国立プリンセス・マリーナ病院産婦人科におけるJICA技術協力の成果

2020年11月26日

産婦人科はボツワナ南部のクリニックからの紹介を受けた患者を受け入れており、性と生殖に関する健康クリニック、婦人科医、子宮頸がんクリニック、分娩ユニット、出産前病棟、出産後病棟そして性感染症病棟から構成されています。プリンセス・マリーナ病院はボツワナ国内トップ・レファレル病院としてリスクの高い患者や妊産婦を受け入れる専門施設です。

2010年度のJICA研修「母子保健(地域レベルでの妊産婦ケア改善支援)」に参加したベロニカ・モロペさんは、保健省を退職する前までここで8人の助産師とともに性と生殖に関する健康クリニック主任として、出産リスクの高い妊婦と新生児患者の診察を行っていました。産婦人科長のモアチェさんによると、このクリニックのスタッフは優秀で、常に予定人数を上回る患者を受け入れていたそうです。

モロペさんがJICA研修に参加する以前、日本では市町村が実施している妊婦のための出産前教室はボツワナには存在していなかったそうです。妊婦の依頼に対してその都度、医師や看護師が例えば足のむくみなどの訴えに対応していました。そこでモロペさんはボツワナに戻ってきてから出産前教室の導入に取り組みました。様々な出産前後のトピックのために毎週1回2時間行ったそうです。

しかしこの取り組みは当初、妊婦のパートナーである男性たちの抵抗に直面しました。ボツワナでは古くから妊娠は女性の問題であり、男性が関与することはなかったのです。しかし時を経るに従い出産前教室に両親がともに参加するようになり、妊婦とその子どもの健康と幸福に貢献するというよい結果を生み出し始めました。出産前教室と各種データの因果関係については確認できていませんが、妊婦とそのパートナーが妊娠中の旅行や産後ケアに対する正しい知識を身につけることにより、妊産婦や新生児の死亡率が大幅に減少することになりました。妊娠中や出産時のパートナーのサポートは、妊婦にとって健康な赤ちゃんの出産するために必要不可欠です。妊婦がパートナーの協力を得て自分自身のケアを行うことができるので病院の負担軽減につながり、その結果、産婦人科スタッフは入院患者に集中することができました。

プリンセス・マリーナ病院での出産前教室の成功に続いて、首都ハボロネ周辺の産婦人科クリニック看護師のためのワークショップが開催され、さらにフランシスタウン、レタカネ、セレビ・ピクウェのクリニックでも行われました。同病院から他の病院や診療所に異動した看護師たちは全国に出産前教室を広めることになります。保健省はプリンセス・マリーナ病院での出産前教室の効用を認識した後、出産前教育と性と生殖に関する健康情報を国営ボツワナ放送によりテレビ放映しました。

いまは新型コロナウィルス感染症が拡大の影響で出産前教室は中止されていますが、性と生殖に関する健康クリニックのスタッフは、JICA研修とそれを基にしてボツワナ国内に出産前教室を広めたモロペさんがこれまで尽力されてきたことを高く評価しています。彼らは出産時の母子死亡という悲劇を防ぐために妊婦に対する正しい情報の提供と教育の必要性を十分に認識しています。

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Ms. Banyana MOATSHE(看護師長), Ms Khakha WATAY(助産師), Ms. Kegomoditswe MOKGWATLHENG(助産師)