“From High Yield Agriculture to High Profit Agriculture”-パレスチナ農家の関心に合わせたSHEPアプローチの多様化-

2018年10月23日

「市場志向型農業のための農業普及改善プロジェクト(EVAP-2)」では、SHEPアプローチの理念である「1)技術研修前の農家の動機付け」、「2)ビジネスとしての農業」、「3)自律性・有能感・関係性」を踏まえて、パレスチナ農業庁の能力強化を通じた農家の農業所得向上を目指しています。

パレスチナ農家の関心はさまざま。それに合わせた動機付けの方法とは?

動機付けの第一段階として、安定して高収益をあげている既存の中小規模農家への視察ツアーを実施し、参加農家が自分とのギャップに気づくようにしています。第二段階として、農家が市場を訪問して市場情報を得る機会を設けています。パレスチナには、飼育さえできれば高い価格で家畜を販売できる畜産農家や、高く売るよりも省力化に関心がある兼業農家、慣習的に卸売市場の訪問に抵抗を感じる女性農家など、多様な農家が存在します。そのため、よい資材を安く買うための農業資材・種苗業者、女性農家でも訪問しやすい小売店や加工業者も視察先として選定できるようにしています。これらの活動では、農家自身が視察・訪問計画を立てる参加型の方法にしています(農家の自律性)。

農家の関心を満たして、農家どうしをつなげる。

その後、農家グループが立てた研修計画をもとに技術研修を実施しています。農家の関心を踏まえて、他の農家の事例を入れるなど、理解しやすい内容にするよう配慮しています(農家の有能感)。パレスチナ農家の大きな課題として、イスラエルから大量に入ってくる高品質な農産物との競合があります。治安状況に合わせて物流も不安定なので、予測もできません。そこで、パレスチナとイスラエルの食文化の違いに着目しつつ、無理に競争しないですみ分けができる作物の普及も目指しています。また、農業庁公式SNS等を通じて活動内容を発信し、農家同士で情報を共有できるようにしています。普段接することのない農家を繋げることで、持続的・広域的に情報や優良事例を共有しあえるネットワーク構築も目指しています(農家の関係性)。

男女間の情報格差の是正が農業所得向上に結びつくのか?

パレスチナでは、男性農家が外部から情報を得る機会が多いために、家庭内でも男女間の情報格差が生じ、それが農業所得の向上にも影響しています。その格差を是正するための技術研修を実施して、農業所得向上に結びつくジェンダー主流化を目指しています。

これらのアイデアが成功するのかどうか。プロジェクトはまだまだ続きます。

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市場志向型農業を実践している農家を訪問して自分とのギャップに気づく野菜農家

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「バリューチェーンの上流の市場」である飼料業者を訪問して情報を得る畜産農家

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男女間の情報格差是正のための農薬散布技術研修に参加して情報を得る女性農家

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春が旬のグンデリア(イスラエル農家がほとんど栽培しない作物で、日本で言うとタラノメやフキノトウのような位置づけ)