日本センター初!ベトナム日本人材開発インスティチュートにて第1回国際ビジネス学会が開催

2019年9月30日

 2019年9月18日(水)、ベトナム日本人材開発インスティチュート(以下VJCC)にて、他の日本開発センターに先駆け、初の試みとなる、第1回国際ビジネス学会が「Enhancing Business Development between Vietnam and Japan」をテーマに開催され、伊丹敬介国際大学学長を初めとする基調講演、日本及びベトナムの大学研究者を中心に論文の発表が行われ、現地日系企業23社を含む200名が参加する盛大なものとなりました。

近年、ベトナムと日本の投資及び貿易は大きく伸び続け、両国は戦略的パートナーとして、その関係がますます深化しています。第2次世界大戦の敗戦から力強く蘇り、世界有数の経済大国に成長した日本の経験を学びたいというベトナム企業のニーズに応え、VJCCは、日本式ビジネス手法をベトナム社会に根付かせ、経験を積ませる場として発展しており、2002年より、さまざまビジネス研修コースを提供しています。特に、ベトナムの経営者を対象として2009年から実施している「経営塾」は500人を超す卒塾生を輩出し、各方面で活躍するビジネス人材を生み出しています。今や、日本式経営から発生した「ものづくり」「カイゼン」「5S」「ムダ」はグローバル用語として認識されており、特に日本の精神「モノを作る前にヒトを作れ」は重要な哲学として、ここ、ベトナムでも認識されつつあります。加えて、VJCCでは、2017年から貿易大学の一学部として学位を与える日本式国際ビジネス課程を設置し、2019年には3期生を迎える運びとなりました。

 このような背景を踏まえ、VJCCとしては、満を持して、第1回目の国際ビジネス学会を開催することとなり、冒頭、貿易大学学長ブイ・アン・トゥアン学長は、「年々ベトナムと日本の経済関係は強固に重要になっている、こうした状況下、両国の経済関係をさらに発展させ、かつ国際社会で活躍できる優秀な人材の育成は急務である。こうした状況下、同校は日越両政府やJICAの支援を受け、VJCCの事業を始め、多くのプログラムを提供している。今回こうして日本の有数大学の協力も得て、日越ビジネス関係をより発展させるための学術会議を開催できることを大変光栄に感じる」と語りました。

国際大学 伊丹学長による基調講演の様子

 学長挨拶に続き、3人の識者による基調講演が行われました。まず、日本を代表する経営学者である伊丹敬之国際大学学長による「Japanese-Style Management in Heisei and its Implication to Vietnam」の講演が行われました。伊丹氏は、今年5月に終了した平成時代を振り返り、平成時代の日本式経営についての考察を行い、そこからベトナムが学べる点は何かについて講義を行いました。日本式経営の一番の特長として同氏が取り上げたのが、「人間中心主義」(Peoplism)の考え方です。人間すなわち、顧客であり、社会であり、従業員であり、取引先であり、こうした人々とのつながりや関係性がビジネスの持続的発展に重要かつ不可欠であると説きました。ピンチの時こそ、こうした「人間的」なつながりの有無が結果を左右する事例も示されました。時代が変わっていっても、「人間中心」の考え方、人を尊重し大事にする哲学は不変であるという点が強調されました。

ヴー・ヴィエット・ゴン前ベトナム首相諮問委員長による基調講演の様子

 続いて、前ベトナム首相諮問委員長のヴー・ヴィエット・ゴン博士からは、現在のベトナム経済の動向が語られ、ベトナムの発展には、直接投資依存型から自らの「革新・イノベーション」を生み出す潮流が不可欠である、という点が強調されました。さらに、立教大学の山口和範経営学部長は、立教大学が推進する国際化戦略を実例を持って語り、大学が国際化すること、ひいては国際的に活躍する人材、特にAIが着目される中、データ科学と分析(Data Science and analysis)の力を持つ人材を育成していくことの重要性が強調され、ベトナム社会との連携を求めました。

立教大学 山口和範経営学部長による基調講演の様子

 午後からは、①生産性とグローバル・バリューチェーンマネジメント、②異文化理解と人材育成管理、③日越ビジネスの生産性とサービス向上のための顧客参加、の3つのパラレルセッションが開催され、それぞれ日本とベトナムの研究者が15報の論文を発表し、参加者からの熱心な質疑応答で盛り上がりました。同国際会議は、日本の国際大学、立教大学、東洋大学、関東学院大学、JICA、JETRO、JCCI等の協力の下に実施され、合計38報の論文が提出されました。同論文の中には、VJCCが実施する経営塾の卒塾企業をケース・スタディーとするものもあり、また経営塾の日本人講師とVJCC講師の共著のものもあり、VJCCにより成長したベトナム企業の学術的な分析が進められていること、日本の研究者によるVJCC講師の育成が図られていることを感じられる場ともなりました。同国際会議は今後も2年に1度の頻度で開催する予定で、JICAによる技術協力の成果を学術的に発信する場としても活用していきます。

【画像】

【画像】

全体写真