「看護の日」に寄せて、看護・ケア・助け合いの心を考える

JICA東京では、公益財団法人 国際看護交流協会の協力の下、毎年、看護管理者育成のための研修を実施しています。

「看護の日」とは

山梨県立大学看護学部において、JICA職員による「国際協力」講座

国際看護の日(International Nurses Day:5月12日)は、フローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなんで、1965年、「看護師の社会への貢献を称える」ことを目的に国際看護協会(本部:ジュネーブ)にて設定されました。日本における看護の日は、これに加えて、「社会全体に対して看護の大切や重要性を伝える」、「地域社会の相互扶助の大切さを広める」といった目的もあり、「看護・ケア・助け合いの心を考える」ために、様々なイベントが開催されています。

深刻な保健人材不足、中でも看護人材の果たす役割

多くの開発途上国では、保健システムの最も重要な構成要素の一つである保健人材について、医師、看護師などの不足や偏在など、深刻な課題を抱えています。

世界保健機関(WHO)は、2006年年次報告『Working together for health』において、世界における保健人材の不足数は425万人と報告し、深刻な保健人材不足の状態にある57か国において、医師、看護師、助産師が240万人不足しているとして、早急な対応を求めています。

中でも、医療現場のフロントラインに立つ看護師は、極めて重要な役割を担っているといえます。多くの途上国における医療施設では、訓練を受けた有能な看護人材が不足していることに加え、安全かつ効率的な看護ケアの管理が十分でないこと、患者主体の看護ケアの意識が希薄であったり、看護職間及び他の医療職種との連携(チーム医療)も十分でないことから、ケアの質に関しても多くの課題を抱えています。

看護人材の能力強化を目指して

病院実習先で、患者の安全を守るためのノウハウについて学ぶ研修員

病院実習先で、看護管理に関する意見交換

こうした課題に対し、JICAは様々な保健人材の育成支援を行っています。JICA東京では、公益財団法人 国際看護交流協会の協力の下、看護管理者を対象として
1)日本における看護管理、看護サービスの背景や課題

2)看護職の質の管理・管理者の役割遂行能力向上といったマネジメントに求められる概念や実践的スキル・手法

3)病院実習を通じた看護管理の実践

4)復興期の被災地における看護職の役割

5)アクションプラン作成に向けた問題分析、計画策定といった内容で研修を実施しています。

東松島市、災害看護の現場で「看護の真髄」に立ち返る 

看護師によるケア活動を見学

日本での研修中、復興期の被災地における看護職の役割について学ぶため、宮城県東松島市を訪問しました。東松島市の支援体制、サポートセンターにおける自治体、看護師たちの献身的な活動を視察するとともに、仮設住宅で震災後も生活を余儀なくされている地域住民との意見交換の機会も得ました。

参加した研修員は、「被災地での状況、献身的な看護のボランティア活動を目のあたりにし、まさに『看護の真髄』を見ました。」と、涙を浮かべながら、口々に語ってくれました。日本と同様、自然災害が多い国も多く、災害時及び復興期の看護師の役割について、改めて看護の原点に立ち返って考える、貴重な機会となった模様です。

東松島市を去る際には、研修員達が自らの発意で、わずかな所持金を募って被災住民の方に募金を行うなど、感動的な一幕もありました。

2016年度は8月31日〜10月29日、アジア・大洋州地域から研修員を招く予定です。各国の看護事情や本邦での学びを踏まえたアクションプラン発表など一部の講座は、一般公開によりオブザーバー参加も可能です。世界の看護の問題について、一緒に理解を深めましょう。

TIC人間開発課 吉田 由紀 (2016年)