外部有識者事業評価委員会(独立行政法人化前) 第1回会合の概要

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評価の実施体制や手法等について助言を得て評価の質を向上させ、評価結果について検証を受けることでその客観性を高めることを目的として、外部有識者からなる評価委員会を設置しました。外部有識者のコメント(下記4.(3))を踏まえ、議論を深化させるように、今後検討していく予定です。

以下は第一回委員会の議事概要です。

1.日時

2002(平成14)年6月14日(金)13時30分〜15時30分

2.場所

国際協力事業団13A会議室

3.出席者

委員(ただし、池上委員は欠席)及びJICA関係者。なお、外務省及びJBIC(国際協力銀行)がオブザーバーとして参加した。

4.議論の経過

委員の紹介、高島理事の挨拶、委員長の選出に続き、JICAの評価活動の概要と今年度の計画が事務局より発表された。その後、各委員よりJICA事業と評価に関するコメントがなされた。引き続き、事務局より専門委員会の設置について提案があり、今後予定されている現地調査の紹介と次回の予定について説明があった。

概要は以下のとおり。

(1)高島理事の挨拶

JICAは独立行政法人化が決定し、現在業務改革に取り組んでいるところであるが、改革の議論の中で必ず出てくるのが評価の問題であり、評価を一層拡充し、透明な形で実施せよという要求がある。JICAはこれまでも評価に積極的に取り組み、すべて公表してきたところであり、他のドナー、国際機関と比較しても遜色のない評価をやってきたと自負している。しかし、新しい要請の中で、JICAがやってきたことが十分であるかを外部から検討して頂く必要があると考えているところ、次の3点について、皆様の助言を頂ければと考えている。

  • 透明性をこれまで以上に確保するために、現在取り組んでいる「評価」が十分かどうか評価して頂くこと。
  • 研修事業、青年海外協力隊事業、及び個別専門家派遣の事業など、評価の手法が確立していない事業があり、それらをどう評価できるかを検討頂くということ。
  • 独立行政法人化に際して、新しい課題である業績評価にどのように取り組むかということ。

(2)委員長の選出

事務局より、「外務省ODA評価研究会」委員長等の経験を有する牟田委員を委員長として推薦した。出席者からの賛同が得られ、牟田委員が委員長に決定した。

(3)JICA事業と評価に関する各委員からのコメント

各委員より出されたコメントの概要は以下のとおり。

  • 個々の専門家の評価もするべきである。いい仕事をした人にはキャリア・アップの機会を与えるような仕組みが必要であるし、パフォーマンスが悪い人にはきちんと対応することが重要である。
  • 事前評価の際には、特定分野のみならず、その分野の属するセクター全体や世界的なポリシーの潮流などとの関係も検討するべきである。
  • ある分野のプログラムを別の視点から評価してみること、たとえば、保健医療プログラムをジェンダーや紛争解決などの視点から評価することなども、必要ではないだろうか。
  • 評価は組織全体の活性化のツールとして位置付けなければならない。簡素、効率的、コンパクトな仕組みが必要である。地方自治体の行政評価を例にとると、JICAの評価は仕組みが複雑で、配布資料でも文章がたくさん書いてあり、評価と自己弁護の境界が曖昧になっている。JICAの評価のフローチャートではついてくる人がいないのではないか。シンプル、簡素で全員が共有できる仕組みづくりが必要であり、一部の賢い人のツールになっては動かない。
  • 評価が終わっても、プロジェクトの側から防衛のために文書の内容に注文がついてなかなかまとまらず、1年以上かかってしまったケースがあるが、1年以上かかっては、評価そのものの意味がなくなってしまう。自分たちへの指摘をどう受け止めて改善するかを考えて頂きたい。
  • 青年海外協力隊が非常に強く、そこに人材・お金・情報が集まるので、日本のNGOが伸び切れていないという関係になっているのではないか。政策レベルの評価かもしれないが、その点を評価し改善することは重要と考えている。
  • ODAの評価はマトリクスを活用するだけでは十分に評価できないこともある。政治的・社会的観点でどのように評価できるのかを検討していくことが必要である。
  • 評価は原則公開である。差し障りのない報告書を公開するのでは、インパクトのある質の高い評価にはならない。評価のやり方、フィードバックにどれほどJICAがやる気があるのかを考える必要がある。
  • 外部評価者がやる評価と業績評価は違うのか?
    (JICA側回答)業績評価は、JICAが業務実績等の検討材料を提供し、JICA事業のパフォーマンスを評価するもので、従来の外部評価はそのまま残ることになると考えている。
  • JICAは計画の立て方が弱すぎる。悪い事業で後から評価してもうまくいかない。また、評価結果を計画にいかにつなぐかが課題である。そのためには、計画立案者(事業部)に分かりやすい形で評価結果を提示する必要がある。
  • 事業評価年次報告書の出来映えは良いといえるが、評価者がどういう人であるのかを記述した方がよい。また、第三者による評価結果は原文のまま提示し、コメントがあれば併記するように倫理規定を定める必要がある。評価システム全体のアカウンタビリティを高める仕組みを作る必要がある。
  • 援助方法の評価を是非やった方がよい。日本の援助は強いところと弱いところがあり、グループ・チームでの協力は強いが、個人専門家の派遣では様々な理由で十分な成果が挙がらないケースがある。後者については、専門家の資質や努力の欠如の可能性も含めて、援助の仕方が適当かどうかを評価し、日本の強みの出るような援助方法に改善すべきである。
  • 持続可能性は援助において最大の課題である。OECD(経済協力開発機構)のDAC(開発援助委員会)が使用している評価5項目をJICA評価で使用する際に、最貧国のように「持続可能性」の問題が予想される国に対しては、事前段階で、この基準を別格扱いで評価することにより、事業形成の仕方に反映することが考えられる。
  • 当該評価は何のために行うのかという、目的を明確化した評価をするべきである。内部評価が悪いとは思わないが、スキルを向上させる必要がある。
  • JICAの評価の枠組は、内部評価としては、中途半端な感じがする。特に、事業事前評価表の在り方については再検討の余地がある。例えば無償資金協力の事業事前評価表の内容で、必要性、妥当性という評価の視点の個所は、背景の記述になっている。
  • 組織全体を見ていく視点が現在は弱い。プロジェクト評価も、今後、独立行政法人化の中で、業績評価の体系に組み込まれていくことで改善されていくことを期待したい。
  • 評価された結果がプロジェクトに悪影響を与える場合にどう責任をとるのかが明確でない。企業活動であればマーケットによる評価がある。コストとベネフィットという観点で評価がなされるのか見ていきたい。
  • 評価の目的が色々ありすぎて分かりにくい。プロジェクト関係者へのフィードバックと外に向けてのアカウンタビリティ・広報と大きく分けて2つある。それぞれに応じて評価のアプローチが異なるが、多目的に評価しているために総花的になって分かりにくくなっている。目的に応じた整理が必要である。
  • 評価結果が新しいプロジェクトに活かされることが重要である。計測する指標についても指標の数が多ければ良いというものではなく、必要な数(例えば20)に絞ることが経験を積む中で分かってくると思われる。
  • プロジェクトの中身をより詳しく知っている者による評価という点では、内部評価が外部評価より劣っているということは必ずしも当たらない。質を保つという意味では、大学で論文を審査員がチェックするのと同じように、批判する場を設けるということが重要であり、評価においても当てはまる。
  • 色々な立場の人が評価をやるので、ごく少数の特別な人だけが評価を実施できるという方法ではなく、評価のプロでなくとも8割の質は保たれるという評価のスタンダードが必要である。
  • 事前評価がなっていないという話があったが、事業を開始してみたら当初の状況と違っていたというケースがあるので、状況にあわせて修正することが重要である。そのためにも、中間評価が大事で、外部の人もいれて修正をきちんと行うべきである。
    「事前から事後までの一貫した評価を実施すべき」という提言の意味は、評価の視点を一貫すべしという意味である。
  • 評価文化がまだ育っていないと感じている。現在は、評価者と評価される者とが対立するという構図が強すぎるが、他人に評価してもらうことで、自らの活動が見えてくることがあるのではないか。評価文化をつくっていく必要があると考えている。
  • 相手国の実施している事業に対して協力している事業がJICA事業であり、評価の対象物をはっきりさせる必要がある。きちんとした評価を行うためにも、目的と手段の関係で整理した援助体系をつくることが重要である。
  • 評価結果という情報へのアクセスを容易にすることで、フィードバックは向上するはずである。この点、ウェブサイトの活用が重要である。
  • 評価の評価あるいは評価システムを評価することが必要である。

(4)専門委員会の設置の検討

「業績評価専門委員会」と「2次評価専門委員会」の設置と、前者の専門委員会の委員長は古川委員、後者の専門委員は牟田委員の就任を事務局より提案し、委員長により出席者の同意を得た。また、事務局より、各専門委員会を1〜2カ月毎に開催する旨説明があった。

確認された事項は以下のとおり。

  • 「2次評価専門委員会」では、事業評価年次報告書を使用して、各評価項目の評価結果が適切に提示されているか、不足している内容がないか等検討する。また、クロスチェックを兼ねた現地調査を実施する予定。

(5)今後の予定

次回は、11月頃に開催する。

また、専門委員会については、コンサルタント傭上等の準備を事務局側で進め、7月下旬を目処に開催する。

以上