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所長あいさつ




JICAブータン事務所のホームページへようこそ!




2025年1月にJICAブータン事務所長として着任いたしました、木全(きまた)です。

ブータンには、2008年に初の国政選挙があり民主化が進む中、地方分権化政策の下で地方行政官の能力強化を支援するため、2009年より5,6回出張で訪れたことがあり、まさに「幸せの国」を象徴するような、人々の温かさや真摯な取り組みに魅了された国でした。

ブータンでは、1964年以降長年ブータンの農業生産の拡大に従事しダショー(注:「最高の人」という意味のブータンの爵位)の爵位を得た西岡京治氏の指導やその後累次実施している農業分野の協力が大きな遺産となっています。その後、JICAの事業は、農業・農村開発、インフラ整備、医療・公共サービス支援などの分野で、技術協力(ボランティア、草の根技術協力を含む)、無償資金協力、円借款、そしてボランティアなどの様々な協力形態に発展しています。北部の7,000m級の山々と深い谷が続くブータンにおいて、日本の支援で建設された橋の品質はずば抜けてよく、多くの人々の生活を支えていると評判になっており、ブータン政府またブータンの市民の方々のJICAと日本への大きな期待と信頼を実感しています。

一方で、近年ブータンは「幸せの国」を揺るがしかねない大きな社会的な転換点に立っています。新型コロナが終息した2022年から人々(特に若者)の海外流出が増加し、2022年の1年間だけでもその数は17,000人弱と総人口の約2%に上っています。多くの若者が仕事と裕福さを求めて地方から都市に移住するものの失業率も高く、都市から海外への移住に拍車がかかっている状況です。このままでは、地方そして国全体が過疎化し、国としての存亡も危うくなる事態となります。

こうした状況に対して、これまで支援してきた農業においても生産面だけではなく加工・流通を含めた包括的なバリューチェーンの強化や、重要な外貨獲得源である水力発電所の建設を通じて、産業全体を活性化させ、雇用を創出する支援に発展させていきたいと考えています。地方においても、デジタル化によって医療サービスのアクセスを確保する一方で、コミュニティ自身で地域課題に対処していく能力を向上させていくことで、地方が地方として持続できる社会づくりに貢献していきます。さらに、地球規模で起きている気候変動がブータンの自然環境に深刻な影響をもたらし、地すべりや洪水といった人々の生活を脅かす災害にもなっている状況に対しても、その影響をモニタリングし、適切な適応策がとれるよう支援を検討していきます。

現在、JICA全体では「共創」と「革新」、そして「環流」がキーワードとなっています。ブータン政府はもちろんのこと、ブータンの様々な団体や人々と、そしてブータンと関わってくださる日本の団体、自治体、企業の皆様との橋渡しをさせていただき、ブータンだからこそ実現できる新たな価値を共に創造し、その取り組みや価値をブータン国内と日本の社会の相互に環流させていく事例を一つでも多くお届けできるよう尽力してまいりたいと思います。

JICAはこれまでの協力で得た経験や信頼を基に、引き続きブータンの社会・経済上の課題解決に貢献し、日本とブータンの関係の向上に努めていきます。

JICAブータン事務所長
木全 洋一郎