マラウイボランティアレポート「前任者の思いを引き継いで」

2021年12月27日

名前:寺門 香音
隊次:2021年度1次隊
職種:小学校教育
配属先:モンキーベイ教師研修センター
出身地:京都府

私はコロナ禍の影響による1年の延期を経て、2021年8月に赴任、10月より任地での活動を始めました。要請は、Expressive Arts(音楽、体育、図工、裁縫、ダンス、演劇が統合された教科)の授業の質を向上させることです。本要請での派遣は私で三代目です。

私の前任者である橋本彩花さんは、2020年、パンデミックの影響を受け任期の途中で帰国となってしまいました。それは、モザイクボードプロジェクトの真最中のことでした。本プロジェクトは、経済的な理由等で実技授業の材料が不足しているという背景から、誰もが容易に準備できる廃材を材料にすることで、全員が参加できる授業を構築したいという橋本さんの思いが込められた取組です。TDC(Teacher Development Center;教師研修センター)が管轄する12校が一枚のボードに一文字ずつ、ペットボトルキャップを用いて文字をデザインし、それらを繋げた"MONKEYBAY TDC"を配属先の前に飾ることが目標でした。

私が赴任した際、その作品の行方が気になり同僚に訪ねると、完成されたボード10個が綺麗に保管されていました。部屋の片付けが苦手な人が多いこの国で、そして金目のものは取られてもおかしくないこの国で、綺麗な状態の作品が1年半も大切に保管されていることに大変驚いたのを覚えています。またその状況から、橋本さんが配属先や各校の先生方と築き上げてきた信頼や友情がひしひしと伝わってきました。「これは彩花のプロジェクトなんだ。彩花は完成前に急に日本に帰ってしまった。もう少しで完成だったのに。」寂しさと無念さを滲ませながらも、素敵なボードと橋本さんとの思い出を誇らしげに語る同僚を見て、このプロジェクトを達成させることが私の最初の使命だと感じました。

残りの2つのボードの作成は、近隣校の協力を仰ぎました。一度取り組んでいることもあり、先生方の理解も容易に得られ着実にボードを仕上げることができました。ボードが完成した次の週には長期休暇に入ったため、展示作業は休暇中に同僚と2人で行いました。日中の暑い時間帯には作業が困難なため早朝と夕方の作業を数日間行い、12月11日、ついに展示を完成させることができました。

現在、作品を展示している場所はちょっとした観光地のようになっており、前を通る人たちが足を止めて見入ったり写真を撮ったりしています。作品完成の場に立ち会い、多くの人の喜ぶ顔を見られること、そして形だけではありますが、橋本さんの思いを果たせたことが、今は何より嬉しいです。素敵な作品の考案者である橋本さん、作品完成への思いを持ち続けてくれていた配属先にはとても感謝をしています。

この作品の展示が私たちの活動を知ってもらうきっかけになるとともに、最後までやりきることの素晴らしさを多くの人に感じ取ってもらうよい機会になると嬉しいです。1月からは新学期。いよいよ私主体の活動が始まります。誰も取り残されることのない実技授業の構築を目指し、材料や授業形態の工夫、先生や子どもとの良好な関係づくりに尽力していきたいと思います。

【橋本さんのボランティアレポート】

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キャップの色選びと、くぎ打ち

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ボードの完成

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TDCの前に展示した作品