JICAにおける事業評価の仕組み
JICAは、事業のさらなる改善と国民への説明責任を果たすことを目的として、技術協力、有償資金協力、無償資金協力それぞれのプロジェクトの事業評価と総合的・横断的なテーマ別評価を実施しています。
JICAにおける事業評価の特徴は、5つに集約できます。
1.プロジェクトのPDCAサイクルにおける評価
PDCAサイクルとは、事業活動の継続的な改善を目的としたマネジメントサイクルであり、Plan、Do、Check、Actionの4ステップからなります。
JICAの事業評価は、援助スキーム(注1)にかかわらず、プロジェクトのPDCAサイクルと一体不可分の関係にあります。支援の期間や効果発現のタイミングなどといった援助スキームの特性を考慮しながら、プロジェクトの事前段階から、実施、事後の段階、フィードバックに至るまで、一貫した枠組みによるモニタリングと評価を実施しています。このようにPDCAサイクルの各段階でモニタリングと評価を行うことにより、プロジェクトの開発効果の向上に努めています。
(注1)技術協力、有償資金協力、無償資金協力などの援助の仕組み
2.3つの援助スキーム間で整合性のある手法・視点による評価
JICAでは、援助スキーム横断的な手法・視点により事業の評価を実施しています。技術協力、有償資金協力、無償資金協力それぞれについて、各援助スキーム間の特性の違いに考慮しつつも、基本的な枠組みを共通にすることで、整合的な考え方による評価の実施と評価結果の活用をめざします。
具体的には、1.プロジェクトのPDCAサイクルに沿ったモニタリングと評価、2.経済協力開発機構/開発援助委員会(OECD-DAC)による国際的なODA評価の視点である「DAC評価6基準」に基づく評価、3.独自開発のレーティング制度を活用した統一的な評価結果の公表、がそれに該当します。
DAC評価6基準による評価の視点
妥当性(relevance)
- 支援実施の妥当性(当該国の開発計画、開発ニーズ/社会のニーズ/対象地域の受益者層)
- 「受益者」に着目し、弱者への配慮や公平性を踏まえて事業が形成されているか。事業実施期間中に状況の変化が生じた際にも、常に妥当性を確保し続けるべく適切な調整を行ったか
- 事業計画、アプローチのロジックの適切性
整合性(coherence)
- 日本政府・JICAの開発協力方針と整合性
- JICAの他事業(技術協力・有償/無償資金協力等)との具体的な相乗効果・相互連関
- 日本の他事業、他の援助機関等による支援と適切に相互補完・調和・協調、国際的な枠組み(SDGsなど国際目標やイニシ アティブ)国際的な規範や基準と整合し、具体的に取り組みや期待される成果が示されているか
有効性(effectiveness)
- 期待された事業の効果の、目標年次における目標水準の達成度(施設、機材の活用を含む)その際、受益者間において達成度や結果に違いがあるか否か
インパクト(impact)
- 正負の間接的・長期的効果の実現状況(社会システムや規範、人々の幸福、人権、ジェンダーの平等、環境社会配慮)
効率性(efficiency)
- 事業の投入計画や、事業期間・事業費の計画と実績の比較
持続性(sustainability)
- 事業によって発現した効果の持続性の見通し
- 組織・体制面(組織の体制/人材)、技術面、財務面(運営・維持管理予算確保の現状、環境社会面、リスクへの対応、運営維持管理の状況
3.テーマ別の評価による横断的・総合的な評価
JICAでは、複数のプロジェクトを取り上げて総合的かつ横断的に評価・分析したり、特定の開発課題や援助手法を中心にテーマとして取り上げて評価を行う「テーマ別評価」を実施しています。特定のテーマに沿ってプロジェクトを選定し、通常の事業評価とは異なる切り口で評価することによって、共通する提言・教訓を抽出することを目的としています。
4.客観性と透明性を確保した評価
JICAが行う事業評価では、評価の客観性と透明性を確保するための取組みを行っています。事業実施の効果を客観的な視点で測ることが求められる事後評価では、案件規模に応じて外部の評価者による評価(外部評価)を取り入れています。さらに事後評価結果などをJICAウェブサイトで公開することで、透明性を確保するよう努めています。
また、評価の質を向上させるため、外部有識者により構成される「事業評価外部有識者委員会」を定期的に開催しています。この委員会では、有識者から、評価の方針や評価体制、制度全般などに関する助言を得ており、外部者の客観的な視点を事業評価の制度に反映させる上で重要な役割を果たしています。
5.評価結果の活用を重視する評価
JICAの事業評価では、評価結果をPDCAサイクルのActionの質を高めるために活用することを重視しています。対象プロジェクトの改善に関する提言、実施中あるいは将来の類似プロジェクトに対する教訓のフィードバックに加え、今後はJICAの協力の基本的方針へのフィードバックをさらに強化していきます。
また、相手国政府へ評価結果のフィードバックなどを行い、評価結果が相手国政府のプロジェクト、プログラム、開発政策などに反映されるよう努めています。
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