所長あいさつ

2018年夏から2019年初旬まで、日仏友好160周年を記念して、フランスでは「ジャポニスム2018」が開催されました。日本の伝統から現代にいたるまで日本文化の根底に共通して存在する自然を敬い、異なる価値観の調和を尊ぶ「美意識」をテーマに、日本文化の様々な紹介が行われ、多くの方が日本文化を堪能されました。このような文化の中心都市パリに、途上国の経済社会発展を支援しているJICAが、どうして事務所を開設しているのか。それには理由があります。

2015年の国連サミットで国際社会は「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択して、「誰一人取り残さない」を理念として、持続的で、包摂的で、環境に優しい、強靭な経済成長を実現していくことに合意しました。このような経済・社会・環境の全ての側面に配慮した開発を実現していくためには、政府ばかりでなく、国際機関、民間企業、市民社会も含めた世界中の知見やノウハウを共有・活用し、必要となる資金を動員しながら進めていくことが大変重要になります。

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パリには、経済協力開発機構(OECD)の本部などの国際機関があります。OECDの開発援助委員会(DAC)は、途上国との開発協力に関する政府間の調整や勧告を行っています。さらにフランスの援助機関(フランス開発庁:AFD)があり、欧州諸国の関係機関との協議も頻繁に行うことができます。また、例えば気候変動問題への対応を協議する会議(COP21)等、多数の国際会議がパリで開催されます。

このように世界中のステークホルダーや、その知見・ノウハウが集結するパリは、SDGs達成に必要となるより効果的で効率的な開発の在り方や実施方法を、ともに学び、発信し、さらに資金を動員しながら連携して実施できる極めて重要な街であり、私たちはこれらの活動の一翼を担っています。

また、2015年に日仏両首脳の間で「アフリカにおける持続可能な開発、保健及び安全のための日仏計画」が採択されました。この計画には、日仏の企業間の商業及び投資に関する案件や連携を促進し、特に、持続可能な都市の分野で不可欠な質の高いインフラ開発に貢献することも含まれているため、日仏の企業間連携の橋渡しを行うことも、私たちの重要な業務になっています。

これまでの途上国での駐在も含めた経験やネットワークを活用して、国際社会が目指す「誰一人取り残さない」社会を実現するために、皆さんと一緒に考え協力しながら貢献していきたいと考えています。

フランス事務所
所長 稲田 恭輔