また、東京理科大学専門職大学院の関係者のみなさまのご協力で、東京の街角ウォッチも実施し、日本社会の一端を垣間見ることができるようにしました。

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東海道新幹線車内でグループワークをする研修員たち

これまでのインドでのセミナーに則って、講義や見学の後にはその内容をグループでまとめるという作業を必ず行いました。JICA東京、地方のホテル、果ては移動中の新幹線の車内でも作業をするなど、時間を有効に活用しようとする姿には感服しました。

一度に50名近い人数はJICAの研修ではあまり例を見ない規模であり、円滑に運営できるかどうか関係者は気を揉んでいましたが、いざ始まってみると、グループ全体として統制がとれており、タイトなスケジュールにも関わらず、大きな問題もなくスムーズに行われました。

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講義の合間には体操係がストレッチも行います

研修の最後の挨拶では、インド国内も含め1年間の研修で得たものを実際に各人が所属する企業で実践するとともに、製造業の発展を通じてインド社会に貢献する人物となるということが誓いとして述べられ、非常に頼もしく映りました。インドでのビジネスを考える日系企業がここ数年急激に増えている中、このプロジェクトを通じて多少なりとも日本を知った人材が、日印の架け橋となってくれるよう願ってやみません。


産業開発部 貿易・投資・観光課 杉本巨