第11回議事概要

2007年7月 第11回:議事概要

1.日時  平成19年7月27日(金)10:00〜12:00

2.場所  国際協力銀行 5階役員会議室

3.議題  2006年度事業評価結果及び2007年度事業評価計画

4.出席者

(1)外部委員(敬称略、50音順)
池上 清子国連人口基金(UNFPA)東京事務所所長
今松 英悦毎日新聞社論説室論説委員
澤田 康幸東京大学大学院 経済学研究科准教授(ご欠席)
高橋 清貴特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
調査研究・政策提言担当/恵泉女学園大学人間社会学部 国際社会学科准教授(ご欠席)
岡本 義朗三菱UFJリサーチ&コンサルティング 公共経営・公共政策部主任研究員
林 寛爾日本経済団体連合会
国際第二本部アジアグループ長兼国際協力グループ長
三浦 和紀国際協力機構(JICA)企画・調整部事業評価グループ長
三竹 育男社団法人 日本水道協会 研修国際部 国際課 国際専門監
牟田 博光東京工業大学大学院 社会理工学研究科 教授

(2)

内部委員
荒川 博人専任審議役(委員長)
飯島 聰プロジェクト開発部長
山中 晋一総務部審議役
山田 順一開発業務部次長
荒井 透開発第1部次長
北野 尚宏開発第2部次長
澤井 克紀開発第3部次長
宮尾 百合子   開発第4部次長
内田 勤開発セクター部次長
齋藤 法雄環境審査室2班課長(代理出席)

(3)

事務局
内田 勝巳プロジェクト開発部開発事業評価室長(事務局長)
山邊 卓プロジェクト開発部課長(評価企画班及び事後評価班)
川淵 貴代プロジェクト開発部開発事業評価室調査役

5.議事概要

 荒川委員長の挨拶、外部委員及び内部委員の紹介に続き、2006年度事業評価結果及び2007年度事業評価計画について事務局より説明が行われた。主な意見、質疑応答は以下の通り(議事概要での○印は外部委員の発言、※印は内部委員及び事務局の発言)。

(1) 新25項目評価1の試行
新方式により、DAC5項目を細分化するという取り組みについては評価する。それぞれの項目はどのような方針に基づき選んだのか、説明していただきたい。また、妥当性に分類される項目が9項目提案されており、結果、現行のフローチャートにおける比重とあまり変わらないのではないか。有効性、インパクトをより重視した評価方法も検討すべきと思う。
各項目の重みを変化させることにより、現行方式に限りなく近く、逆転現象が起こらない方式を構築することが可能と思う。
レーティング結果は同じであっても、それに至る原因や過程が異なっているため、新方式における項目の設定にあたっては、現行のDAC5項目評価にて抜け落ちている項目を拾い上げるように工夫した。それぞれの項目の重みについては今後、試行しながら検討していきたい。妥当性の9項目についても、それぞれが同じ重みで良いとは考えておらず、濃淡をつけるべきと考えている。
新方式の妥当性で取り上げられている項目についてコメントしたい。「開発課題と整合しているか」という項目はそもそも必要か。「他ドナーとの役割分担は適切か」、「相手国政府の他案件との役割分担は適切か」という二つの項目については統合することが可能と考える。「事業の目的・内容は明確か」という項目については、審査時に先方政府と合意する文書において、必ず共有していると思うが、明確でないケースというのはあり得るのか。また、「事業はMDGsに貢献するのか」という項目が含まれていることは良いが、主に目標1として挙げられている「極度の貧困と飢餓の撲滅」についての寄与を対象として評価するということになるのか。
ご指摘いただいた項目については、それぞれ視点としては必要と考えているが、それぞれの重み、点数化の手法、項目の統合等、ご指摘いただいた点については、試行を踏まえて今後検討していきたい。
評価の項目を細分化する新方式の試みは面白いと思う。新たな視点として、需要者の視点を提案する。特に上水案件において、構築したシステムが需要者の視点を欠いていたため、うまく動かない、というケースがある。
需要者の視点という意味では、「事業効果は対象層に裨益しているか」という項目を設け、検討することを想定している。また、現在受益者調査レファレンスの改定を行っており、受益者の視点の強化に向けた取り組みを行っている。
(2) 新JICAにおける評価体制について
インパクト評価手法の研究を進めていることには賛同するが、新JICAへの移行を踏まえ、スキームによって異なる評価手法を設ける必要があるのか等の検討が必要と考える。
新JICAの評価制度については、現在JICAと共同で調査を行い、検討を進めている。円借款、無償資金協力、技術協力のスキームの性格を踏まえた評価体制を構築していきたい。
新JICAでは、円借款と併せ、リハビリ無償やJICA専門家の派遣等利用可能なスキームが増えることから、レーティングの低い案件のフォローアップが従来以上に可能となる。
(3) レーティングD案件2について
レーティングDとなる案件は、その問題の性質上、フォローアップが可能なものと、可能でないものとがある。中には、実施の途中で取り止めるべきだった案件もあるだろう。
レーティングDの案件におけるフォローアップとしては、具体的にどのようなことが実施できるのか。
評価の結果や教訓を新規案件に繋げることが重要と考える。
レーティングD案件については、援助効果促進調査(SAPS)、完成7年後の事後モニタリング等の対象となる。持続性が問題となった案件については、特に重点的なフォローが必要である。
有効性の発現が十分でない、との理由でレーティングDとなったものについては、フォローアップにより効果の発現を促進することができる。過去の例では当初想定していたアウトプットが、国内政策上必要無くなり、同アウトプットを別の用途にて活用するため、検討を行ったというケースがあった。すべての案件において打開策を見つけることが可能という訳ではないが、使われた資金が有効利用されるよう、努力する必要がある。また、中間レビュー等を行った上で、途中で打ち切るというような決断も必要と思う。
レーティングDの案件には、案件個別の問題を抱えるものと、政策面での問題を抱えるものに分けられる。傾向を見ると案件個別の技術的な問題によりレーティングDとなるケースは少ない。政策面の問題に対しては、ポリシー・ダイアログを行うことが有効と考えるが、案件によっては、スコープ変更や打ち切り等の選択もありうる。レーティングDとなった案件の傾向を改めて分析することにより、教訓・提言を導き出し新規案件に繋げていきたい。
直感的なレーティングと評価によるレーティングが大きく異なることはあるか。また、問題案件において、フォローアップの打ち切りは、どのタイミングで判断しているのか。事業を続けるべきか、あるいは打ち切るべきか、と現場レベルで悩むケースは多いと思う。
レーティングについては、日々の案件監理や中間レビュー通じて、事後評価の前に見当がついているものが多く、評価前の想定から大きく外れることはない。中間レビューや事後モニタリングにより、フォローアップの打ち切りを決断することもある。
被援助国政府も案件のポートフォリオの見直しを行っており、妥当性が無くなった案件については、打ち切りやスコープの変更を決断することもある。被援助国政府も本行も状況の変化に対応できるよう、努力している。
新JICAにおいては、駐在員事務所の数も増えることから、より密に実施機関との協議を行うことにより、案件実施における問題点を初期段階にて解決する等、機動的な対応が可能になると考える。
(4) 中国円借款総括評価について
中国円借総括評価については、非常に期待している。同国の経済発展、脱石油による環境への効果、さらには世界・アジア経済に対するインパクトの評価が可能と考える。
現在調査内容について検討を進めており、ご指摘の視点を踏まえて、前向きな評価を行っていきたい。
(5) その他
テーマ別評価のテーマや調査の優先度はどのように決まるのか。
多くの場合は、日常の業務を行う上で、問題意識としてもっているテーマ、例えば「留学生借款はどのように評価すべきか」といった問題意識に基づき、テーマ設定を行っている。一方、当方だけでは十分にアイディアを出し切ることができないため、大学等との意見交換の場を活用している。
1新25項目評価とは、現行のDAC5項目(妥当性、効率性、有効性、インパクト、持続性)を25項目に細分化するとともに、レーティング方式についても、現行のフローチャート式ではなく、総合得点方式を取り入れた試行的な評価手法。
2評価結果を分かりやすく公表するため、2004年度より事後評価においては「A(非常に満足)」、「B(満足)」、「C(概ね満足)」、「D(不満足)」の4段階のレーティングを行っている。

以上