コロンビア国別研修「障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョン」首都東京・ぐるっと地下鉄アクセシビリティ体験

 長年の国内武力紛争の結果、地雷被災等による障害者が多く生活しているコロンビアで、障害の有無にかかわらず、すべての人が隔てなく暮らしていくことができる社会の実現を支援するために、JICAは2015年3月から技術協力プロジェクトを開始しました。
本研修は同プロジェクトでは初の国内研修。2月1日に、コロンビアの被害者支援総合補償ユニット、保健社会保障省、副大統領府対人地雷総合アクション大統領プログラムなどの担当者10名が来日しました。

東京の交通アクセシビリティを体験

【画像】 2月2日、研修の皮切りとして、研修員は東京の交通アクセシビリティを体験しました。
講師の案内のもと、JICA東京最寄りの幡ヶ谷駅から、京王新線、丸ノ内線を乗り継いで国会議事堂前駅を経由し千代田線で代々木上原駅へ戻ってくるというプログラムでした。

【画像】まずは券売機。
「確かにハイテクが進んでいて便利だけど、車椅子に座った位置からだと、案内画面の位置が高くてよく見えない」ともらす声もありました。障害者の目線の高さも、バリアフリー実現には欠かせません。

【画像】 プラットホームの点字ブロックも注目の的。しかも、点字ブロックが二重になっていて、障害者が誤ってホームから転落したり、入ってきた電車と接触したりしないように作られている、という説明に皆聞き入っていました。

【画像】さて、乗車。
あらかじめ障害者が乗車するという情報を得た駅係員が、ドアが開いて降りる人がすんだ頃合いを見計らってスロープ板をホームと電車に渡してくれるタイミングの良さに、研修員から「素晴らしい!!」のどよめきと、カメラのシャッター音が鳴り響きます。

【画像】 研修員2名と講師1名が車椅子ユーザーで、動く電車の車内に3台の車椅子が同時に乗るといったいどうなるのか、研修員は正直不安だったそうですが、 東京の地下鉄には複数の車椅子が並んで乗車できるスペースが設けられていて、びっくりしたそうです。
また、女性の研修員が注目したのは「女性専用車」。車内が満員の朝や夕方の時間帯は、トラブルを避けるために女性だけが乗車する車両を設けているという説明に、しきりにうなずいていました。

【画像】続いては、乗り換え。
 多くの駅にはどこかにエレベーターがあるのですが、ここには階段とエスカレーターしかありません。
しかし、ここでもサービス介助士の資格を持った駅員が、エスカレーターを止めて、車椅子ユーザーが安全にエスカレーターのステップに乗ったことを確認し、ゆっくりと運転してくれ難なく移動ができました。

ソーシャルインクルージョンの実現に向けて

国会議事堂前

 研修員のひとりファンパブロさんは、次のような感想を聞かせてくれました。
「駅ごとの乗り換え案内、障害者に対するケアサインがあり、日本はユニバーサルデザインという点では世界一だと思います。しかし、せっかくのエレベーターがどこにあるのかわかりづらい。駅の係員さんが飛んできて、案内してくれたり電車の乗り降りやエレベーターまで案内してくれたり助けてくれるのは素晴らしいし、日本でしか味わえないサービスだと思います。でも逆に、こんなに特別扱いされると気がねしてしまいます。
障害のある人たちが、社会の中で普通に暮らしていけるソーシャルインクルージョンの実現には、まだまだ課題は沢山ありそうですね。それをJICA東京で学びたいと思います。」
研修員がインクルーシブな社会の実現に向けて必要なことを本研修で学び、現地での活動に役立ててくれることを期待します。

JICA東京 人間開発課 (2016年2月)