技術協力プロジェクト「園芸作物研究開発・普及支援プロジェクト」

背景と目的

ブータン王国では、人口の約70%が地方に点在し、そのほとんどが農業で生計をたてています。しかし、急峻な地形により耕作地および作目が限定され、また道路や市場などのインフラが未整備で、販売を主眼とした商業的農業は未発達です。特に東部地域では自給自足的な農業が営まれており、西部地域に比べ相対的に開発が遅れています。そうした中、農業省は農家の収入向上の手段の一つとして、果樹や野菜などを換金作物として商業的農業の振興を重要課題として位置付けています。しかし、まだブータンの地理的・地形的条件に適した栽培法の普及や商業化が進んでいないのが現状です。

ブータン政府はわが国に対し、技術協力プロジェクト「東部2県生産技術開発・普及支援計画プロジェクト」を要請し、JICAは2004年から5年間協力を実施しました。その結果、東部2県に適した果樹、高地野菜の園芸技術開発が進み、その可能性が明らかとなりました。

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このような状況の中、ブータン政府は、この成果を他県にスケールアップして実証し、園芸作物の振興と魅力ある農村作りを図るため、技術協力プロジェクト「園芸作物研究開発支援プロジェクト」をわが国に要請し、これを受けて東部6県(モンガル、ルンツェ、タシ・ヤンツェ、ペマガツェル、タシガン、サムドゥプ・ジョンカル)でプロジェクトを実施しています。

事業概要

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本プロジェクトでは、対象の東部6県において、モデル農家やその周辺農家がより収入の得られる園芸農業を実践できるよう、生産、加工、流通にわたる園芸農業に関する技術指導やマニュアルガイドラインの作成、研修/普及活動への支援、種子・種苗提供体制の強化などの様々な活動を行っています。

【協力期間】
2010年3月から2015年3月まで(5年)
【事業予算】
約4.5億円(計画)
【実施機関】
農業省農業局ウェンカル再生可能天然資源研究開発センター
【専門家派遣】
長期専門家(チーフアドバイザー/園芸作物、業務調整/研修/普及)
短期専門家(市場/流通、農産品加工/保存、農家経営、等)

事業ハイライト

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導入、定植から摘果、収穫まで、農家に対し一貫したデモンストレーション研修を通じ、栽培・収穫技術の重要性を伝え、参加者の90%が「自ら実施できる」と実感できるほど、高く密度の濃い研修が繰り返されました。既に初年度に定植した果樹が、実をつけ始めています。また2014年2月には、東部地域の農業開発に対する長年の貢献を高く評価し、国王よりチーフアドバイザーの冨安裕一氏に対し、国家貢献勲章(National Order of Merit)が叙勲されました。