ケニアSHEPが第14回JICA理事長賞受賞

2019年1月17日

ケニアのSHEPが第14回JICA理事長賞を受賞しました。SHEPアプローチによるケニア小規模園芸農家支援の知見共有、他国行政官育成への貢献が受賞の理由となっています。2018年11月30日には、農業・畜産・水産・灌漑省において同省副長官であるDr. Andrew K. Tuimurと佐野JICAケニア事務所長出席のもと、SHEP PLUSのプロジェクト調整ユニットに理事長賞が手渡されました。

2006年から始まった初代の技術協力プロジェクトSHEPは、小規模農家が儲けを出すことのできる農業への転換を目的とし、各種活動を組み立てました。単に生産性や収益性の高い作物の導入、それに付随する技術を指導するだけでなく、Farming as Businessを達成すべく、農家の心理面に着目をした活動群にその特徴がありました。現在のSHEPアプローチの原型となるお見合いフォーラム、男女農家普及員集合研修、普及員技術強化研修などを立ち上げ、農家によるマーケット調査実施、ジェンダーツールの活用、ユーザフレンドリーな技術提供を通じ、農家の平均所得2倍増を達成しました。

2010年からは、SHEPアプローチのケニア国内広域展開を支援するSHEP UPが開始されました。SHEPアプローチの研修は改良が重ねられ、それぞれ活動が効果を発揮する理由(TIPs)を吟味し、農家の技術とモチベーションの向上が連動していくSHEPアプローチの特徴を明らかにしていきました。SHEP UPは、ケニアの全47カウンティの内、33カウンティで13,800農家に研修を行い、平均所得を1.8倍に伸ばすという成果を残しました。

SHEP UPの実施中期である2013年に横浜で開催されたTICAD 5において、日本政府は、食べるための農業から稼ぐための農業への変革に必要な小規模農家への支援として、SHEPアプローチをアフリカ10カ国で展開することを横浜行動計画での活動としました。「作ってから売る」という従来の生産行動を「売るために作る」という市場志向型に変えてきたSHEPアプローチは、日本政府のコミットメントを実現する重要な手段となりました。このSHEPアプローチ広域化の実現に向けて中心的な役割を果たしたのが、2014年から開始された課題別研修「アフリカ地域市場志向型農業振興(行政官)」コースでした。2週間にわたりJICA関西センターで実施される同研修に続き、SHEP UPはケニア国内で1週間の研修を受け入れ、改良を続けてきたSHEPアプローチの構造とそれぞれの研修ツールを指導してきました。

ケニアでは2010年に憲法改正が国民投票で承認され、それまでの大統領府による地方自治からカウンティ行政へと分権化しされることになりました。TICAD5の開催と同じ2013年、その憲法改正を受けた初めての総選挙が実施され、新設された上院議会議員、カウンティ知事、カウンティ議員などを含む6つの直接投票が同時に行われました。この選挙後に本格始動したカウンティ下でのSHEPアプローチ推進を支援するため2015年から3代目のSHEP PLUSが実施されています。SHEP PLUSは、対象とする18のカウンティが自治体の予算と人材によりSHEPアプローチを活用して農業普及を継続できるよう支援を行っています。SHEP UPから引き続き、SHEP PLUSもSHEPアプローチ広域化の中心となる課題別研修を受け入れ、アフリカ22カ国から累計で200人以上の行政官を受入れてきました。

初代SHEPの開始から12年が過ぎ、農家の自律的な取り組み、農業行政官の真摯な指導、JICA専門家の支援によって、所得向上と生活の改善を体験している農家が大勢います。生活の改善は、時に子どもの学校経費支払いであったり、住居の修繕であったり、水タンクの設置、改良かまどの設置、薪を容易に手に入れるための植林活動、運搬に使うロバの購入、バイクの購入など実に多様なスタイルで現れてきます。こうして積み重ねられるSHEPアプローチの成果と合わせて、今回のJICA理事長賞受賞は、これまでにケニアSHEPに携わってきた関係者全員の大きな誇りとなりました。また、過去にケニア研修に行政官を派遣したマラウイ、セネガル、ニジェールの農業省が受賞を知り、お祝いのレターが届くなど、SHEPアプローチがアフリカ各国で信頼の高い農業普及手法であることを改めて確認できた、とても素晴らしい機会となりました。

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