エルサルバドルでのSHEP

2017年11月30日

エルサルバドル東部地域野菜農家収益性向上プロジェクト(通称Horti Oriente)は、2014年から2018年の4年間の技術協力プロジェクトですが、中南米諸国の中では初めてSHEPが取り入れられています。SHEPの適用にあたっては、農家やカウンターパートの自主性やモチベーションを重視してきましたが、その結果、私達が想定していなかった形での展開が数々みられています。

例えば、本プロジェクトでは、農家の皆さんが作物の売上高、コスト、収益を計算できる出納簿と各圃場・栽培作物ごとの営農を記録する営農記録の双方を作成し、ビジネスとしての農業を普及しています。その過程で、すでに農協を結成している農家グループと個人農家との間で、大きな違いが出てきました。個人農家の場合、営農記録は一生懸命記入してくれるのですが、農協の場合と異なり、出納簿はなかなか使ってくれません。農家の一般家庭では、旦那さんが家計をすべて管理し、奥さんには家事のやりくりに必要なお金を週に1回渡すだけということが多いようです。つまり夫婦で家計すべてを共有することに抵抗があるようなのです。本プロジェクトでは第1、第2活動サイクルでは農協が対象でしたが、第3活動サイクルでは個人農家が多いため、このような課題に直面しています。文化的、慣習的なところにどこまで入る必要があるか考えさせられます。

想定外の展開はいろいろあるのですが、最近のもう一つ大きな驚きは、カウンターパートである農牧省アグリビジネス課の展開です。これまで東部地域の野菜農家と取り組んできた農家自身の気づきと計画策定、そしてこれに基づく解決策の提示、という流れを農牧省アグリビジネス課の通常業務として取り組むこととなりました。その際、同課の担当業務は野菜に限らないため、SHEPアプローチは野菜に限らずその他農産品、養蜂、畜産、漁業にまで適用する、という展開となっています。プロジェクトは終了間近ですが、最後まで驚きと学びの連続です。

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農家によるローカル市場での市場調査の様子

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アグリビジネス課職員による出納簿と営農記録の研修