質の高いドキュメンタリー番組をベトナムに: VTVスペシャル制作技術能力の向上

NHK放送センターを訪れ、NHKスペシャルの制作現場を見学する研修員たち

NHKの看板ともいうべき、質の高いドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」の制作方法を学びとり、そのベトナム版というべき「VTVスペシャル」を制作するため、昨年の8月と12月のそれぞれ2週間、ベトナム国別「VTVスペシャル制作技術能力の向上」研修をJICA東京で行いました。JICAはテレビ放送を通じた行政の透明性と説明責任の向上のため、ベトナム国営テレビ放送(VTV)の強化を支援しており、2011年にはVTV放送センターを円借款プロジェクトで建設しました。また、報道番組と啓発番組作成の能力と知識を向上させる技術協力を行っており、今回一般財団法人NHKインターナショナルのお世話になった研修もその一環です。

放送センターにて、NHKのディレクターから説明を受ける

来日した研修員は8月に10名、12月に16名。いずれもVTVで番組制作の第一線に携わるスタッフです。日本で行われた研修は、これまで放送されたNHKスペシャルの中でも評価の高かった名作番組の録画を見ながら、NHKのプロデューサーやディレクターとしてそれら番組の制作に直接携わっていた講師から、企画書の書き方から制作手法についてまで細かい手ほどきを受けるという、とてもぜいたくなもの。番組のアイディアをどうやって吸い上げるか、歴史資料をどう扱うか、番組を作る組織はどうあるべきかなど、幅広い内容で指導を受けます。

JICA東京で映像を見ての討論

お手本になったNHKスペシャルは、単身赴任や高齢者の孤独といった社会現象、日本の歴史と文化、自然環境や災害などテーマはさまざまです。VTVの若いスタッフにとっては自分たちの生まれる前の歴史の一部にすぎないのかもしれませんが、ベトナム戦争がなぜ起こったか、という生々しいテーマの番組もありました。番組のシーンの一つ一つの持つ意味を考え、こんな手法が素晴らしいとか、自分ならこう作るといった議論を何度も重ねては、番組作りの方法を探っていきました。

12月研修の後の閉講セレモニーで。修了証書を手に、緊張も解けてみんなハッピーです。

NHKの現役プロデューサーやNHK出身の講師たちは、日本での研修の後、今度はベトナムに出張してVTVに帰った研修員たちと現地でのフォローアップ研修を行いました。そして、これら研修の成果として、「VTVスペシャル」の記念すべき第一作目が1月10日に放映されました。「〜津波から10年〜忘れられない記憶」と題して、2004年12月のインド洋大津波の被害から見つめなおす津波のメカニズムと、その教訓から生まれた防災体制を取り上げています。この番組はページ下にリンクをつくったVTVのウェブサイトでご覧いただけます。

NHK放送センターで記念撮影

ベトナム語の番組ですので、ベトナム語ができる方にしか話している内容はお分かりになりませんが、構成やインタビューの取り込み方、インド洋や東日本大震災での津波の資料映像の使い方などにNHKスペシャルに学んだ効果が見てとれるのではないでしょうか。

続いて2月には第二弾も完成、ベトナム中部クアンビン省で2009年に発見された世界最大の鍾乳洞、ソンドン洞の神秘を迫力ある映像で伝えました。

これからつくられるVTVスペシャルではどんなテーマが取り上げられ、どのような番組に仕上がるのかが楽しみです。VTVスペシャルが翻訳されて日本で放映される日も近いのかもしれません。

JICA東京 経済基盤開発環境課 井上達昭 (2014年12月)