所長あいさつ

藤田安男JICAベトナム事務所長着任の挨拶

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2016年3月から、国際協力機構(JICA)ベトナム事務所長を務めております藤田安男です。着任に当たり、ご挨拶申し上げます。

ベトナムでは、4月に新政権が成立するとともに、次期5か年計画も国会承認され、政治・経済・社会は新たなステージに入ろうとしています。ベトナム経済は過去10年間、平均6.1%の安定的成長を遂げました。2015年も不安定な世界経済の状況の中、6.7%の経済成長率と1%を下回る低インフレ率を達成しました。そして、ASEAN経済統合やTrans Pacific Partnership(TPP)参加が更なる経済成長の機会として期待される一方、投資環境改善、気候変動対策、財政赤字削減など開発課題への対応が不可欠です。

日本のベトナムに対する開発協力を取り巻く状況も、変化しつつあります。2015年には、日本では「開発協力大綱」が策定され、国際的には、国連のSustainable Development Goals(SDGs)、気候変動枠組に関するパリ協定が採択されました。JICAは「成長と競争力強化」、「ガバナンス強化」、「脆弱性への対応」を柱に、べトナムへの開発協力を実施していますが、内外の環境変化も踏まえ、当面、以下の4点に特に留意して取り組んで参ります。

第1は、新政権の政策や新五か年計画に沿い、様々な制度改革を支援していくことです。私は3月に着任して以降、多くの政府の政策決定者、省のリーダー、有識者の方々にお会いしました。多くの方から行政手続きの迅速化や公共投資の効率化を含む制度改革の必要性に対する強い認識と、実施に向けた熱意を感じました。しかし、日本の経験も示すように、制度改革は決して容易ではありません。日本の知見や教訓を生かし、技術協力で支援中の立法、司法、国営企業・金融部門等の制度改革を着実に進めるとともに、新政権の政策担当者との対話を通じてニーズを把握し、更なる支援を検討していきます。

第2は、開発効果の高い事業を、スピード感を持って実施し、持続的な成果を実現することです。2015年には、ニャッタン橋開通によりノイバイ空港とハノイ市内の所要時間が大幅に短縮されました。ホーチミンとハノイでは都市鉄道の建設が進み、交通混雑の緩和が期待されます。また、ラムドン省での高付加価値農業ビジネス振興等、地方政府が地域の特徴を生かして主導する開発への支援を開始しました。更に、技術協力の成果の普及・展開のため、地方政府の目標達成度に連動し、小規模インフラ整備を円借款で支援する事業も検討中です。このように、JICAがもつ有償資金・無償資金・技術協力を総動員するとともに、新たな仕組みの導入、手続きの迅速化、事業の実施促進を図って参ります。

第3は、日本の民間・公的セクターの知見や技術を活かすことです。日本政府が掲げる「インフラシステム輸出」や「質の高いインフラ・パートナーシップ」は、この分野の日本の優れた技術やノウハウを移転するものです。また、日本の「母子保健手帳」もベトナム全土での普及に向けて動き出しました。日本人専門家やボランティアの派遣、日本国内での研修、日本の自治体やNGOの活動など、日本の知見は高く評価されています。更に、ベトナムはJICAの中小企業海外展開支援事業で最多の案件数を誇る国であり、日本の優れた製品・技術を有する中小企業から注目を集めています。それら中小企業及び1500社以上の在ベトナム日系企業の意見も、ビジネスの現場に根差した貴重なインプットとして、JICAの支援に活かしていきます。

第4は、JICAの開発協力の透明性を高め、説明責任を果たすことです。このため、まず、日本とベトナムの両国民の方々にJICA事業をよりよく理解して頂けるよう、広報のより一層の充実を図ります。また、2016年前半には円借款事業の調達とディスバースの進捗状況の情報公開を開始するなど透明性を高めます。更に、過去の教訓を踏まえ、ODAに係る不正腐敗の再発防止、JICA事業の工事安全対策に取り組む所存です。

JICAは、最大の開発パートナーとして、ベトナム政府をはじめ多くの方々から意見を聞き議論を深め、ベトナムの発展と開発課題に解決に貢献して参ります。JICAの事業に対するご支援とご協力をお願い致します。

ベトナム事務所長
藤田安男