(和) 誰一人取り残されないアクセシブルな社会作りに向けて 〜持続可能な開発目標と国連障害者の権利条約を考える〜

【画像】「アフリカ地域 障害者のエンパワメントを通じた自立生活促進」研修(6月8日〜7月7日開催、レソト、モザンビーク、ナミビア、セネガル、タンザニア、ジンバブエから8名参加)において、去る6月27日に世界銀行と合同で公開セミナーを開催しました。
SDGsに向けて世界銀行でどのような取り組みがされているのか、また障害者権利条約の19条に掲げられている、障害を持つ人の自立及びアクセシビリティーについてどのような取り組みがなされるべきかを考えました。

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を聞いたことがありますか?

SDGsは2030アジェンダ(持続可能な開発のためのアジェンダ)に盛り込まれた17のゴールで、2030年までに全世界において、例えば乳幼児死亡率や貧困を減らし、全ての人たちに安全な水を提供し、教育や職業を提供する、などがあります。
そのスローガンは「誰一人取り残されない」というもので、この「誰一人」の中には、子供やお年寄りはもちろんですが、障害を持つ人々も含まれています。
また、2008年には国連で「障害者の権利条約」が発行され、現在では多くの国で批准され、障害を持った人たちがそうでない人と平等に生活をし、差別のない社会を作るための権利も認められています。

世銀障害アドバイザー シャーロット・マクレーン・ヌラポ氏の講演

【画像】セミナーでは世界銀行のワシントン事務所とテレビ会議を繋ぎ、世界銀行の取り組みについて話を聞きました。
世界銀行では、開発の全ての側面において障害のある人を含めた事業を展開しているとのこと。もちろんSDGsが採択されたこともその原動力ですが、障害者の権利条約も大切な要素です。
障害を持つ人が地域で自立して生活するためには、まず自らが声を上げ政策に関わっていくことの重要性が語られました。さらに障害者の自立のためには、アクセシビリティーの確保は不可欠であるとの指摘がありました。この点は障害者だけでなく、お年寄りや子供連れのお母さんたちにも裨益するものであり、まず最初にきちんと投資して、だれもがアクセスできる街を作ることが重要であるとのお話でした。

アフリカ各国の研修員からの発表

手話で発表するレジーナさん(レソト研修員)

レソトから参加しているレジーナさんは聴覚に障害があり、手話通訳者を同伴し、手話で発表を行いました。「私はずっと普通学校で教育を受けてきました。手話を知らない先生方の理解を得るのはとても大変なことでした。SDGsの目標の一つに平等な教育の提供がありますが、これはとても大切なことだと思います。教育を受けられないということは、仕事に就けないこと、さらに貧困へと繋がります。私は障害者団体の代表として、教育の重要性と障害者が自立した生活を送れるようなアクセシビリティーの確保について啓発をしていきたいです。」とレジーナさん。

チュレさん(タンザニア研修員・左)、サンダースさん(ジンバブエ研修員・右)

また、ナミビアから参加している行政官で車いす使用のシーベンさんは、自らがポリオで障害を負い、長期入院を強いられたこと、そして自分の生きたい人生を送ることの重要性を語ってくれました。シーベンさんは十分な教育を受けられず、仕事を転々としながらも今では渉外担当の副大統領補佐官として働いています。「障害者の視点を盛り込むことはとても大切なことであり、世界にそれを発信していくことが重要です」とシーベンさん。

続いてタンザニアのチュレさんです。チュレさんはアルビノの障害を有しながら、総理官邸の障害者担当局で働く行政官です。「タンザニアでは障害者に関する様々な法整備がなされているけれど、運用が十分でなく、障害者はアクセシビリティーや十分な教育を受けられないといった問題を抱えています」とチュレさん。「自立生活についても、認識はあるものの理論だけが先行しています。国に帰ったら、理論ではなく日本の実践例をきちんと伝えていきたいです。」

最後に発表したのはジンバブエからきたアルビノのサンダースさんです。「ジンバブエではようやく政府も障害者の声に耳を傾けるようになりました。自立生活によって障害者の自由度も増してきました。しかし、それは一部の地域に限られていて、教育の機会もまだ十分ではありません。特に初等教育は多くの問題を抱えていて、それが貧困を生み出しています。」とサンダースさん。

SDGsで掲げられている目標には障害に言及しているものがあり、各国でSDGsを理解して障害者施策につなげていくことで、これらの問題解決の後押しとなることが期待されます。
8名の研修員は日本での研修を終え、現在タイで在外補完研修に参加しています。




人間開発課 2017年7月