研修で国づくり支援!!ラオスのトップリーダーたちが見た日本

2009年7月、子供たちの待ちに待った夏休みが始まる中、JICA東京では前代未聞(?)の大臣級ばかりが参加する研修が行われていました。ラオス首相府行政・公務員監督庁(*以下、PACSA)の長官、大都市圏の県知事、副市長などなど、それぞれラオスのトップリーダーといえる5名が、日本の地方行政制度を参考にしたいと来日したのです。
(* Public Administration and Civil Service Authority: PACSA。日本の総務省と人事院をあわせたような中央政府機関)

ラオスは現在、地方行政制度改革のまっただなかにあり、それを中心になって推し進めているのがPACSAです。PACSAがこの改革で抱えている課題は、指定市(Municipality)の初の設置、郡の機構的改革、伝統的なコミュニティ単位である村の合併、地方行政法の改訂、さらには公務員の能力向上までと多岐に渡ります。なかでも、地方分権化を進める際の国(中央政府)と地方自治体の責任分担や、自治体の果たすべき役割を整理することが喫緊の課題となっています。

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熱心に講義を受ける

日本では当たり前のように都道府県の下に市町村があり、国と地方が予算を分け合ってそれぞれ決められた仕事をしています。しかし、ラオスでは地方の行政区分も確立されておらず、現状では国がほぼ全ての権限と財源を有しています。国と地方との間でどのように役割分担を行い、財源(予算)はどう分け合うのか、そもそも地方自治体の行政区分をどのように整理するのかなどなど、長官たちはこれらのヒントを得るために、地方自治法や財政制度についての講義を受けたり、合併を経験した市を視察したりしました。

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市役所のカウンター業務を見学する研修員

大臣級の要人たちが「生徒」になって講義を聞いている姿は少々想像しがたいかもしれませんが、さすがは国のトップリーダーたち、知りたいこと、聞きたいことが明確で、どの講義でもとめどなく質問が続きました。また、視察で訪れた新潟市やさいたま市でも、地方自治体が権限と財源を持って地方行政サービスを提供している現場を見逃さないぞと、色々なリクエストが出され、新潟市では、急きょ、市役所のカウンター業務を見せてもらいました。

今回のプログラムは2週間という短期間でしたが、長官たちの非常に熱心な姿を象徴するできごとがありました。それは、表敬も単なる表敬で終わらせない、ということ。やはりこれだけの要人が来日するとなると、研修のための来日といえども、外交的な面会も多く設定されます。研修自体がタイトなスケジュールでしたが、大臣たちは外務省、総務省、人事院などで複数の表敬もこなしました。総務省では、30分ほどの時間でしたが、人口規模や経済規模が大きいにもかかわらず省庁数が少ないこと、また総務省が複数の省庁が統合された省であることから、省庁再編の経緯や理由について質問がなされ、また地方分権化の中で総務省(中央政府)と地方自治体が業務をどのように分担しているのかについても議論におよびました。

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研修を終えて

今回のプログラムでは、国のトップリーダーたち自身が直接五感で日本の地方行政制度からヒントを得ることが可能となったことに大きな意義があるといえますが、中央政府機関であるPACSAの長官、職員と、地方自治体の代表である県知事、副知事たちが、2週間ものあいだ席を並べ、同じプログラムに参加したことで、国と地方のトップリーダーが地方行政制度改革について直接議論ができる貴重な時間となったことも、意義深く大きな成果につながるのではないでしょうか。

一国の地方行政制度改革を推し進めるキーパーソンを招聘するという、まさに「国づくり支援」といえるプログラムとなったこの研修。研修の可能性を再発見させてもらったように感じました。

JICA東京  公共政策課 浅川 祐華