旧外部有識者事業評価委員会(第2回)の概要

1.日時:

平成21年6月26日(金)13時30分〜15時00分

2.場所:

独立行政法人国際協力機構(JICA)竹橋本部9階講堂

3.出席者:

牟田委員長、池上委員、今里委員、大野委員、澤田委員、高梨委員及びJICA関係者(永塚理事、総務部、評価部、人事部(オブザーバー参加))

4.議事概要:

(1)平成20年度事業評価活動実績及び平成21年度事業評価活動計画について

事務局より、平成20年度事業評価活動実績と平成21年度事業評価活動計画に関し報告した。

委員から出されたコメントは以下のとおり。

  • 21年度計画の「一般財政支援、中止案件等の事後評価の実施」に関し、一般財政支援の評価においては、国・地域の開発援助環境によって、視点を変えて評価することが重要である。例えば、インドネシアやベトナムといった援助協調が進み日本の役割が大きな国において、日本が主導的役割を担い評価していくのであれば、他ドナーと協調して共通の指標を設定していくといった援助協調の枠組みの中で実施することや、日本が主体的に行った貢献に着目して評価を行うという考え方もあるだろう。他方、タンザニアやザンビアなど、日本の量的プレゼンスが小さな国では、財政支援を行うことで日本の既存の協力案件がスケールアップするなどの効果発現につながったか、といった視点が重要になろう。
  • 21年度計画のテーマ別評価「マスタープランから提案された資金協力・技術協力の測定を試みる擬似プログラム評価」に関し、新JICAでは無償を含めた形で協力準備調査を実施するようになったことで、統合前と比べ、無償も国別援助実施方針の中に位置づけて被援助国と案件選定・形成をしやすくなったと理解している。今後は、協力準備調査の際にスコープに入っていた技協・無償・有償3スキームの案件を1つの固まりとして、最終的に評価することも重要になるのではないか。
  • 21年度計画の「外部評価による案件別事後評価の実施」に関し、全案件を評価対象とするのは実際不可能なため、大規模な案件のみに絞るという方針は良いと思う。また、協力金額2〜10億円については在外事務所等経由で収集した情報に基づく机上評価を行う場合、現地調査にかかる経費削減にはなるものの在外事務所の業務負荷についても留意されたい。
  • 21年度計画の「評価能力向上に向けた支援」に関し、先ずは1,2件でも一度途上国側に評価してもらい、結果をシェアすることを検討してほしい。日本から見る評価と被援助国から見る評価では視点が異なるため、被援助国から「むしろこのような援助をしてほしかった」というような要望がある場合もある。そして、それは持続性の問題にもつながると考える。
  • 20年度実績で合計300件以上の案件を評価しているが、こういった評価結果は非常に役に立つ一方で、フィードバックも重要であるため、多くの案件を評価対象とせず主要なものだけに絞ったうえで、その中からの教訓を可能な限り細かく抽出しフィードバックした方がその後の案件形成等に役立つのではないか。

(2)新レーティング制度の基本方針について

事務局より、新レーティング制度の基本方針に関し説明を行った。結果、各委員から本基本方針に対し合意を得た。

委員から出されたコメントは以下のとおり。

  • レーティングシステムを検討する際、3スキームの連携効果をある程度システマティックに評価できるよう、仕組みとして取り入れると良いのではないか。
  • 今後、事業が協力プログラム化されればインパクトも自立発展性もより大きくなるはずであり、レーティングにおいてもその視点を組み込むことができればと思う。

その他、委員より協力プログラム化にかかる以下のコメントがあった。

  • 国際機関や世銀は技術協力と資金協力を1つの事業の中のコンポーネントに位置づけ、トータルで事後評価を実施している。JICA事業においても、3スキームが組み合わさり1件の事業としてインパクトをめざすことが将来的に向かうべき方向であると考える。
  • 案件採択においても協力プログラム単位での採択を目指すべきだと考えるが、協力プログラムの場合、予算化、事業化が非常に難しい。事前調査を行って骨組みを把握したうえで協力プログラムを形成し、コンポーネントを決めていかなければならない。

(3)事業評価年次報告書2009(案)及び新JICA事業評価ガイドラインの作成方針について

事務局より、「事業評価年次報告書2009(案)」と「新JICA事業評価ガイドラインの作成方針」に関し説明を行った。

委員から出されたコメントは以下のとおり。

  • 現行の事業評価ガイドラインでは、評価結果のフィードバックにかかる解説が十分ではない。評価結果を集約し今後の事業に役立てるような仕組みを考えて、新ガイドラインにおいても反映し実践的に活用していただきたい。
  • 今年度の評価によって新たに抽出される教訓・提言に対し、JICAが今後どのように対応していくか、あるいは昨年度の教訓・提言をこの一年間でどのように利用し改善することが出来たかということを、評価年報に詳しく記述してもらえるとフィードバックがよく機能しているということが理解できる。
  • 評価結果から教訓を学び、次のプロジェクトに生かすことが大切であるため、一般向けを念頭に、評価年報に掲載する個別プロジェクトの評価結果はもう少し率直な表現で明示的に記載すること、また新ガイドラインにおいてもその点の解説を盛り込むことを望む。
  • 新ガイドラインの公開方法についてはウェブ公開のみで良いと思う。

(4)その他

事務局より、6月15・16日にOECD(於:パリ)で開催されたDAC評価ネットワーク会合での議論に関し簡潔に報告した。

(5)委員長によるまとめ

今年度は、3スキームを統合した評価を実質的に行う第一年度として非常に大事な年である。今年度の実施方法が今後の評価を評価していくことにもなるので大変なご苦労だと思うが、ぜひよろしくお願いしたい。また評価部にあっては、JICA内で評価の観点からプロジェクトの計画を行うという方向にも力を入れていただきたい。これがJICAをリードしていくことになると思う。それが委員一同の願いでもある。

以上