「カイゼン」の考え方を世界へ!

【画像】 「人に魚をあげれば彼を一日食べさせられる。彼に魚の釣り方を教えれば彼を一生食べさせられる」という中国の老子の有名な言葉を一度は耳にしたことのある人も多いでしょう。

 人が本当に必要としていることを教えるという作業は、多くの時間と労力を必要としますが、それがもたらす成果は絶大です。主に製造業において、現場の生産性、整理整頓の状態、安全性など企業にとって作業の効率を高める要素を継続的に向上させていく活動のことを「カイゼン」と呼びます。高度経済成長期における日本の製造業の生産性の高さは、世界が認めるところであり、その背景には、「カイゼン」などの日本独自のマネージメント方式が取り入れられてきました。

【画像】 JICA東京は、公益財団法人日本生産性本部とともに、日本の「カイゼン(KAIZEN)」というマネージメント手法を学ぶための研修を2016年1月18日から2016年3月3日までの期間実施しており、エジプト、エチオピア、インドネシアなど世界の様々な地域から研修員が参加しています。それら多くの国では、今後さらなる産業開発の為に持続的な成長と安定を必要としており、研修員たちは、ここで日本のビジネスマネジメント及び改善手法を学び、それを自国に持ち帰って、国の発展や将来の為に役立てようと考えています。

 2月には、埼玉県本庄市にある精密部品加工メーカーの賛光精機株式会社で2週間の実習が行われました。賛光精機は、精密部品の切削加工や、太陽光パネルの販売等を行っている企業ですが、数々の賞も受賞し、近年では、埼玉県経営品質賞「知事賞」を受賞した企業です。この研修では、賛光精機での実習を10年ほど前から実施していますが、代表取締役社長の清水洋氏は、JICA研修員の受入について「双方にとってWin-Winの関係であり、彼らが毎年勉強に来てくれることをとても嬉しく思う。」と述べられました。

【画像】 この研修を受けることで、研修員には、自国に大きな変化をもたらすことができるチャンスが生まれます。モロッコから研修に参加しているモハメッドさんは、母国で中小企業を支援する公的機関で働いており、彼の仕事は、企業の生産性を高め、効率化を図るために様々な支援を行うことです。彼は、このプログラムが終了した後、モロッコに帰国し、日本での経験や「カイゼン」の考え方を現地の中小企業に広めていきたいと考えています。

 「カイゼン」は、すでに世界各国に普及しつつありますが、エチオピアでは、大手の企業で5年前に「カイゼン」活動を取り入れ、会社の収益増大とともに大きな成功を納めています。この結果を受け、エチオピア政府はエチオピア・カイゼン機構を設立しましたが、ここで研究開発チームの理事を務めるウォニシェットさんが今回の研修に参加しています。彼女は、「我が国の大手企業ではカイゼンがかなり浸透してきましたが、次のステップはこれをすべての産業に広げていくことです。」と述べました。

 変化には時間を要します。研修員にとって、これが明るい未来への最初の一歩に過ぎません。しかし日本で学んだことは、いずれ自分の国と人々の将来をサポートしてくれるものだと確信しています。

(2016年3月)