所長あいさつ

ボリビア多民族国は南アメリカ大陸のほぼ中央部に位置し、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、チリに囲まれた内陸国です。日本の約3倍の面積に、1,151万人が暮らしています。国土は4,000メートル以上のアンデス山脈と台地が連なる高地地域、アンデス東麓の渓谷地域(約3,000~1,000メートル)、熱帯雨林やサバンナが広がる熱帯地域(1,000メートル未満)という、とても豊かな自然環境から成る国です。近年、日本では、奇跡の絶景とも言われるウユニ塩湖でも知られるようになってきました。

日本とボリビアとのつながりということでは、日系人・日系社会の存在が重要な役割を果たしています。1899年に日本人がボリビアに初めて移住して以来、特に農業を中心にボリビアの経済発展に貢献し、国内にはサンファン移住地とオキナワ移住地という二つの日系移住地があります。また2022年の今年、ラパス日本人会は設立100周年の節目の年を迎えました。これまでの日系人の活躍があればこそ、日本および日本人への信頼につながり、ボリビアは非常に親日的な国にもなっています。

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このボリビアにおいて、JICAは前身の海外移住事業団により移住者・日系人支援を開始するとともに、1977年に青年海外協力隊派遣取極、1978年に技術協力協定が締結されて以降、農業、保健医療、教育、水、環境、インフラの各セクターにおいて、「人づくり」を中心に技術協力と資金協力、そしてボランティアを組み合わせた事業を行ってきました。

農業セクターでは、水産養殖、畜産振興、稲作振興などにこれまで力を注ぐとともに、近年では、小規模農家による市場志向型農業の推進(SHEP)や日本でも知名度が高まってきたスーパーフード「キヌア」の持続的な生産に向けた科学技術協力などに取り組んでいます。また、保健医療セクターは、1970年度後半より、消化器疾患分野の診断・治療などの能力強化に取り組み、現在では周辺国に研修を提供するまでに至りました。また、2000年代より母子保健を中心とした地域保健医療の強化に取り組み、乳幼児死亡率の低下等に貢献しています。こうした取組の成果と関係者からの信頼を得て、2022年にはJICAによるリードの下、民間企業を中心とした17団体が加盟する保健分野の産官学連携グループ(GAPPS)が公式に発足しています。

この他にも、日本等で研修を受けた約5,000人のボリビア人が存在し、日系人とともに知日・親日人材として、日本とボリビアとの新たな国際協力や民間ビジネスの振興のための橋渡し役を担うことが期待されています。JICAのビジョン「信頼で世界をつなぐ」のとおり、ボリビアにおいても、JICAは、信頼で日本とボリビアそして中南米をつなぎ、尊厳のある生き方と多様で公正な社会を実現しようとするボリビアの人々の努力を、今後とも支援していきます。

2022年7月4日
ボリビア事務所長 伊藤 圭介