マレーシアに生かす、日本の漏水対策技術

マレーシア「無収水削減技術研修・能力向上プロジェクト」草の根技術協力事業で技術者が日本で研修

東京都水道局が無収水(漏水対策)専門家の育成を支援

東京の水道設備を学ぶ

マレーシアは高度経済成長を経て、2020年までに先進国入りする国家目標を掲げており、上水道事業においても安定した水道経営、水資源の有効活用が重要となっています。同国の無収水(配水管からの漏水など)率は36.7%(2011年)と高い水準にあり、2020年までに25%を目標としています。
そこで同プロジェクトでは、日本から技術者の派遣、技術実習フィールドの整備、研修員受入など、無収水削減対策の専門家育成を包括的に支援しています。同国の無収水対策が進んでいるペナン水道公社を対象に、技術者指導体制の構築を目標として、東京都水道局と東京水道サービス株式会社がプロジェクトを実施しています。

日本の技術力に感嘆

小平監視所で土砂やゴミの沈殿・除去及び水質監視体制を学ぶ

5月25日から6月1日までの6日間、5名のペナン水道公社職員が、東京都の上水道施設の現状、維持管理、品質管理を学ぶ研修が行われました。村山山口貯水池(通称:多摩湖、狭山湖)を視察し、取水塔の役割や導水管理について説明を受け、江戸時代に開削された玉川上水に設置されている小平監視所では、ゴミや砂を除去する設備を視察、水量や水質の監視体制などを学び、江戸時代に築かれた水路が350年以上経った今でも一部活用されていることに「日本の維持管理や技術力は素晴らしい」と感嘆の声が上がりました。
研修員から「設備は自動で、しかも定期的に動くのか」など、ハード面での質問が出される一方、5Sの考え方(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)が水道施設の維持管理や品質管理に生かされている点や日本人の仕事に対する工夫や取り組む姿勢など、ソフト面にも強い関心を示していました。

成果報告会と修了証書授与

修了証を手に

研修最終日に本邦で研修した成果およびマレーシアに帰国後にどのように生かしていくのか研修員から報告がありました。日本の技術にはもちろん、文化や習慣にも強く刺激を受け、ハードとソフト面から今後マレーシアでの研修を充実したものにしたいと発表がありました。今回来日したペナン水道職員は、「講師」としてマレーシアの技術者を指導する立場になります。研修員たちは早速本邦研修で得た知見をマレーシア帰国後に発表する機会を検討していました。同プロジェクトの成果が、ペナン島における水道事業を始め、マレーシア全土に広がり無収水率が削減されることが期待されます。


JICA多摩地区デスク 国際協力推進員 山田 優