サイエンス・キャラバン in SERENJE

2019年4月11日

開催趣旨・経緯

私たちは、理科教育隊員としてザンビアの中等学校で活動する中で、理科の授業の中にできる限り理科実験を取り入れる大切さを感じています。従って、隊員が受け持つクラスでは、なるべく理科実験を取り入れようと日々奮闘しています。それぞれが離れた任地で活動しているため、日ごろは自分たちが行った実験などの情報をSNSを通じて隊員同士で共有し、互いに切磋琢磨しながら活動を行っています。

ザンビアでは、3か月間の教育実習を2回行うことになっており、隊員が派遣されている学校にも教員養成校から教育実習生が実習に来ます。彼らと接している中で、新しいことに挑戦しようとするやる気や、新しいことを学びたいという意欲を感じました。しかし、日々の活動においては、なかなか自分たちの知識や経験を共有する時間が取れていないのが現状です。また、現地の先生の授業を見ていると、教科書に載っている実験を行う際に、実験器具がないと実験することを諦めてしまっているケースが多いことに気が付きました。

そこで、私たちは将来教員を目指す教員養成校の学生にターゲットを絞り、身近にあるものを使った実験の方法や実験器具の作成方法についてのサイエンス・キャラバンを行おうと考えました。

開催までの準備やアレンジ

まずは、開催場所をセレンジェのマルコムモファット教員養成校(Malcolm Moffat Collage of Education)に決定しました。理由は、JICAのプロジェクトの関係で教員養成校に日本人が派遣されており、その方が同教員養成校の理科の教授にサイエンス・キャラバンについて相談する機会を作ってくださったからです。

教授に相談したところ、私たちのサイエンス・キャラバンを快諾してくださり、日時、場所、対象の学生(Science Invention Club の学生約45名)をアレンジしてくれました。そこから、参加する隊員の各任地が離れているため、SNSを通じてどのような実験を紹介するか話し合い、サイエンス・キャラバンの内容を決定しました。話し合いの結果、内容は1)エンジンの仕組み(演示実験)2)光の反射実験の紹介(光源装置の作成) 3)水上置換法の紹介(ゴム栓、ゴム管の作成)4)はく検電器の作り方 5)顕微鏡の作り方に決定しました。

どの実験も正規の実験器具は高価なものが多く、なかなか学校にありません。しかしながら、身近にある材料を代用し作成することができるので、今回はそれらを紹介することにしました。サイエンス・キャラバンの内容を決定してからは、試作品を教員養成校に持っていき、教授に向けてプレゼンを行いました。

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サイエンス・キャラバンに共に取り組んだ理科教育隊員

ワークショップ当日を振り返って

今回は、サイエンス・キャラバンの目標を“隊員も学生もみんなで知識や技術を共有しよう!!”としました。まずは、当日の午前中に準備も兼ねて教員養成校へ行き、隊員同士での打ち合わせ及び準備を行いました。普段は、SNS上での打ち合わせのみなので、一緒に集まって作業する中で新たな発見があり、私たちにとっても刺激的な時間となりました。

次に、午後から学生に向けてサイエンス・キャラバンを行いました。特に、私たちが紹介することを真剣に聞き、一生懸命実験に取り組む学生たちの姿が印象的でした。サイエンス・キャラバンで紹介した実験の中でも、ガラスビーズを使った顕微鏡の作成が、学生のみならず教授陣からも大好評でした。ザンビアの学校には、顕微鏡があってもほとんどが壊れてしまっています。しかしながら、授業では顕微鏡の使い方もさることながら、細胞の観察も学習単元として明記されています。多くの現地の先生は、この単元を指導する際、模造紙に細胞の絵を描いて各部分の名称や機能を説明して終わってしまいます。もちろん、この指導方法が間違っているわけではありません。しかし、そのような時にこの顕微鏡で少しでも本物の細胞を観察できれば、子どもたちにとって素晴らしい機会になるのではないかと思っています。また、私たちは、理科教員にとって、“無いものを生み出すこと”、“本物を伝えること”はとても大切なことだと思っています。そのために必要な知識や技術を将来ザンビアの教員を目指す学生たちに伝えることが、今回の最大の目的でした。サイエンス・キャラバンを終えた今、当初に掲げた目標を達成できたと感じています。

全体を通して理科隊員のみならず、Serenjeの隊員、教員養成校の関係者をはじめ、多くの方々が協力してくださったおかげで、サイエンス・キャラバンを無事に終えることができました。改めて感謝いたします。素晴らしい時間をありがとうございました。

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顕微鏡作成の様子

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水上置換法実験の様子

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水上置換法実験の様子

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水上置換法実験の様子

参加した学生のコメント

-今回の実験は、どれも驚きが隠せない非常に面白いものでした。特にオリジナル顕微鏡を使った実験には感動しました。ザンビアの学校にはほとんど顕微鏡がなく、生徒たちは植物の細胞を見ることが出来ません。将来の理科教員として、安くてどこでも手に入る材料で顕微鏡の作り方を学べたことはとても良い勉強になりました。

-今回のサイエンス・キャラバンは大成功だったと思います。今回、私たち学生は多くのことを学び、恩恵を受けることができたと思います。私たちにも馴染みあって安くて身近にあるもの、例えばゴムバンドやビーチサンダルやボトルなどで作った実験用具にはとても驚きました。今までそれらの他の使い道を知りませんでした。今回私たちが学んだことを授業で実践したら、きっと、生徒たちも恩恵を受けることでしょう。生徒にも簡単に作れるものなので、彼らが家に帰り、兄弟・姉妹、友達に学んだことを共有すれば、コミュニティレベルでの学習や発展に繋がると思います。ペットボトルはザンビア中どこにでも捨ててあり、誰でもすぐに手に入れることが可能です。顕微鏡はザンビアではとても高価で中々手に入れることが出来ません。学校が経済的問題に直面して十分な実験器具を購入することができない時も、今日のサイエンス・キャラバンからヒントを得て、自分たちで生徒たちの為に役立つものを作っていきたいと思います。

-今回のサイエンス・キャラバンにとても満足しています。ザンビアの理科は理論の授業が中心です。今日の内容はとてもわかりやすく、簡単なものばかりでした。教育実習の時に、今回学んだことを是非応用してみようと思います。今回の内容は、村など田舎にいたとしても可能な実験ばかりです。どこに行こうと頑張ってやりたいと思います。

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サイエンス・キャラバン参加者と

サイエンス・キャラバンに取り組んだ理科教育隊員メンバー

2017年度1次隊 田中尚恵/セレンジェ・ボマ セカンダリースクール
2017年度1次隊 市川志野/カブウェ・ブロードウェイ セカンダリースクール
2017年度3次隊 鶴留守/ドミニカン・コンベント セカンダリースクール
2018年度1次隊 讃岐聖子/モンゼ・タウン セカンダリースクール
2018年度2次隊 高橋由哲/ムクシ・デイ セカンダリースクール
2018年度3次隊 原 悠/キャワマ セカンダリースクール