ケニアで続くSHEPアプローチの「ふつう化」

2017年9月29日

ハム ジャンボ!

ケニア「地方分権下における小規模園芸農民組織振興プロジェクト(略称:SHEP PLUS[シェップ・プラス])」専門家の山田です。私たちのプロジェクト・SHEP PLUSでは、18カウンティ(カウンティ:規模的には、日本の県と同様です)を対象に、各カウンティでSHEPアプローチが「普及の普通」になることを目指し活動を続けています。

プロジェクトの活動内容について

2013年から地方分権が本格化したケニアは、それまでの国が主導する地方行政から、各カウンティが行政計画と予算を策定し、カウンティの予算で実施する体制へ変化しました。プロジェクトでは、農業普及を効果的に行う一手法としてSHEPアプローチの活用をカウンティ政府に提案し、その実施に必要な人材育成やアドバイスを行っています。対象となったカウンティは、1年目はSHEPアプローチの全ステップについて実践を通じて学び、2年目以降は各カウンティが自分たちの予算と人材で実現可能な普及計画を策定し、それを実施します。

他カウンティのリソース・パーソンの活用

プロジェクトを実施していく中で、頼りになるのがSHEPアプローチを知り、実践の経験・成功体験を持つ人材です。SHEPアプローチをこれから実施するカウンティ職員の研修に、SHEPアプローチを経験し、かつ先進的な取り組みを行っているカウンティから職員をゲストとして招き、体験に基づいた講義をしてもらっています。こうした「SHEP人材」の講義は、聴講するカウンティ職員だけでなく、プロジェクト本体である中央政府職員・日本人専門家にも参考になることが多くあります。

例えば、低予算による研修の実施です。プロジェクトが作成したマニュアルでは1週間かける研修を、2日に短縮して実施したカウンティがあります。そのカウンティでは、1週間のカリキュラムのうち、関連した研修を既存の普及員研修で既に実施しているため、重複部分を省略し、2日に短縮して実施できたのだそうです。こうした実践例は、SHEPアプローチをカウンティに浸透させるというプロジェクトが目指す方向性にとても重要な事例です。

Elgeyo Marakwet(エルゲヨ・マラクウェット)カウンティのエスタさん

最後に、Elgeyo Marakwetカウンティ職員の発言をシェアします。Elgeyo Marakwetは、プロジェクトが主体となる研修が終了した後も、独自の予算でSHEPアプローチに基づいた農業普及を続けることを決定したカウンティの一つです。

「SHEPアプローチは、 生産性と所得を向上させるという点で、農家グループにとって非常に重要です。その実施を通じ、農家は農業に必要な資材や家庭に必要な物資を購入できるようになり、ベーシックニーズを満たす生計向上に取り組むことができます。ポジティブな気持で、このアプローチを受け入れようではありませんか。」(Elgeyo Marakwetカウンティ農業局長、エスタ氏)

これは、SHEPアプローチをこれから実施するカウンティ職員を対象にした研修で、エスタさんが講師を務めた講義での発言です。JICAの技術協力プロジェクトだから実施するのではなく、農家の生活を改善させることができるからSHEPアプローチを推進したい、という彼女の信念が伝わる言葉だと思います。

2006年〜2009年にJICAとケニア農業省により実施された技術協力プロジェクトから生まれたSHEPアプローチは、農業普及の究極の目的である「農家を豊かにする」ことを指標として、今もケニアで普及の一手法として進化を続けています。

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農家グループを訪問し、歓待を受けるエスタさんと相川専門員

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エスタさんと山田

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運営指導調査で農家グループと集合写真