日本発のコンセプト、5S・カイゼンをアフリカの病院に役立てよう!!〜課題別研修「5S-KAIZEN-TQMによる保健医療サービスの質向上」〜

日本発のコンセプト、5S-KAIZEN-TQMアプローチを学ぶため、エジプト、マラウイ、ナイジェリア、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの7か国から計12名の政府機関職員や、医療関係者が来日しました。

5S・KAIZEN・TQMアプローチとは?

5S・カイゼンという言葉を耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか? 
5S・KAIZEN・TQMアプローチとは、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を定着させることで業務環境を改善し、仕事の無駄を省くカイゼンを積み重ね、ひいてはサービスの質や効率性の向上、コスト管理、品質管理の改善を目指す取組みです。

もともとは、トヨタ生産方式に代表される通り、我が国の製造業から始まった取組みですが、JICAは、製造業では当たり前となりつつあるこの概念を、医療現場で活用しようという途上国の取組みを支援しています。

5S・KAIZEN・TQMアプローチにより、アフリカの医療環境を改善

アフリカの医療現場では、病院の業務環境が非効率的、かつ不衛生な状況にある場合が多く、劣悪な業務環境が医療従事者の意欲を損なう原因となっているだけでなく、防ぐことができる薬品や機材の不足が発生したり、医療事故を招いてしまうケースもあります。

アフリカの病院で、どうしたら効果的に5S・KAIZENを進めることができ、各病院の業務環境改善、ひいては経営の改善へと繋げることができるのでしょうか?この点を学ぶため、アフリカの7か国から、各病院で5S活動展開のリーダーとなることが期待される研修員12名がJICA東京に集まりました。このコースは、JICA東京を中心に実施する日本における研修(約10日間)と、JICAが「保健人材開発強化プロジェクト」を実施し、病院の5S活動展開を支援しているタンザニアにおける研修の二本立てとなっています。
講義の内容は、単なる整理・整頓のノウハウでは終わらず、組織論や病院全体のマネジメント手法にまで及びます。

グループワークと現場視察で理解を深める

5SからKAIZEN, ひいてはTQM(統合的品質管理)へと至る段階的な発展の仕組みをグループワークを通じて学ぶ研修員

このコースでは、日本の病院における5S活動事例紹介や病院での情報管理・業務過程標準化といった講義に加え、グループ・ワークやディスカッションに多くの時間をあてています。研修員はグループに分かれ、5S・KAIZENを進めるために必要なチーム作りやリーダーシップの在り方について議論するとともに、各国の現場で5S・KAIZEN活動推進の阻害要因となっている点とその解決策について意見を出し合いました。
8月15日には、実際の日本の医療現場における5S活動事例を学ぶため、国内の病院の中でも特に5S活動に力を入れている武蔵野赤十字病院を見学しました。

外科手術用のカート整理方法について説明を受ける研修員

武蔵野赤十字病院では、5S推進チームのメンバーから直接活動状況に係る話を聞くとともに、外科手術の検査やケアに必要な物品を収納するカートの整理方法見直しにより、手術前の準備時間が1時間短縮した事例や、医療機材の収納方法を工夫することにより、在庫の把握が容易となり、使いたい機材がすぐに取り出せるようになったことで業務の効率化に繋がった事例を興味深く視察していました。研修員からは、「医者・看護師・薬剤師などあらゆる職種のスタッフがチームを組み5Sを推進している点が素晴らしい」「自国でも5Sを取り入れているが、最初は皆意欲的に取り組むものの、持続性を確保することが難しい。この病院ではスタッフがモチベーションを維持し、活動を継続している点が素晴らしい」といったコメントが寄せられました。

この研修から研修員が得た学びを、研修員が自国の医療機関の職場環境改善、ひいては所属機関の経営改善にまで活かしていくことを期待します。

                          〈JICA東京 人間開発課 天野裕子〉(2014年8月)