新たなターミナルの完成に向けて:ベトナム空港ターミナル施設維持管理運営/移転コース

羽田空港国際線ターミナル出発階。モノレールの駅から段差なくアクセスできます

外国からの訪問者にとって、その国の表玄関となる国際空港。中でも旅客ターミナルには長旅を終えた訪問客が第一歩をしるす訳ですから、その第一印象がそのまま国のイメージを左右するといっても過言ではありません。また、経済の面でも、多くの航空会社がその地域のハブ空港*として利用すれば大きな収入源となって、国や地域の経済発展にプラスになります。なので、どの国も国際空港の拡充、ターミナルの充実にはとても力を入れています。韓国の仁川空港、バンコクのスワンナブーム空港など、最近できた空港のターミナルはどれも目を見張るばかりの大きさと機能を持っています。

羽田国際線展望デッキにて、ターミナルの拡張部分について説明を聞く

近年経済成長が著しいベトナムでは、首都ハノイのノイバイ国際空港を利用する旅客数が増え続け、ターミナルの能力が限界に近づきつつあります。このため、ベトナム政府は日本政府の円借款による資金約206億円をつかって、現在新しく第2旅客ターミナルを急ピッチで建設中。これにより、利便性・安全性に優れた、東南アジアを代表する国際拠点空港に生まれ変わることになっています。2015年4月のオープンを目指している新しいターミナルがスムーズに運営できるよう、ベトナム政府からの要請に基づいてJICAは「ノイバイ国際空港運営・維持管理計画策定支援プロジェクト」を行って、ベトナム空港会社を技術面で支援しています。

成田の空港第2ビルの出発案内パネルを前に記念撮影

このプロジェクトでは飛行機への給油システムとターミナル施設運営維持管理のテーマを中心に技術移転を行っています。その一環で、ベトナム政府とベトナム空港会社のノイバイ空港関係者たちが2014年の2月から3月にかけて来日し、空港ターミナルのオペレーションや維持管理の実際を目にしました。JICA東京の研修員として来られたのは、「空港ターミナル施設維持管理運営」のAコースとBコース、そして「ターミナル移転」の三つのグループのそれぞれ8名ずつの計24名。どのコースも1週間滞在して主に成田国際空港で空港ターミナルの運営とメンテナンス、そして新しいターミナルへの移転で発生するさまざまな業務について視察し、説明を受けました。

中央監視センターで電気や水のコントロールの現場を視察

「空港ターミナル施設維持管理運営」コースの参加者たちは成田ではさらに情報・通信や機械、電気といった4人ずつの小グループに分かれて、それぞれの専門分野における細かい説明を受け、特別な身分証なしでは入れない保安エリアにも立ち入って空港管理の実際に触れました。たとえばBコースの機械グループは成田空港第2ビルの中央監視センターで監視モニターに電気や水のコントロール状況が映し出されるところを見学、実際に発生したトラブルへの対処も見学することができました。どの見学先でも研修員はたくさんの質問を繰り返しては熱心に知識を吸収していたのが印象的です。

羽田の国際線ターミナルの航空会社カウンターの上の階には、こんな「和」の空間があると驚く研修員たち

また「ターミナル移転」コースでは成田に加えて羽田空港も訪問、2010年にオープンした新しい国際線ターミナルをモデルケースとして講義と視察を受けました。こちらのターミナルはちょうど国際線発着枠拡大に合わせた拡張工事を終えたところで、チェックインカウンター、搭乗ゲートなどが増設されたばかりですので、拡張に合わせた人材育成なども現在進行形のお話を聞くことができました。ターミナルには「江戸情緒」をテーマにした飲食店、お土産屋さんが並ぶ一角が目を驚かせたり、「クール・ジャパン」商品を売るお店やプラネタリウムもあって、ベトナム研修員たちの注目を集めていました。

羽田空港の多目的トイレの説明を受ける研修員たち

今年の7月にはノイバイ空港と羽田を結ぶベトナム航空の直行便の運航も始まります。この研修が日本とベトナム両国を空で結ぶだけでなく、人と人とをさらに強く結びつけることが期待されます。


JICA東京 経済基盤開発環境課 井上達昭 (2014年3月)



*ハブ空港:航空路線網の中心として機能する空港のことで、航空路を自転車などの車輪にたとえると、車輪のスポーク部分が航空路、中心(ハブ)部が空港に当たることからこう呼ばれる。