日本の道路行政の経験を引き継ぐ:課題別研修「道路行政」遠隔研修の実施

今や商品を注文すれば、翌日には宅配便で受け取ることができる便利な時代。それは全国に張り巡らされた道路網のなせる業。日本の道路は、どのように発展を遂げてきたのでしょうか。

2021年3月1日

第2次大戦の荒廃後の道路網整備の経験を引き継ぐ

出典:国土交通省ホームページ

 道路は、日常生活の利便性や輸送などの産業活動に不可欠な社会インフラです。
 1950年代の日本で、雨でぬかるんだ泥道にはまってしまった車を何人もの人で押し出している写真を見て、研修員たちは一様に驚いた表情を浮かべます。今やその面影は全くありませんが、その状況こそが日本の道路行政の原点ともいえるのではないでしょうか。

 日本では、1952年に「道路整備特別措置法」が制定され、有料道路制度が開始となりました。1953年には「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」が制定され、揮発油税が道路特定財源とされるとともに、「道路整備五箇年計画」に道路整備の目標、事業の量を定めて計画的に道路整備を推進することが示されることとなりました。1954年には「第1次道路整備五箇年計画」が策定され、第2次大戦の荒廃から社会経済の復興とともに日本の道路整備の水準は飛躍的に向上していきました。

 開発途上国におけるインフラニーズは、その国の自然条件、産業構造、都市化の状況や歴史的な経緯などによって異なりますが、道路分野では、経済発展の段階別に国土幹線道路整備・補修・都市の生活や機能を支えるための道路計画、地域間を繋ぐ高速道路網の整備などと多岐にわたるニーズが生まれます。これまでの日本の道路行政の経験を本研修では多くの研修員に引き継いでいます。

遠隔研修の実施

 今年度は「道路行政」と「高速道路総合」を合同で遠隔研修を実施しました。コロナ禍においても第一インフラである道路分野への関心は高く、14ヵ国から全18名の研修員を迎えました。アジア・中東・アフリカ地域の時差に対応すべく、A・Bの2グループに分けて日本時間の午後と夜に開催しました。
 また、遠隔研修でも参加型の研修を目指し、道路網計画の演習を取り入れました。研修員の皆さんに全国レベルのバイパスを構築してもらう課題を出し、作成した内容でディスカッションを行いました。時間の制約もありましたが、チャット機能も上手く活用して好評を得ました。

研修監理員ならではのおもてなし

 研修開始前の打合せで、本研修をご担当いただいた深田研修監理員から「どのように関与すれば、遠隔研修でも日本を感じて参加意識を高めてもらえるだろうか」と研修監理員の立場から考えてこられた画期的なアイディアを伺い、同研修監理員のご厚意により任意参加で“Real time Japan Tour”と題し携帯電話のZoomから様々な配信を行いました。
 浅草散策の際は、来日経験のあるナイジェリアの研修員からは「懐かしい!」と声があがり、ナミビアの研修員は「来日したらお土産に扇子を買いたい!」と盛り上がりました。
 遠隔研修となり現場見学は叶いませんでしたが、同研修監理員の自宅近くの道路工事現場に出向き、コースリーダーが解説を加える簡単な中継を行ったところ、皆熱心に見入っていました。
 また、日々の研修員への連絡時に日本文化紹介を加えるなどのおもてなしもあり、今後より充実した遠隔研修プログラムの実施に向けた気づきを得ることができました。コロナ禍で今後も遠隔研修は続くことと思いますが、少しでも来日した時に得られる体験を組み込むことを目指し魅力的な遠隔研修を提供していきたいと思います。

<事業・研修の概要>
タイトル:「道路行政」
・Aグループ
  実施期間:2021年1月18日~1月22日
  参加国:アフガニスタン、インドネシア、キルギス、ミャンマー、
  タジキスタン、ベトナム
  参加人数:7名
・Bグループ:
  実施期間:2021年1月25日~1月29日
  参加国:ベナン、ブルキナファソ、エチオピア、マラウイ、ナミビア、
  ナイジェリア、ルワンダ、ジョージア
  参加人数:11名

報告者:【E-mail】Miyoshi.Emiko@jica.go.jp 【TEL】03-3485-7641