無償資金協力「デジタル地形図整備計画」贈与契約(GA(Grant Agreement))署名

2021年11月22日

2021年11月12日(金)、国民総幸福量委員会において、リンチェン・ワンディ国民総幸福量委員会(GNHC)長官、JICAブータン事務所渡部晃三所長が、本案件贈与契約に署名しました。

ブータンでは、近年、世界的な気候変動の影響を受けた氷河湖決壊による洪水災害をはじめ、鉄砲水、サイクロン、季節性の暴風などの気象災害が増加しています。また、気候変動の影響により急激な水源枯渇や、急速な都市部への人口流入に伴う飲料水の需要増加に起因する水不足等に対する水資源管理等も課題となっています。
こうした状況への対策として、ブータン政府は第12次五か年計画(2018~2023年)において「気候変動や災害に強靭な開発」や「持続的な水の供給」を緊急度の高い成果目標に掲げ、防災対策や水源保全等の強化に取組んでいます。具体的には、洪水ハザードマップ作成や、防災の観点からの土地利用規制情報等を反映させた国家土地利用ゾーニング事業、国家水文気象センターによる水源インベントリ作成の取組み等が行われています。

他方、これら政策立案に向けた各種分析においては、その多くが基盤となる信頼性の高い地理空間情報を必要としています。ブータン全土をカバーする地形図は1960年代に作成された縮尺1/50,000の地形図があるものの、情報が古く精度が低いうえに計測や解析も困難なため、計画立案の足かせとなっています。

こうした状況の解消に向け、ブータン政府は、第12次五か年計画において、全国を対象とした縮尺1/25,000の地理空間情報整備をめざしています。

我が国は、技術協力「国家地理空間情報作成プロジェクト」(2015~2017年)(以下、「前プロジェクト」という)にて、地形図整備と図式(地図記号)仕様の策定能力向上を支援することを目的に、ブータンの経済開発施策として農地整備及びインフラ整備の重点地域とされた緩傾斜地であるブータン南部地域において、縮尺1/25,000の高精度なデジタル地形図の整備等を支援しました。残る北中部地域においては、同縮尺のデジタル地形図の整備は現在まで行われていません。

一方、残された北中部地域では、首都を含む居住区域や過去の被災か所等が多く点在し、上述のとおり防災対策への喫緊の取組みが課題となっています。また、都市部の防災計画策定には、精緻に土地利用が表現された地形図を基に災害リスク情報を整理する必要がありますが、縮尺1/5,000の大縮尺の地形図は整備がなされていません。そのため、ブータン政府が緊急に取組む防災及び水資源管理等の計画立案・分析での活用のためにも、デジタル地形図の早急な整備が求められています。

こうした状況を受け、ブータン政府からは、我が国に対して、北中部地域のうち居住区域や過去の被災か所などの地形図に含むべき緊急性の高い区域を対象とした縮尺1/25,000、及び主要都市を対象とした縮尺1/5,000のデジタル地形図整備に関する無償資金協力が要請されました。本無償資金協力は、ブータンの北中部地域及び主要都市部を対象としたデジタル地形図を整備することにより、ブータンの防災対策及び水資源管理推進に必要な各種開発計画立案のための基盤となる地理空間情報を整備し、もってブータンの都市環境の悪化に対する脆弱性の軽減に寄与ことをめざします。

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