第4回議事概要

2003年11月 第4回:議事概要

委員会の様子
1. 日時  平成15年11月14日(金)10:00〜12:00
 
2. 場所  国際協力銀行5階 役員会議室
 
3. 出席者
 
1)外部委員(敬称略、50音順)(議事概要での○印は外部委員のご発言)
今田 克司CSO連絡会事業開発担当オフィサー
今松 英悦毎日新聞社論説室論説委員
川口 晶日本経済団体連合会国際経済本部
アジア・大洋州グループ長
高梨 寿海外コンサルティング企業協会(ECFA)主席研究員
谷崎 義治三重県総合企画局政策企画分野評価システム特命担当監
三輪 徳子国際協力機構(JICA)企画・評価部調査役
牟田 博光東京工業大学大学院社会理工学研究科教授
弓削 昭子国連開発計画(UNDP)駐日代表
 
2)内部委員(議事概要での※印は内部委員の発言)
武田 薫専任審議役(本委員会委員長)
角谷 講治総務部長
荒川 博人開発業務部長
木山 繁開発第1部長
古賀 隆太郎    開発第2部次長(代理出席)
田辺 輝行開発第3部長
枦山 信夫開発第4部長
金子 篤開発セクター部総務班課長(代理出席)
畑中 邦夫環境審査室長
種田 博プロジェクト開発部長(事務局長、本委員会進行役)

4.議事概要

武田委員長の挨拶、内部委員・外部委員の紹介に続き、事前に各委員に対し事務局より配布された資料に基づき、2002年度・2003年度事後評価活動概要、今後のフィードバック計画及び第3回委員会における委員ご提案への対応状況について、事務局より説明が行われ、フィードバック事項の抽出については異論が出てこなかった。その後、当日欠席された池上委員からのコメントの紹介に続き、主に以下の諸点について出席委員より、活発な発 言、議論が行われた。

JBIC の評価実績及び評価の役割について

JBICの評価における3つの100%の達成を評価する。
出席した外部委員の方々インパクト評価において、受益者を対象としたインタビューまたはアンケート調査を実施し、受益者・住民の事業に対する反応が分かるように配慮すべきである。これは住民の生活の質が改善したか否かを伝えることが、一般的には分かりやすく、さらに住民の顔が見えることにより、実感が共有できるなどの理由による。インタビュー結果で事業に対する批判等がある場合には、合わせてJBIC のポジションを報告書で示した方が良い。
フィリピン「アンガット給水拡大事業民活評価」について、単独事業の評価としては良くできているが、保健医療の改善、インフラ整備、貧困対策等の複数の上位目標・事業目標を案件形成の段階から意識して整理するとともに、評価のためのJBIC独自の指標を設定する努力が必要ではないか。
ベトナム「北部交通インフラ事業インパクト評価」についてはインフラの重要性を発信していくという意味で非常に有益と考えるが、「円借款として実施したことの妥当性」を評価の視点として明らかにすべきであろう。
アセアン諸国の投資環境整備は非常に重要であり、民間の立場からすれば、制度的な枠組みとともに、港湾、道路、電力、通信網等の基礎的インフラ整備がされていることが投資の前提条件である。しかし、それらは民間だけでは対応出来ないところ、ODAによるインフラ整備が非常に重要である。この点を積極的に外部発信していって頂きたい。
事前評価は、JICAでも実施しているが、開発ニーズや政策との整合性については当然ながら合致していることが多く、むしろ、対象セクター、課題の具体的な問題解決手段としてその事業が最も適当であるかという視点が整理できていないことが多いところ、その点を踏まえながら評価室より事業部に対してコメントするようにしている。
2002年度評価のうち「事業用地の確保、調達手続きによる工期の遅延」が指摘されたが、これは日本でも問題であるところ、円借款の場合の具体的原因及び対応策如何。
工期の遅延に関しては、調達手続きにおける遅延が多いが、円借款では原則的に国際競争入札を行うところ、借入国が手続きに不慣れであること等が主な原因である。
土地収用の状況は途上国によっても様々であるが、当行では新環境ガイドラインを作成し問題に対応している。住民移転は簡単には行かないものであり、丁寧に時間をかけて行うことが必要である。少なくとも不必要なトラブルは減らすように努力しなければならない。
住民移転に関しては今年10月から新環境ガイドラインを新規事業に適用しており、例えば大規模な住民移転はカテゴリAになるなど、住民移転に対する基準を厳しくしている。住民移転を行う際は、もちろん住民との協議を行うことが必要であり、大多数の住民の賛同を得るのが前提である。このような取組みによって、10年後の事後評価では、事業の実施段階での住民移転の状況をよりよく把握できるようになろう。
左から川口委員、高梨委員、谷崎委員三重県では事業の目標設定を重視している。事前に目標を定め、それがどの程度達成されたかを事後的に評価することが分かりやすく望ましいと考えるためである。また、事業をいくつかまとめて上位目標を設定しているが、事業の括りと執行部署が異なると、権限体系がばらばらになり評価が難しくなるという問題がある。予算との連携については、三重県の場合、当初は評価結果を予算に反映させることが可能と考えていたが、実際は困難であることが明らかになった。機械的な連動ではなく、評価内容を総括的に踏まえて連動させることが現実的であろう。
評価と予算を結び付けるのは難しいという一般論があるが、世銀では、IDAの資金をどのように使っていくかを検討するのに際し、個別事業だけでなく、制度改善や政策を含めたCountry Performance Indicatorを作成している。世銀のこのような動きも踏まえ当行の考え方を問われていると認識している。
評価は、アカウンタビリティーと現場へのサービスの提供の面がある。評価の教訓の円借款業務への反映度合であるが、2002度の評価で妥当性、自立発展性に関して様々な教訓があるものの、これらは昔から良く言われていることであり、同じことを繰り返すのはコストにしかならず、一歩踏み込んだ教訓にしていくことが現場から見た課題である。
左から今田委員、今松委員新ODA大綱でも明確にされた平和構築や紛争予防のような、従来の開発援助とは違う新しい分野が注目される中、手法の修正も含め、どのような評価を実施するかは、JBICだけでなく開発援助全体的な課題であろう。民族対立など複雑な外部要因が影響する場合、今までの評価では十分でないと思われるので、手法につき考え直す必要があろう。また、支援がどこまで到達したか、つまり住民の生活改善、人間開発にどれだけ寄与したかを調べ、結果をフィードバックすべきであろう。
評価についてはドナー間で同様の問題を抱えていることが多いと思われるところ、連携を深める必要があるだろう
例えば紛争後の開発などの新しい分野については、当行自身は実施の経験が少ないため、自らの経験を評価しているだけでは理解が深まらない。評価室は他の機関・国の評価を咀嚼して、業務の改善に役立てるべきである。

評価のフィードバックについて(外部向け)

フィードバックセミナーは、充実したフィードバックを行うための良いシステムである。評価で判明した良かった点と良くなかった点の両方について、しっかりと言及すべきだろう。良くなかった点が生じた原因については、外部要因の変化のほか事業実施機関やJBIC の対応(または不対応)についても評価で教訓を導いて、フィードバックセミナーで言及すべきだろう。また、評価専門家や行政機関関係者のみならず、政策立案者である国会議員等の参加についても検討すべきと考える。
政策面でのアドバイザーとなるべく、事業を実施した国だけでなく、他の国でも活かせるようにフィードバックしてはどうか。例えば、アンガットの水道事業民活については他の国も学ぶところが大きいであろう。
借入国に対するフィードバックでは、何のためのフィードバックなのかに関する明確な目標設定をすることで、何をすべきかがより明らかになるのではないか。
フィードバックに関しては、評価実施国にフィードバックするのが基本だが、先般ベトナムで行われた投資のセミナーに出席した際、ホーチミンに地下鉄を作りたいと話があった。円借款ではソウル、北京、バンコクで開発段階に応じて地下鉄事業を支援したという豊富な経験があるように、過去の知見を商品化して、途上国にサービスとして提供できると思料する。評価室はコスト部門ではなく、ベネフィットも産むことも可能であると思料。
左から、三輪委員、牟田委員、弓削委員日本国民、日本政府、借入国、JBICの4つがフィードバック対象となっているが、それぞれに関し、何のためのフィードバックなのかに関する目標を設定すべきである。例えば、日本国民への評価結果のフィードバックの場合、JBIC の認知度を上げることが目標なのであれば、その目標に沿った指標の設定などを考えることになるのではないか。評価報告書に関するアンケートに関しても、何のためのアンケートなのかを明確に設定することが必要であり、単に回収率をあげるというアウトプットのレベルにのみに心を砕くべきではない。
「JBIC ファン」を増やすためには、例えばまずその取っかかりとして、この委員会の委員がオーナーシップを持ってどれだけ円借款を理解・宣伝できるか、委員に自主的にそういう動きを促すようにできるかが重要だと思う。
フィードバック対象にJICAを入れるべきではないか。援助機関同士の連携が求められている中、現在では、円借款のうちJICAの開発調査と連携しているのは全体の3分の1程度しかないと理解しており、そういった関係を象徴するような印象があり残念に思っている。
ご指摘の通り、昨年度承諾した50件弱の案件のうちJICA でF/Sを行ったのは、おそらく数件であろう。JICAは独立行政法人化に伴い政策の変更等もあると思うが、JICAとの連携に関してはフィードバックを越えた大きな問題であり、今後関係の在り方を改めて検討する必要があろう。
ある国のファクト・ファインディングミッションに参加したが、その国のF/Sは特に財務分析面が不十分であったところ、そういった点は評価結果よりフィードバックして改善していくべきであろう。

評価のフィードバックについて(内部向け)

JICA の内部の職員アンケートで評価結果を使わない理由として「評価がなくとも、事業は実施できる」というコメントがあった。JBICでは過去の教訓を事業事前評価表に記載することを既に導入されているところ、参考としたい。
当行では、事後評価報告書を作成する際、行内関係部から構成されるEvaluation Committeeを開いているが、さらに他の国の担当者にまで評価結果をフィードバックする目的で、行内向けのフィードバックセミナーを開催しているものの、当セミナーへの参加状況は芳しいとは言えない。その原因として、関係部の業務が多忙なこともあり、フィードバックが大切であるとの認識が持たれていない、また評価が十分なレベルに到達していないこと等が考えられるが、これはJICAと当行の共通の認識ではないか。
内部へのフィードバックについて、事業の評価はコストであるという意識を開発部は持ちがちであると認識し、事業実施と評価をコーディネートすることが重要であろう。組織の機構、文化の問題もあると思うが、評価が「面倒なものである」という意識を改革することも、内部フィードバックの目標になろう。

国民への広報について

新ODA 大綱の作成にあたり国益重視との意見もあったが、援助の本筋は途上国に対して手を差し伸べることであるとの結論となった。財政難の下、一般的には援助に対して後ろ向きであるも、貧困問題、平和構築など援助のあるべき姿は変わらないだろう。円借款は効率が悪く、役に立っていないと考える人がいる中で、援助の実態を示し、相手国の国民にどれだけ裨益しているかという点を評価の中で明らかにして、援助に対する否定的な雰囲気を前向きに変えていくべく国民に伝えるべきであろう。
国民へのフィードバックに関して、当行では主に総務部広報室が担当している。各種の広報パンフレット等を作成するほか、広く国民へフィードバックするために、マスコミに対しても日々コンタクトをとり、基本的な事実関係を理解して頂くとともに、興味深い話があれば積極的に紹介するように努めている。ただし、事後評価という概して専門的で地味なものと思われがちな話題をどのようにマスコミに記事にしてもらうかが今後の課題であると認識している。
事業が完成したからといって話が完結するわけではなく、誰に対してどういう便益があったかという成果・結果への関心度は高まっていると思う。マスコミも関心を持つのではないか。
現場の記者にとっては、ODAや円借款は興味があるものである。事業として上手くいっていないものもあるが、上手くいっている場合は何故上手くいっているのか、また、今後どういった形で援助を展開すべきかという点はマスコミも興味をもつだろう。事後評価についても前向きに広報したら良いと思う。
アンケートをHPに掲載した経験では、添付資料を開きアンケート結果を作成後に指定先に送るといった技術的な手間があると、アンケート回収率向上には寄与しない。

BICからのフィードバックに対する相手国の対応状況について

借入国へのフィードバックとして教訓・提言事項をレターで送付しているとのことであったが、相手からのレスポンス状況が知りたい。どの程度踏み込んだ回答があり、対話が行われているのか、また、改善されたという報告もあるのか。
教訓・提言は一般的なものと、当該案件特有のものに分けられる。後者の場合には、完成案件の問題に対し、コンサルタントに業務を委託し改善に向けた提言を出す支援である「援助効果促進調査(SAPS)」に結び付ける事例が毎年数件ある。しかし、そのような場合を除くと、先方より書面を以って何らかの回答があるということはほとんどない。様々な原因があると思料するが、例えば維持管理予算を確保するべきという提言のフォローは相手国政府にとっては大変なことである。一方で、提言を踏まえガイドライン等に反映したという事例があることも事実である。

「評価の評価」について

本評価の中では、評価の仕組み、方法、視点(指標を含む)、フィードバック状況を評価対象としている。既に、一部インタビューを開始しており、今後は11月にスリランカ、12月にタイに調査に行き、現地調査につき評価をする予定である。また、JBICの担当部の部長の方々にも今後詳細なお話しを伺いたい。
JBICの「評価の評価」に対応するものとして、JICAでは外部有識者評価委員による評価を実施したが、終了時評価40件を対象とした評点付けや報告とりまとめで委員の方にやや過重な負担をかけすぎた。同反省をふまえて今後どのように続けて行くか検討中である。
評価を如何に実施するかという点は、事後評価につき考えるべき主題のひとつであり、「評価の評価」として専門家と共同して方策を練っていくことは重要であろう。

中間評価について

事業の中間段階で、外部要因が大きく変化したために当初の事業目標の達成が危ぶまれるような場合には、事業推進部のみならず評価室も監理・評価に参画し、事業推進部の意見と評価室の意見の両方をマネジメントに上げるべきではないか。その上でマネジメントが総合的な視点でJBIC としてのスタンスを判断すべきだろう。そのためには評価室にある程度の独立性を確保するとともに、問題が生じた際に機動的に評価室がミッションを派遣し得るよう、できれば評価室の人的リソースにある程度の余裕を持たせることが理想ではないか。
2002年度の評価結果には、「一部では、関連事業への配慮が不足、需要見込みが過大な事業があった」とあるが、長期にわたる事業期間の中で、上記問題が発生するのは当然のことであり、途中段階で事業の見直しをする必要があるだろう。審査で目標として合意すべきはアウトカムであり、その達成のためには、然るべき手続きを踏まえれば、アウトプットは途中段階で変更しても構わないと考える。中間評価を定期的にやらなければいけないとは考えないが、限られた資源の配分を考える際に、事後評価から審査・中間段階に比重を移し、完了した事業は全て優良にすることを目指すべきではないか。
開発部では、事業のアウトプットにとらわれ、途中段階で事業の変更が円滑にできないことが過去にあった。かかる反省を踏まえ、現在は、完成のみならず効果発現まで開発部の義務と捉え、既に、計画の変更に関しては、日本政府と検討するなど十分に対応している。評価室が人員面での制約があるにもかかわらずさらに中間段階で関わることは、組織全体としての費用と便益を勘案すると望ましくない。
担当国の水道事業で、ADB・世銀等と協調融資がある。世銀は担当する配水管部分について、民活でやろうとしたが、実施者が見つからず、結局撤退してしまった。そこで当行 としては、ADBと協議しながら「案件実施支援調査(SAPI)」を行い、担当する浄水場を縮小し、浮いた資金を配水管整備に振り向けることを検討している。最終的にそのようにするには、日本政府から事業内容変更の了解を得ることが必要である。こういった許可等を得るのには、日本に限らず途上国側でも時間がかかることが往々に有り、途中段階で計画を変更することが常にスムースに行くとは限らない。いずれにせよ、開発部としても中間監理に力を入れているところ、中間評価の重要性を強調することは当然と考える。

5.委員長総括

委員の方からご意見、ご質問を頂戴し感謝している。時間が限られているため、この場で全てに対してすぐに回答を差し上げることは出来なかったが、委員の方から頂いたご意見、ご質問を取り纏め、ご質問に関してはできるだけ早く事務局から回答していくことと致したい。また提言については、こちらで検討した上で次回以降も引き続き議論することと致したい。

(以上)