さかなクンとのコラボで投資を推進!:セネガル投資環境セミナー

コースの初日にJICAとODA事業概要、アフリカ協力の概要について説明を受ける研修員たち

セネガル共和国といえば、かつての「パリ・ダカールラリー」のゴール地点として知られています。また、サッカー好きならワールドカップに毎回出場する強豪国として覚えているでしょう。知る人ぞ知ることですが、この国のアルマジ岬(pointe des Almadies)はアフリカ大陸の最西端です。この4月、そんなセネガルから政府および民間企業の代表者11名が約25時間のフライトを経て、JICA東京での「セネガル投資環境セミナー」研修のため来日しました。

参加するのは、国の投資や国家インフラ事業を司る「投資促進・大規模工事公社」の副総裁をはじめ、行政機関である「商業・工業省」、「農業・農村施設省」、「漁業・海洋省」の技術顧問および各担当局長、そして農産品や海産物の輸出入を行う5つの民間企業の代表たち。これだけでも、本セミナーに参加する意気込みが十分感じられると言えそうです。今回の目的は、硬く言えば、今後のセネガルの民間セクター振興のための取り組みについて検討する機会を提供することですが、わかり易く言うと、日本の民間セクター(特に農業、漁業関係者)の方に、セネガルの投資環境・ビジネス環境の紹介を行い、その後の日本とセネガルのビジネスチャンスにつなげる仲立ちをするということになります。

さて、今回のこのセネガルの研修、なんと、タレントでありイラストレータでもある東京海洋大学客員准教授の“さかなクン”とのコラボレーションが実現しました!

世界に名だたる築地市場を見学。さっそくタコを見つけてタコ談義に花が咲きます。

研修の一環として、さかなクンとセネガル研修員は早朝の築地場外市場を訪れ、さっそくのタコ談義。セネガルから日本へのタコの輸出量は多く(対日輸出品目第一位、2009年)、日本のスーパーの刺身コーナーにはセネガル産のタコが並び、また町で売られているタコ焼きの中にももちろん入っています。そのため、セネガル人はタコに大きな関心があるのです。さかなクンが手に取ったタコのオス・メスを見分けられるかを尋ねられたセネガル水産会社の社長さんは、オスであると見事に正解!なんでも、ゆでた時の形に見分ける特徴があるとのこと、さすがはプロフェッショナルです。

「セネガル投資セミナー」では130名の聴衆にビジネス環境を紹介すると共に、参加各企業から業務概要、日本企業への期待等を発表。

このように、タコを通じて日本とのつながりが大きいセネガルですが、このタコのようなケースは残念ながら多くありません。潜在的には投資の可能性があるのに、日本から遠くてフランス語圏にあることなどから手に入る情報が少なく、セネガルにおけるインフラ整備をはじめとした膨大な投資ニーズは必ずしも日本の企業に知られていません。そのためセネガル政府は日系企業からの投資を促進させることを目的として、国内外の投資窓口機関である、投資促進・大規模工事公社への日本人専門家の派遣を要請しました。この専門家を通じて、セネガル側による日本の ビジネス環境・文化の理解が進み、一方、日系企業のセネガルの投資環境に対する理解の促進、更にはセネガルへの投資拡大が期待されています。今回の研修員たちは、この支援の一環で来日したのです。

研修2日目の4月9日(火)に開催されたJICAと日本貿易振興機構(ジェトロ)共催の「セネガル投資セミナー」では、セネガルの投資環境の説明、セネガル企業の事業紹介、更に実際にセネガルに進出している日系企業(ヤマハ発動機)の進出経験の説明などがなされました。結果、アンケート回答者の94.9%から「役立つ情報、セミナーであった」と評価されました。このセミナーのみでいきなり商談成立までは期待できないかもしれませんが、日本、セネガルお互いが、これをきっかけにビジネスチャンスが拡大することが期待されます。

横浜の柴漁港で東京海洋水産大学馬場教授より漁業協働組合や魚の流通システムの講義を受、施設を視察する研修員たち。

研修3日目、4日目は農業班と水産班という2つのチームにわかれて視察、日本の市場が求める品質や管理方法について学びました。水産班の場合、漁港、魚市場、水産加工工場、小売り(スーパーマーケット)を見学、大まかでありますが日本の水産物の生産者から消費者までの流れを覗いたことになります。朝5時から築地市場を見学、整然とならぶ新鮮な魚に感動するとともに、生きたままいけすで売られる魚の種類の多さにも感銘を受けていました。中でも「角上魚類株式会社」(日野店)では、日本一を目指す魚屋としてTVでも紹介されていることもあって、売り場で見たお刺身の盛り合わせのきれいさに感動、また日本の市場が求める品質の高さと丁寧な取り扱いの精神を学んだようです。

日曜日に来日、次の土曜日に離日、加えて朝から晩まで講義・視察の詰まった濃い1週間の日程をよくこなしたと思われます。期間中、水産班は朝5時からの築地市場の見学、農業班でも朝7時からの大田市場の見学もあり、体力的に疲れたと思いますが、今回の来日の目的である、セネガルの投資環境を日本の関係者に広く宣伝する、セネガル側が日本の ビジネス環境・文化、市場の求める品質を理解するという2つが達成され、日系企業とのビジネス機会の形成に大きく貢献した内容であったと考えています。

JICA東京 産業開発・財政課 野口伸一 (2013年4月)