春季セミナー「ベトナムと日本における国際ビジネス法および関連する法律問題について」の開講

2019年5月15日

講義を聴講している受講生

 2019年5月2日、VJCC(ベトナム日本人材開発インスティチュート)において、VJCC、JICA(国際協力機構)及びRILAP(アジア・環太平洋地域法律事務所)共催による春季セミナーが開講されました。外国企業のベトナムへの投資意欲は依然として高く、またベトナム政府が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に批准したこともあり、国際ビジネスの根幹をなす法体系やそれに付随する手続きへの感心が高まっています。このような状況を受け、これまでJICAによるベトナム法整備支援の技術協力に専門家として関与され、ベトナムの法体系を研究また実務に携わっている講師陣を招き、「ベトナムと日本における国際ビジネス法および関連する法律問題について」をテーマに講義が行われました。貿易大学の国際ビジネス法務学科及び日本式国際ビジネス学科の学生と日系及びベトナム企業の方を対象とし、約30名が聴講しました。

布井講師の講義の様子

集合写真の様子

 このセミナーでは、学部学生向けの国際法入門から企業向けのクロスボーダーM&A(国境を越えた企業合併・買収)や競争法(独占禁止法)といったテーマで日越の比較も取り入れた講義が行われました。
 JICA法整備支援により名古屋大学で学位を取得し弁護士事務所を立ち上げたBui講師は、CPTPPとの関係で、法令とともに細則となる政令や手続きを含めた通達レベルの整備がベトナムの課題となっている点や、知的財産では文字や絵柄による可視的な商標のみが現在の対象となっているが、今後、音や匂いによる商標を保護する法整備が必要となってくる点等を指摘しました。
 一橋大学法学研究科の布井教授は、クロスボーダーM&Aのテーマで、ルノーによる日産自動車への出資、全日空によるベトナム航空への出資等の実例を用い解説するとともに、タイビバレッジがベトナムの元国営企業であるサベコの株式を買収した事例に言及し、受講者の高い関心を集めました。外国市場に参入する際の留意点について、「参入先の投資法の規律について詳しく調べておくことが重要。」「ベトナムの投資法は243の制限分野があり日本に比べて制限が厳しく、株式を簡単に発行できない仕組みになっている。」等の説明がなされました。
 また静岡大学地域法実務実践センター土生教授は、ベトナムの競争法は日本から執行支援を受けているので日本法の影響が大きいこと、両国とも似たような条文があるが市場経済の構造が違うため解釈方法が異なること、ベトナムの企業結合規制は日本に比べ厳しくないこと、などを言及されました。また、これらの本来の制定目的について「企業間の公正な競争を維持するためだけではなく、消費者を保護するためである。」との説明がありました。

 講義内容は多岐にわたっていましたが、受講生からCPTPPに係る雇用法への影響やサベコ株式の買収の法的解釈等、積極的な質問もなされ国際情勢を踏まえた法的枠組みへの関心の高さが伺われました。今回のセミナーは、翌日に日越大学(下記リンク参照)で実施された「特別講座日越における法律に関する諸問題」と共同で企画実施されました。VJCCでは、これからもアドホックに学生や企業の関心の高いテーマを取り上げ、セミナーを開催していきます。