外部有識者事業評価委員会 第15回の概要

1.日時:

平成20年1月24日(木)10時00分〜11時30分

2.場所:

独立行政法人国際協力機構(JICA) 13A会議室

3.出席者:

牟田委員長、青山委員、池上委員、長尾委員、中山委員、三好委員、JICA関係者(黒木理事、総務部、企画・調整部)及びJBIC関係者(オブザーバー参加)

4.議事概要:

(1)事業評価年次報告書2007案(以下、年報)についての報告

冒頭、事務局より最終年報案の報告と併せ、JICA内部で別途議論した結果を以下のとおり紹介した。

  • 年報の有識者による提言などをJICA内部で共有すべく、「年報セミナー」等の実施を検討する。
  • 新JICA体制への移行に向け、「JICAプログラム」評価の手法をより充実させるとともに、その評価結果を今後の「JICAプログラム」の形成にフィードバックしていくよう取り組む。
  • プロジェクトの投入量と成果は投入量が大きくなると成果も高くなるという単純な正比例関係と見てよいのか有識者のご意見を伺いたい。

各委員からのコメントは以下のとおり。

1)年報全般

  • 近年の年報はメッセージ性が強くなってきており、評価結果の活用についても適切に説明されている点は評価できる。
  • プロジェクト関連情報が年報に添付されないで、JICAのホームページ上で閲覧できるようになっているが、外部の研究者等も恒久的に閲覧可能なように少なくとも評価報告書の要約版については、ホームページ上から削除しないことが望まれる。

2)プログラム評価

  • 「JICAプログラム」の評価は少しずつ軌道に乗ってきているという印象を受けている。インドネシアの事例のように過去のプロジェクト群で共通の開発目標のもとに計画されていないような場合でも、開発状況の変化への貢献は評価する努力は必要。さらに、評価のタイミングによっても評価結果が変わるため、その点も今後の検討課題だと考える。
  • インドネシアのプログラム評価の例は、地方分権化という流れの中での地域開発プログラムであるが、分権化では、さらに下位レベルの開発プログラムも存在するため、それを評価の中でどう扱うのかという議論も必要である。
  • アフガニスタンのように紛争後復興期にある国ではすぐに現地で活動することが困難なため、まず日本での研修事業から開始し、効果をあげている。研修も重要な協力方法のひとつであることから、今後プログラム評価を実施する際にはプログラムの一部として捉えてもよいのではないか。
  • アフガニスタンのように緊急支援と開発支援の過渡期にある国に対して支援を行う際に留意すべき点について、過去の案件から教訓や提言を取りまとめたものがあってもよいかもしれない。
  • プログラムアプローチの戦略については、関係機関の間でどのように連携が取れているかが重要である。他スキームとの連携の形態は幾つかあるが、年報で紹介されている案件では、各プログラムを構成するスキームによりその評価にはばらつきがあるように思われる。もう少し統一性をもたせ、プログラム評価の中で的を絞った検証となればより良いだろう。また、グッド・プラクティスなどの実例を盛り込むのも有効であると考える。

3)2次評価結果の活用

  • 2次評価結果に関し、2004年度を境に終了時評価の評点が大きく異なっている要因(評価マニュアル等の策定、組織体制の変化等が要因として推測される)を検証したり、上位目標の検証可能性が低い要因を分析するなど、今後2次評価結果を深めていくことが有用である。

4)評価手法

  • プロジェクト終了後に相手国が自立発展するためには相手国側の自助努力が必要不可欠である。そのためプロジェクト期間中にそれに向けた仕組み作りが行われていたかは、2次評価でも評価項目に取り入れているものの、プロジェクトの計画段階でその仕組み作りが十分に考慮されることが重要である。また、日本の支援の特徴は自助努力に対する支援であることを年報から読み取れるようにした方がよい。さらに、相互説明責任の観点から個々のプロジェクトやプログラムにおいて相手国側からの投入および貢献に対する評価を日本側が適切に実施すべき。他方、終了時評価の段階で自立発展性を評価するのは時期尚早ではないか。
  • パートナーシップやオーナーシップの観点において、日本の特徴を出そうとするのであれば、相手国側の貢献を安易に外部要件とするのではなく、自助努力を重視した評価を実施する必要がある。また、自立発展に向けた相手国側の貢献は協議議事録(R/D)の投入要素に基づいて1次評価で検証可能と考える。
  • パリ宣言の合意事項(オーナーシップやアライメント、マネジメント、相互説明責任等)は援助効果を上げるためのプロセスについて議論を行ったものなので、これをプロセスの評価項目に取り入れるのも一案である。

5)投入量と成果

  • 投入量が少なくても結果が良好で高評価を得る案件もあるなど、昨年度の2次評価で検証した結果からは投入量と成果の間にはあまり相関がないとも考えられる。成果を量的に捉えることが可能であれば、来年度の2次評価で両者の相関を分析することも考えられる。
  • プロジェクトの成果は日本側だけの評価で把握できるものではなく、相手国側の評価結果も踏まえ全体で捉える必要がある。
  • 新JICA発足後の技術協力と円借款を組み合わせた「プログラム」についても、機会があれば投入量と成果の相関関係を分析してみたい。

以上