技術協力プロジェクト「氷河湖決壊洪水(GLOF)を含む洪水予警報能力向上プロジェクト」

背景と目的

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ブータン王国では、世界的な気候変動の影響を受け、近年、これまでに観測されなかったような、鉄砲水やサイクロンなどの暴風雨による災害が多数発生しています。加えて、局所的な豪雨の発生率も高まっており、2009年5月に襲来したサイクロン・アイラでは、ブータン全土で観測史上最大雨量を記録するとともに、死者も伴う近年最悪の暴風災害となりました。

気候変動の影響はヒマラヤ山脈の山岳氷河の減退も招き、結果氷河湖が決壊して起こる洪水被害(氷河湖決壊洪水:GLOF)も見られています。1994年のGLOFでは、死者や歴史的建造物の破壊、農作物や家畜などへの壊滅的な影響を与えました。

これらの状況をふまえ、2009年から2011年まで、ブータン政府、JICA、科学技術振興機構(JST)が共同で、既存氷河湖の目録作成や、氷河が氷河湖になり決壊して洪水となるまでのメカニズムを解明するなどの調査を行いました(「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水(GLOF)に関する研究プロジェクト」)。この研究では、GLOFは前兆現象を伴わず突如下流域に襲来するため、継続的なモニタリングと早期警報システムを構築する必要性が提言され、これがGLOFや洪水の防災に係る具体的な支援である本プロジェクトに繋がっています。

事業概要

  1. 関連機関を巻き込んだGLOFや洪水のリスクアセスメント、都市開発計画、防災、洪水・気象予報の強化を行うことで、有事に緊急情報を共有し、的確に対応する能力を向上する。
  2. パイロット流域(マンデ川、チャムカール川)において、GLOFや洪水を対象とした予警報システムを設置し、運用できるようにする。
  3. パイロット流域におけるGLOF及び洪水災害に対して、中央及び地方レベルでの緊急対応能力を強化する。
【協力期間】
2013年10月から2016年9月まで(3年)
【実施機関】
経済省水文気象局
【専門家派遣】
短期専門家(流域防災計画/洪水予警報、気象/水文、洪水ハザードマップ/GIS、気象予報、等)

事業ハイライト

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2013年に制定されたばかりの防災法に基づき、関連省庁や地方自治体との連携しながら、有事への体制作りが必要になってくるため、このプロジェクトで様々な関連省庁の連携作りを先行して行います。世界気象通信網にブータンを加え、対象流域のコントロールセンターと水文気象局管轄の国家気象予報洪水警報センターをつなぐことで、より正確な情報を迅速に集め、適切に分析し、他省庁や関連機関と共有する、防災体制の確立と主流化が期待されます。