所長あいさつ

当事務所は2006年10月にここベオグラードの地に開設されました。
ベオグラードは現在のセルビアの首都ですが、かつて存在した旧ユーゴスラビアの首都でもありました。当事務所は、西バルカンと呼ばれる地域に位置し、旧ユーゴ解体に伴って誕生した国のうちEU未加盟国(北マケドニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ)にアルバニアを加えた6か国を担当しています。

JICAの西バルカン支援は、例えば1957年には旧ユーゴから研修員を受け入れるなど、わが国のODA黎明期からすでに始まっており長い歴史を有しています。支援が本格化するのは東欧諸国の民主化・自由化が始まる1990年以降で、1992年1月には東欧支援の拠点としてウィーンにオーストリア事務所が発足しました。その後、東欧諸国のEU加盟の進展や旧ユーゴにおける度重なる紛争があり、現地の視点に立って、よりきめ細かい援助を実施する必要性が認識されるに至り、同事務所を閉鎖し、現在の事務所が設立されました。

この西バルカンを支援する日本政府の現在の取り組みが、2018年1月に当時の安倍首相が発表された「西バルカン協力イニシアティブ」で、EU加盟を目指す西バルカン各国の経済社会改革の支援や、西バルカンの域内協力の促進を目的としています。このイニシアティブを踏まえつつ、JICAは以下のような分野の事業や活動を二国間協力として各国で展開するとともに、域内各国の国境を越えた連携にも協力しています。

  • 民間セクター開発:EU加盟を見据えた持続的経済成長のために中小企業振興や観光振興への支援、農業や地場産業開発における人材育成
  • 環境管理・保全:大気汚染や廃棄物管理分野でEUの環境基準を達成するため支援、持続可能な森林管理のための支援
  • 経済社会サービスの向上:社会的弱者に直接裨益する支援

ご承知のとおり、2020年以降は新型コロナウィルスの世界的な感染拡大に伴って人の往来も制限され、オンライン中心の活動にせざるを得ないなど、西バルカンにおける事業実施にも大きな制約を受けました。この制約下で、支援の現場における対面での活動の重要性も改めて認識されたところです。一方、ウクライナをめぐる国際情勢を予見することは困難ですが、西バルカン諸国にも影響を及ぼしています。ポストコロナへと時代が移行しする中で、JICAが現場に戻ってきていることを積極的に西バルカン諸国および日本の方々に発信するとともに、双方にとって意義のある協力を継続させて参りたいと考えています。

JICAバルカン事務所
所長 植木 雅浩