所長あいさつ

2018年の年頭に当たり、ご挨拶を申し上げます。

2017年の振り返り

2017年は、天皇皇后両陛下の御訪越、政府首脳レベルの活発な訪問、地方自治体・大学の連携、様々な人的交流など、日本とベトナムの関係がより一層深まった年でした。経済関係も拡大し、海外直接投資額は日本が第1位となりました。

また昨年、ベトナムの政治と社会は引き続き安定し、経済面では実質経済成長率6.81%(推計)と10年ぶりの高水準を記録し、物価と為替も安定を維持しました。他方、生産性の伸び悩み、環境汚染、不平等、災害、汚職等の課題が顕在化しました。

JICA事業では、着実に成果を上げた事業がある一方、ベトナム政府の複雑な承認手続きや公的債務制約によって一部の事業が停滞しました。代表的な例を挙げると、大規模インフラ案件(ラックフェン港海上橋梁、南北高速道路ダナン・タムキー区間、タクモ水力発電所)が完成し、また、技術協力による経営者・技術者・若者の育成、紙幣印刷インク製造の技術移転は成功を収めました。また、民間連携事業、草の根技術協力、ボランティアも、社会経済開発や市民交流に貢献しています。しかし、その一方で、円借款事業において受注企業に対する支払遅延問題が発生したこと、ホーチミン市やハノイ市の都市鉄道事業等がベトナム政府の承認手続きの遅れに大きな影響を受けたことは、大変残念です。

2018年のJICA事業について

JICAは、ベトナムの社会経済開発、二国間関係の更なる発展のため、以下の3つに留意して、開発協力事業を実施していきます。

第1は、日本政府の方針に沿って「質の高い成長」、「質の高いインフラ整備」を支援することです。ベトナム政府も高成長の中で、成長の「質」(不平等、生産性、環境等)も重視しつつあります。インフラでは、日本の技術を生かした都市鉄道、橋梁、港湾、電力等の進捗を図ります。今年は、北部ベトナム初の大水深港であるラックフェン港の開港、タイビン火力発電所が完成する予定です。大きな懸案である円借款事業の支払遅延問題は、ベトナム政府に継続的に解決を強く求めていきます。ODA事業を受注している日本企業には、品質やスケジュール管理に対する一層の留意をお願い致します。

第2に、様々な分野での人材育成への支援です。経済発展を担う経営者や技術者の育成、日越大学における若者の高等教育、医療・看護人材の育成等を行っています。この他、JICAは全ての事業において人材育成を重視しています。他方、ベトナムでは市場経済化やグッドガバナンスのために法制度が整備されつつありますが、その運用面は改善の余地が大きいと言わざるを得ません。今年から、政策形成や行政運営に携わる政治リーダーや行政官の育成のための大規模な支援を開始します。更に、ボランティアによる日本語教育、日本留学奨学金事業を充実し、両国の相互理解を促進します。

第3に、民間連携事業、草の根技術協力を通じ、新しい発想とアプローチによる開発協力を一層重視していきます。幸いベトナムは、日本の中小企業、地方自治体、大学、NGOの高い関心を集めており、民間連携事業、草の根技術協力ともベトナムの案件数は世界一です。円借款や技術協力を着実に実施しつつ、それだけにとらわれず、日本のビジネス、地方自治体、市民社会の知見を積極的に取り入れていきます。

最後に、JICAは昨年7月、「信頼で世界をつなぐ」(Leading the world with trust)という新しいビジョンを作りました。今年は日越外交関係樹立45周年です。JICAは、ベトナムで先人の方々が築いてきた信頼関係を更に発展させる開発協力を行っていきます。

2018年も、JICA事業に対するご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。

2018年1月18日
(JICAベトナム事務所長 藤田安男)