JICA留学生へのインタビュー(チュニジア出身Ms. Amal、長岡技術科学大学工学研究科卒業)

2022年3月、長岡技術科学大学にて修士号を取得。同年4月より本邦企業で就職が決まったチュニジア出身の長期研修員Amalさんにインタビューし、長岡での留学生活を通じてAmalさんが感じたことを赤裸々に語っていただきました!

2022年4月4日

ABEイニシアティブプログラムへの応募のきっかけ~来日まで

お茶と和菓子を楽しむAmalさん

氏名: LABIDI Amalさん
出身国: チュニジア
留学先: 長岡技術科学大学 工学研究科 修士課程
JICAコース: ABEイニシアティブプログラム
研修期間: 2019年9月~2022年3月


私は以前から、日本が非常にユニークな国であることからいつか訪れたいと思っていました。海外で修士号を取得したかったため、日本にフォーカスして奨学プログラムを探し、ABEイニシアティブを応募しました。言語の壁を心配する人もいました。しかし、日本は安全で暮らしやすく、日本の論文はワールドワイドかつハイレベルであり、留学先として日本を選んだ私は最良の選択をしたと思っています。

このプログラムに合格してから来日するまで、私は様々なインターネット上の動画やアニメ、情報サイトで日本のことを事前学習しましたが、来日して何も理解していなかったことに気づきました。「百聞は一見にしかず」で、実際に日本の生活を経験していく中で毎日が発見の連続でした。日本は島国だからか個人の性格、振る舞いもユニークです。日本国内のご当地名物といった食べ物も興味深いです。こうした実際の体験を踏まえ、私は「日本を学んでいる(I am learning about Japan)」のではなく、「日本を経験している(I am experiencing Japan)」という表現をします。

新潟県長岡市での大学院生活

【研究生活】
私の修士課程における研究テーマは、「環境保全のための技術の長寿命化に関する研究(A study on extending technologies' lifespan for the environment safety)」でした。
来日直後に苦労した点は2つあります。一つ目は、「そもそも研究とはいったい何か」を知らなかったということです。来日前、チュニジア(学士課程)でも研究計画の作成、博士課程の学生への質問や多数の文献を読むといったことはしていましたが、自身の研究の位置づけ、具体的な研究の進め方や分析の仕方について分かっていませんでした。来日後、自分なりに探り、友人にも色々と聞いた結果、意外と多くの人が同じ状況であることが判りました。

もう一つは、言語の問題です。私の研究室は、学生がほぼ日本人で研究活動も日本語中心に行われ、加えてアパートも自分以外全員日本人でした。英語を話す先輩もいましたが、自分が来てすぐに帰国してしまい、一時はここに来るべきではなかったと思ったこともありました。

それでも毎週、先生とミーティングを行い、先生が私にタスクを与え、私が間違っている場合や十分理解できていない場合にはきめ細かく指導をして下さり、少しずつ修正をしていきました。こうした先生方とのミーティングやコミュニケーションを積み重ねることで、徐々に自身の研究について理解を深め、円滑な研究生活を送ることが出来るようになっていきました。

春:2,000m級の山々に囲まれた大自然、奥只見での湖上遊覧

【研究室外での生活】
正直に申し上げると、長岡市よりも、ショッピングやレジャーが充実し、交通も便利で、外国人の多い東京の方が良かったなと思うこともありました。しかし、今は長岡市の暮らしに心地よさを感じています。なぜなら、私はこの土地の食べ物を通じて文化や歴史を知ることが出来たからです。

2020年12月には、大学の先生からの紹介で、長岡市の国際交流センター「地球広場」にて、ぶらり地球旅行「魅惑の国 チュニジア」というイベントの講師としてチュニジア文化の紹介をしました。チュニジアの衣装は持ってきていなかったのですが、日本人の参加者にチュニジアの有名なゲームをいくつか教えました。発表は英語だと思っていたのですが、先生に「日本語で発表できますか?」と聞かれ、がっかりさせたくなかったので、頑張って日本語で発表しました。研究室の仲間が、私のプレゼンテーション資料の日本語を直してくれるなど協力してくれて嬉しかったです。ゲームの説明はなるべく暗記するようにして、当日はほぼすべて日本語で行いました。

冬:新潟県内でスキーを楽しむAmalさん

長岡市の国際交流センターのみなさんはとてもフレンドリーで親身になってくれます。国際交流センターの日本語クラスも二週間に一度通いました。

気候に関しては、チュニジアは夏でも湿気が少ないので、湿気が多い長岡の夏は少し苦手ですが、穏やかな気候の春や秋、そして冬が大好きです。冬にはスキーにも度々行き、長岡の冬ならではの過ごし方を楽しみました(通学やショッピングの時に一時間に一本しかないバスが度々雪でバスが遅延したのも良い思い出です!)。


ここでは自分と同じ国の出身の学生はおらず、英語もあまり使いません。さらにコロナ禍であまり外国人の往来もありません。誤った選択をしたかなと思った時もありましたが、東京のような便利で楽しいだけの暮らしでは、本当の意味で日本を体験したとは言えないと思いますし、ここでしか体験できないことを数多く経験しました。

卒業後の進路とこれから日本で学ぶ長期研修員に向けたメッセージ 

長岡技術科学大学卒業後、日本国内での就職が決まっています。
ABEイニシアティブのプログラムをはじめJICAの長期研修プログラムでは、奨学金の提供のみならず、何か分からないことがあれば相談することができ、常にサポートされていることを感じることができます。また、来日前から来日後の大学での就学や企業でのインターンシップまで組み込まれたよく計画されたプログラムだと思います。このプログラムを通じて経験したことを将来に役立てていきたいと思います。

ここで、これから日本で学ぶ長期研修員の方々に向けて、Amalさんが長岡技術科学大学の大学案内2023に投稿した文章をメッセージとして記載します。

長岡の桜並木とAmalさん

卒業式の記念撮影

私は外国に住むことで人生が変わりました。

目を閉じてみてください。
あなたは、誰も知らない、言葉も分からない、見た目も違う人々に囲まれ、感じ方や食べ物の味まで違う、どこか知らない遠いところにいることを想像してみてください。
どう感じますか?ワクワクしますか?怖いですか?

これは2年前に私が来日した時に体験した冒険でした。
日本を旅して日本を発見することにワクワクし、同時に自分自身への新たな発見があったことに驚きました。
私たちは、よく知っている人々や馴染みのある環境の中で過ごしている時には、自分自身が一体何者なのか、どういったことに適応し何ができるのか、といったことが分かりません。
私自身の日本での冒険がそうだったように、自分にとって心地よい空間から飛び出し、新しいことを試すことが自分自身を発見する一つの方法であると信じています。未知なるものを恐れないで!常に素晴らしい驚きがあるはずです。