農業林業省と観光局による都市農園開園式に参加

2020年6月1日

5月6日、観光関係者が政府の土地を借りて農業を始める「都市農園」の開園式が開催され、中西部地域園芸農業振興プロジェクトから専門家が参加し、これまでカウンターパートと共に培ってきたプロジェクト技術をまとめた、野菜栽培ガイドブックと農業技術リーフレットを贈呈しました。

ブータンでは、新型コロナウィルスの世界的パンデミックを契機に食糧安全保障への関心が高まり、国内での農産物の自給に向けた取組が進められています。農業林業省は第12次5ヶ年計画予算の前倒し執行を目的に農業振興計画を発表し、食糧備蓄を進める一方で都市農業の推進や耕作放棄地の活用を通じて食糧の安定供給を目指しています。

また、ブータンの主要産業の一つである観光業は、国外からの観光客が入国できない状況が続き大きな打撃を受けています。このため、観光業関係者の中には食糧と収入を確保するため自ら農業を始める方たちが多く出てきています。こうした背景から、農業林業省は環境局と連携し、新たな農業の担い手に対して政府所有地を貸し出して「都市農園」をティンプー市内に開園しました。

この農園の耕作には、10団体から約60名が参加しました。開園式では、主催者である農業林業省及び観光局からは「都市農業が広がることにより、食糧自給につながる。」「同時に現在苦境にある観光業関係者の収入確保にもなる。」「食糧が安定的に供給されることにより、栄養の改善も期待できる。」ことが述べられ、各団体へ野菜の種子が配られました。

また、JICAブータン事務所の渡部所長からは「WHOの定義では、健康は身体的側面、精神的側面、社会的側面から構成されるとするが、農業に従事することによって全ての側面を満たすことができる。」こととスピーチされました。そして、渡部所長と寺本チーフアドバイザーから参加者に対して、プロジェクトが作成した野菜栽培ガイドブックと農業技術リーフレットが贈呈されました。ガイドブックではブータンで栽培可能な野菜を網羅しており、今後ブータン農業の具体的な礎となるでしょう。また、リーフレットは、燻炭や堆肥の作り方から個別の野菜栽培方法、さらには肥料の作り方までがイラスト入りで個別に解説されているもので、初めて農業に取り組む人でも分かりやすい内容です。

開園式後、都市農園ほ場の一角で食糧増産の一環としてプロジェクトが取り組んでいるサツマイモをはじめとした野菜の定植作業を観光業関係者、農業林業省職員や県農業担当職員らが共同で行いました。プロジェクト専門家は作業全体の指導や支援を担当し、通常の地温が6℃程度だったのに対し、マルチシートの効果で20℃以上まで地温が上がっていることを示し、参加者の関心を集めていました。また、同じく燻炭をマルチすることで温度が保たれること、ティンプーは日本では東北北海道地方に近い気候・気温であることを考えて、今回はこのような方法をとっていること等が解説されました。

また、耕起に使用されたのは、日本の無償資金協力等で導入された小型耕転機やトラクターで、狭く段差の激しい農園であるにも関わらず、自在に動き回りながら効率的に畝立てが行われていました。

今回定植した野菜のいくつかは数か月後には収穫する予定で、これらの取組がブータンにおける食糧確保や栄養改善に役立つことが期待されます。

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開園式の様子

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農業局長のあいさつ

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野菜栽培ガイドブックを配布

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都市農園除幕式

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野菜栽培ガイドブック

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農業技術リーフレット

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共同で苗を定植

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日本から供与した小型耕転機

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作業内容を打合せ

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畝立て、有機肥料散布

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マルチの地温測定

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定植方法の指導

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保温キャップを夏野菜へ設置

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マルチに穴を開けて定植