ピロリ菌感染症関連死撲滅に向けた中核拠点形成事業(SATREPS)討議議事録の署名

2022年4月19日

国際協力機構(JICA)は、3月17日、国民総幸福委員会(GNHC)、王立医科大学(KGUMSB)との間で、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)(注)「ピロリ菌感染症関連死撲滅に向けた中核拠点形成事業」に関する討議議事録(Record of Discussions)に署名しました。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、全世界人口の約半数が感染していると推定され、慢性胃炎や胃がんなどを引き起こす大きな原因となっています。この感染症の有効な治療法の一つに除菌治療がありますが,従来の抗生物質による除菌治療が効かない薬剤耐性ピロリ菌の出現が大きな問題となっており,2017年には世界保健機関(WHO)により、早急な対策が必要な感染症として位置づけられています。

ブータンでは、ピロリ菌感染率が7割を超え、薬剤耐性ピロリ菌や、欧米諸国と比べて病原性の高い強毒型ピロリ菌が流行しており、国内の部位別がん死亡原因の第1位、死亡率は世界第3位であるなど、胃がん対策が大きな課題となっています。

しかし、ブータンでは、胃がんの早期診断に必要とされるピロリ菌検査や上部内視鏡検査などの、迅速かつ正確な検査・診断技術と実施体制が十分に整備されていません。また、新たな薬剤耐性菌の出現と蔓延を防止し、適切な除菌治療を行うためのブータンに適した薬剤耐性感受性試験の確立も急務となっています。さらに、慢性的な医療人材不足のため、現在ブータンには内視鏡専門医が8名しかおらず、専門医の育成も喫緊の課題となっています。

本案件は、胃がん対策を最重要開発課題(フラッグシッププログラム)とするブータン政府を支援するものとして、迅速ピロリ菌検査法の開発、適切な除菌治療のための迅速薬剤感受性試験の開発、内視鏡技術研修を通じた人材育成、ピロリ菌感染症に関する全国調査と啓発活動を通して、ピロリ菌感染症に関する適切な検査・診断・治療を提供できる体制を強化するものです。

(注)地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS:Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)とは、環境・エネルギー、生物資源、防災および感染症等をはじめとする地球規模課題に対応し、開発途上国の自立的、持続的な発展を支えるため、日本と開発途上国の大学・研究機関等が連携し、新たな技術の開発・応用や新しい科学的知見獲得のための共同研究を実施するものです。これにより、課題解決を進めるとともに、開発途上国の大学・研究機関等の研究水準の向上と総合的な対処能力の強化を行うことを目指しています。

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署名をするブータン王立医科大学学長。

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署名をする渡部ブータン事務所所長