JICAバルカン事務所長の福田 創(ふくだ はじめ)です。2021年5月にJICAバルカン事務所次長として着任し、2024年9月にJICAバルカン事務所長に就任しました。
私の最初の西バルカンとの繋がりは、2000年にベオグラードで、紛争により発生した難民(国内避難民)に対する支援に従事したことです(サラエボ、スコピエも訪問)。当時のベオグラードは、空爆の傷跡と経済制裁で、現地の人々は厳しい生活を強いられていましたが、人々の顔には悲壮感よりも、復興に向けた強い意志の力を感じたことが印象的でした。それから約20年後、JICAバルカン事務所員として西バルカンに戻ってきましたが、2000 年の訪問時に感じた人々の強い意志の実現を目の当たりにすることになり、想像以上の復興・めざましい発展ぶりに驚かされるとともに、西バルカンの人々とともにさらなる社会経済発展に取り組める喜びを感じています。
JICAバルカン事務所は2006年10月にここベオグラードの地に開設されました。
ベオグラードは現在のセルビアの首都ですが、かつて存在した旧ユーゴスラビアの首都でもありました。当事務所は、「バルカン」の名称のとおり、西バルカンに位置し旧ユーゴ解体に伴って誕生した国のうちEU未加盟国(北マケドニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ)にアルバニアを加えた6カ国を担当しています。
JICAの西バルカン支援は、例えば1957年には旧ユーゴから研修員を受け入れるなど、我が国のODA黎明期から既に始まっており長い歴史を有しています。西バルカン地域は1990年代の旧ユーゴ解体直後の復興期から開発期に移行し、それに伴い日本政府の支援も無償資金協力から、有償資金協力による社会・経済基盤整備や技術協力による人材育成にシフトしています。また、2019年からはセルビアに海外協力隊(ボランティア)を派遣しています。
日本政府の現在の取り組みが、2018年1月に当時の安部首相が発表された「西バルカン協力イニシアティブ」で、EU加盟を目指す西バルカン各国の経済社会改革の支援や、西バルカンの域内協力の促進を目的としています。このイニシアティブを踏まえつつ、JICAは以下のような分野の事業や活動を二国間協力として各国で展開するとともに、域内各国の国境を越えた連携にも協力しています。
・民間セクター開発:EU加盟を見据えた持続的経済成長のために中小企業振興やスタートアップ企業への支援、観光振興への支援、農業や地場産業開発における人材育成
・環境管理・保全:大気汚染や廃棄物管理分野でEUの環境基準を達成するため支援、持続可能な森林管理のための支援、再生可能エネルギー支援
・経済社会サービスの向上:女性、子供、障がい者を含む社会的弱者に直接裨益する支援
また、近年は欧州におけるニアショアリングの動きも背景に、西バルカン地域への日本企業を含む海外企業の進出・投資も増加しています。こうした活発な民間活動とODAが有意義なパートナーシップを構築し、開発効果を増大させ、成長の加速化を図る取り組みも進めていきます。
今後もJICAは、西バルカンの各国政府や国内外の多様なアクター・パートナーと協議・協力しながら、これまでのつながりや信頼関係を強固なものとし、西バルカンの社会経済発展に貢献していきますので、皆さまのご協力・ご支援を賜りますようお願いいたします。
所長 福田 創
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