マレーシアの医療の安全性向上及び我が国医療機器産業の国際展開推進に貢献!!マレーシア国別研修「医療機器の規制システム」

創生期にあるマレーシアの医療機器行政

AEDの製造工程見学

マレーシアでは、2012年10月に医療機器法が施行されるまで、医療機器の輸入を規制する法的な枠組みが存在せず、海外からの機器を比較的自由に使用できている状況でした。しかし、同法の制定以降、医療機器の品質/安全性にかかる監督機能の強化が求められるようになっています。今後、マレーシアにおける医療・医療機器産業は急速に拡大していくことが予測されており、医療機器に対する規制を円滑に実施することが、喫緊の課題となっています。

本研修は、このように創生期にあるマレーシアの医療機器行政の確立にあたり、日本における医療機器の規制制度、審査の方法、市販後のモニタリングの仕組みや事故発生時の対応事例を学びたいとのマレーシア政府からの要請を受け、今年から開始された研修です。

本研修では、我が国の医療機器規制の概要や関連機関の役割、医療機器にかかる審査フローや市販後の医療機器モニタリング事例を理解することを目的に、我が国の医療機器監督官庁である厚生労働省や、医療機器審査業務を行う医薬品医療機器総合機構(PMDA)、医療機器関連団体や医療機器開発を手がける研究機関・医療機器メーカーなど、幅広い関係者を訪問しました。

本研修は、マレーシア側の要請に応じテーラーメードの研修を費用分担の方式で実施し、研修員を2006年度から10年間、毎年各種研修合計で100名受け入れることを合意した経済連携研修(Economic Partnership Program, EPP)の枠組みで実施するものです。マレーシア側も費用を負担しているため、それだけマレーシア側の期待も高く、また真剣に取り組んでいる様子がみてとれました。

我が国の代表的な医療機器メーカーとの連携

テレビ局の取材

研修の中では、我が国の代表的な医療機器メーカーの一つで、国内で唯一自動体外式除細動器(AED)を製造している日本光電株式会社富岡第二工場の見学を行いました。工場では、AEDの製造工程を見学しながら、何重にもわたる検査の過程や、製品の内部に作業した人の名をシールで貼り、責任感を持たせる仕組み等について説明を受けました。研修員は同社の緻密な品質管理の仕組みに強い感銘を受けており、マレーシア国内でもAEDの普及が進むよう、働きかけていきたいと感想を述べました。この訪問は、マスメディアからも関心を寄せられ、当日は、群馬県の新聞社2社、テレビ局からの取材を受けました。

マレーシアの医療機器行政の進展、そして我が医療機器産業の国際展開へ!

医療メーカー各社が参加した最終発表会の模様

研修の最後には、研修成果の集大成として、研修発表会にてマレーシアが医療機器行政において現在直面している課題に対する解決策のプレゼンテーションを行いました。発表会には、日本を代表する医療機器メーカー7社が参加、研修員の発表に熱心に耳を傾けるとともに、移行期にあるマレーシアの医療機器行政の中で、日本からマレーシアに医療機器を輸出する際に現在必要とされている手続きや、将来的な規制の見通し等について活発な質疑応答が行われ、マレーシアでの事業展開に向けた各社の強い意欲を感じました。発表終了後も、和やかな雰囲気で研修員とメーカー各社の代表者間で情報交換が行われました。

昨年策定された「日本再興戦略」の中で、我が国健康産業の活性化は成長エンジンとして重視されています。また、2013年に策定された「国際保健外交戦略」でも、国際保健を日本外交の重要課題と位置づけるとともに、我が国の健康医療産業及びその技術力を活かした貢献を戦略目標として掲げています。本研修を通じ、マレーシアの医療機器の品質/安全性が強化されるとともに、我が国の高品質な医療機器のマレーシアでの展開が一層拡大することを期待します。

人間開発課 天野裕子 (2015年2月)