ベリーズ青年海外協力隊派遣20周年記念 ベリーズJOCV OB・OGたちの今5)

2021年11月17日

第5回は高橋今日子さん(2004年4月~2006年3月 15-3次隊 村落開発普及員、ダングリガ、ダングリガ町役場)です。ダングリガ町役場を拠点にガリフナ族の文化を中心とした文化振興・収入創出に取り組みました。現在は、2人のお子さんを育てながら、日本学術振興会の特別研究員として東京大学大学院のサステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラムにて博士課程に在籍されています。

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ベリーズの印象 「若く可能性にあふれる国」

ベリーズは、私と同い年で1981年生まれ。そんな国にただならぬ運命を感じ、期待に胸を膨らませて赴任したのを覚えています。当時、独立してからの歴史がまだ少ない国であったことに加え、まちには子供や若者が多い印象で活気にあふれていました。実際、現在の統計でさえも、総人口約40万人に占める生産年齢人口は65%、高齢者は1万人程度(World bank 2019(注1))であり、やはりあの時の「若い」ベリーズという印象は間違っていなかったのかなと思います。
配属先でお世話になった方々も、エネルギッシュに私の隊員活動を支えてくださり、私が提案した活動に対して一緒に考えながら後押ししてくれました。「若さ」ゆえの、お互い「なんでもできる!」という根拠のない自信で、思う存分可能性を試した・拡げることのできた2年間を過ごすことができました。そんな日々の思い出から、私のベリーズの印象は今でも「若く可能性にあふれる国」です。

(注1)worldbank.org - World Bank staff estimates using the World Bank's total population and age/sex distributions of the United Nations Population Division's World Population Prospects: 2019 Revision.

当時の活動内容 ガリフナ文化を中心とした文化振興と収入創出

ダングリガ町役場を拠点にして活動をするということのみ派遣時は決まっていたので、自由に町役場の方々と議論しながら自分の活動内容を組み立てていきました。結局は、ユネスコ無形文化遺産に登録されているガリフナ族の人たちの文化を振興すること、収入創出活動をすることが主たる活動となりました。赴任当時、まずは、まちの文化資産が人々に断片的にしか把握されていないことから文化情報を整理する必要性を感じ、ダングリガ町の「ガリフナ文化マップ」を作成しました。マップには、観光客など外から来た人がすぐ見つけることのできるガリフナ・ミュージアムやお土産屋さんだけではなく、踊りや歌、料理や楽器制作・演奏体験なども掲載し、有形無形の文化資産を可視化しました。文化情報を整理する過程で、ダングリガ町にはガリフナ族だけではなく、マヤやメスチーソ、クレオール、台湾人など様々な人が共存していることを実感し、ガリフナ文化だけでなく、それぞれの文化を尊重し、また総合的に文化に対する意識を高めることで、より文化活動を発展させることに意識を向けてもらおうと、Dangriga Cultural Festivalを企画し開催しました。ここでは、日本人の私もダングリガ町に住んでいる一員ということで日本文化も織り交ぜようと、早稲田大学に協力頂き、大学生もDangriga Cultural Festivalに参加して日本文化を紹介し、現地の人々と交流してもらいました。

ベリーズの活動を経て、国際協力の世界へ。そしてサステイナビリティ学の構築へ。

ベリーズの2年間の隊員活動から、国際協力の分野に強く惹かれ、学問として開発学を勉強したくなり、London School of Economics and Political Science(LSE)の修士課程を修了しました。その後、国際協力の実務経験を積むため、国際協力銀行(JBIC 現JICA)の専門調査員としてエネルギー分野の円借款に従事し、有意義な経験をさせて頂きました。結婚、二人の子供を出産・育児しながら、現在は、日本学術振興会の特別研究員(注2)に採用され、東京大学 新領域創成科学研究科 サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院(GPSS-GLI)(注3)の博士課程に在籍し、サステイナビリティ学(特に持続可能な都市化)について研究をしています。LSEやJICAにいた頃は、途上国に対してどうアプローチするかという見方で世界を見ていましたが、その見方だけでは一元的で目標を達成できないことが多く、先進国も途上国も一体的に捉えたサステイナビリティ学という新しい学問の発展に貢献したく研究を続けています。

青年海外協力隊員の皆さんヘのメッセージ

この投稿を考えながら隊員活動を振り返ると、隊員として派遣して頂いた2年間は、自分の人生の方向性を変え、人生観を大きく変える期間でした。ですので、隊員の皆さんが新型コロナウイルス蔓延のために活動を途中で切りあげて一時帰国中と伺い、皆さんの悔しさを思うと、私も無念でなりません。私自身も、研究活動を進める中で、国際学会が中止になったり、子供の預け先がなく研究時間の確保が極めて困難になるなど、自分の活動をする上で日々試行錯誤をしながら過ごしています。まだまだ続く新型コロナ禍なので、私にとても皆さんにとっても、ゆっくり時間を取りながら自分自身の糧となることを見つけ出し、今後の人生に彩りや厚みを与えてくれる、そんな期間にできるよう、一緒に歩いていけたらと思います。