マレーシアの研修員、本邦研修での気付きを現地プロジェクトへ波及 〜 マレーシアで産声を上げた高齢者プロジェクト 〜

マレーシアで始まった高齢者プロジェクトで中核を担う3人が本邦研修「アジア地域における高齢化への政策強化」(2015/11/30~12/11)に参加しました。研修を通して得た、現地プロジェクトに活かしたい点について伺いました。

 20年後を見据えて

本年10月日本政府とマレーシア政府の間で「高齢化社会に向けた社会的支援及び地域社会に根差したプログラムの構築」という新しいJICAプロジェクトについての合意が交わされました。
マレーシアはタイやベトナム、スリランカに比べると65歳以上の全人口に対する高齢者の割合はそれほど高くなく、2015年は5.9%となっていますが、2040年には11.4%に達すると推計されています。
このような中、高齢化問題がさほど深刻ではない今こそ先駆けて対策を進める必要があると考えられ、このプロジェクトが始まりました。マレーシアでもいずれは高齢者の介護を家族だけで行うことに限界を迎え、地域で高齢者を支えていかなければならない時期が20年あるいは30年後に確実に訪れるからです。

プロジェクトの焦点

右からヘズリーンさん、アザハリさん、ルハイニさん。

タイや中国では高齢化が深刻な問題となり、高齢者の介護や、その人材育成に焦点を当てたプロジェクトが実施される中、マレーシアにおいては問題が深刻化する前に元気な高齢者をいかに社会で活用するか、またその環境整備も含めた制度構築をいかに行うかがプロジェクトの焦点となるようです。
マレーシアのプロジェクトからの参加者、社会福祉局のヘズリーンさん、ルハイニさん、アザハリさんは今回の研修から、自国のプロジェクトに活かせる詳細内容について多くを学んだようです。
今回はルハイニさんにお話を訊きました。

研修での気づき 

−今回の研修で印象に残ったこと、またこれからプロジェクトに活かせそうなことを教えてください。−
「今回日本で研修を受けて、マレーシアのプロジェクトの具体的な内容についていろいろとヒントを得ることができました。」
「中でも川越市の視察は大変参考になりました。川越市の高齢者の方が英語で観光ガイドをしてくださったのですが、その姿は生き生きとしていて、とても社会に貢献している様子でした。昔から川越に住み、現地の文化や歴史を知っている高齢者だからこそできる仕事だと思います。これこそが社会に溶け込み元気に生活する高齢者のコンセプトであり、私たちのプロジェクトに役立つ事例だと思います。
もう一つ印象に残ったのは、高齢者疑似体験です。足に重りを付けたり、特別なグローブを装着し、手を使いにくくしたり、見えにくくなるメガネをかけたりして実際に歳を取ったらどうなるのかを体験することは私たちの想像を超えたものでした。歳を取ったらどんな不便を感じるのか体験することができました。」

取り組むべき課題

ルハイニさんは社会福祉局の中でも政策立案を担当されており、このプロジェクトのコーディネートなどの役割も担っているキーパーソンです。
「元気に歳を取るとはどういうことなのか、また社会全体で高齢者を支えていくためにはどのような準備をすればよいのか、そのために人々の意識を変えるにはどうしたらよいのか等、家族での介護が当たり前になっているマレーシアでやらなければならないことはたくさんあります」とルハイニさん。
プロジェクトは今後2年間の予定で実施されますが、今後の活躍が期待されています。


人間開発課 定家 陽子 (2015年12月)