学際的な科目で視野と関心を広げる広島大学のプログラムがもたらす意義(2020年11月)

広島大学でのJICA開発大学院連携(JICA-DSP)の個別プログラム開設において、中心的役割を果たした馬場卓也教授。広島大学のプログラムの特徴や留学生の声、そしてコロナ禍を経て、今後の国際協力において求められる人材像について伺いました。

所属/氏名:広島大学大学院人間社会科学研究科 馬場卓也 教授
研究分野:社会科学/教育学/教科教育学

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広島大学のプログラムの特徴

広島大学における個別プログラムは英語で開講され、日本人学生と留学生が共に学んでいます。「学生たちは留学後も長期にわたって連絡を取り合っていることが多いです。一緒に仕事をしているケースもありますよ」と馬場教授は話します。

プログラムには2つの特徴があります。ひとつは、経済、政策、工学、平和、教育を専門とする国際協力研究科(IDEC:現・人間社会科学研究科および先進理工科学研究科)の教員約30名がかかわって、学際的プログラムを提供していることです。

もうひとつは、広島大学全体の改組とかかわって、一般的には専門分野のみを深く学ぶ大学院において、共通科目が設置されていることです。社会的課題も含めた幅広い領域に関心を持てる研究者の育成を目指しています。JICA-DSPの必須科目として、日本の開発の歴史を学ぶ『日本の開発経験(Japanese Experience of Social Development-Economy, Infrastructure, and Peace/Japanese Experience of Human Development-Culture, Education, and Health)』が開講されています。

留学生が実感した「歴史を学ぶ意義」

プログラムを履修した感想として、「日本の開発の歴史を学んだことによって、自国の歴史を学ぶ意義を認識した」という留学生が多いといいます。馬場教授は、「歴史はただ史実を暗記するだけの学問ではありません。過去から今に続く、ダイナミックなものです。歴史を知ることが今を知ることにつながりますし、物事の捉え方も変わるかもしれません。歴史と向き合わなければ、未来に進めないのではないでしょうか」と歴史の重要性を語ります。

歴史を学ぶことの意義を知ったという過去の留学生のひとりが、ザンビア教育省国立科学センター⾧のベンソン・バンダさんです。日本での学びを土台に自国で活躍しており、2020年には、恩師である馬場教授とともにJICA理事長賞を受賞しました。「いくら学びを得たとしても、一人でできることには限界があります。しかし、複数名でチームを作れば、できることが増えるはずです」と馬場教授。バンダさんはザンビアで"KKチーム"(教材研究チーム)を組織して、教育改革に取り組んでいます。

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「ポストコロナ」時代の人材育成と教育

馬場教授はこれまで、年に10回ほど海外を訪問して現地調査などに取り組んできました。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でほとんど渡航ができていません。現在はオンラインで海外とやりとりをしながら調査・研究を行っており、今後に向けて、現地調査とオンライン調査を併用する新たな方法が必要だと考えています。「日本と現地、両方の文化や背景を十分に理解したうえで間に入る"コーディネータ"のような人材が、今後はますます求められるようになると思います」

また、今後の教育分野の協力のポイントとして、馬場教授は地方での開発経験の共有を挙げます。「国レベルの開発だけに注目していては、カバーしきれない問題が出てくるだろうと考えています。地方都市である広島に留学することで、より小さな地方レベルでの開発経験や文化保護の事例も持ち帰れるようになると、開発途上国の地方の発展にも応用できて理想的ではないでしょうか」

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