2019年4月11日
森山種生 産業開発アドバイザー
株式会社インサイト
東ティモール政府は、石油・天然ガス収入に依存せず経済を多角化することで持続可能な経済成長を目指す戦略を立てています。JICAは東ティモール政府の要請に基づき商工観光省に2015年7月~2016年7月に産業政策アドバイザーを、更に2016年9月~2019年3月にかけて産業開発アドバイザーを派遣し、経済の多角化、すなわち産業化を進める為のアクションプランの立案と実施に必要な支援を行っています。
産業開発の為のアクションプランは農畜水産業、加工食品、流通、観光、金融等の幅広い産業分野に及ぶだけでなく、国内産業の保護・育成を目指した対外貿易政策や規格・基準制度の立案、インドネシア工業省と協力した能力向上訓練の実施、外国資本誘致による輸出産業の育成と二次経済効果が期待できる産業パークの設立推進等、商工観光省だけでなくインドネシアとの南南・三国間協力や省庁をまたぐ施策にも及んでいます。
しかし、東ティモールの国内市場は比較的小規模である一方、高コスト体質であるため輸入品に席巻されていること、また人口の70%・世帯数の73%が農村地帯に住み、その多くが農業に従事しているにも関わらず自給自足型農業に留まっていること、金融機関の仲介機能が未発達で高コストなため民間セクターが育ちにくいこと、更には主権回復後16年の歴史しかない若い国であるため政府機関自体にキャパシティーが不足していること等、産業化への道のりは遠いのが実情です。
このように東ティモールが抱える課題は山積みですが、政府予算の約90%を占めると言われる石油・天然ガス収入の枯渇リスクに備え、JICAは今後も産業開発アドバイザーによる商工観光省をはじめとする政府機関への支援を継続するだけでなく、民間セクターへの直接支援も含め、東ティモールの産業化、ひいては同国経済の多角化に貢献する計画です。
まろやかな味と整腸作用に特徴のある日本の乳酸菌を使ったヨーグルトの生産は、要冷蔵食品であるため輸入品と競合しないメリットがあり、規模は小さいながらも産業として育ちつつあります。
東ティモールではコーヒー豆以外に目立った輸出商品がありません。バージンココナッツオイル(VCO)は豊富に採れるココナッツの実を原料にできることと、日本などの海外市場で健康食品として根強い人気があり、コーヒー豆に次ぐ輸出商品に育成できると考えています。
東ティモール南部には広大な農地が広がり米、とうもろこし、キャッサバ、バナナなどが栽培されていますが、多くは自給自足農業にとどまっています。農産加工産業を育成することで豊かな農業地帯に変える試みを行っています。
東ティモールと空路で結ばれている外国の都市はインドネシアのデンパサール(バリ島)とオーストラリアのダーウィンだけで、航空路線が充実しているデンパサール(バリ島)が事実上のゲートウェーです。世界有数の観光地であるバリ島経由の観光客誘致により観光産業の育成を目指しています。
政府による産業パークの開発と長期でローコストの土地利用権の販売は民間投資(特に海外からの直接投資)を促進するだけでなく、様々な二次経済効果が期待できます。首都ディリに近いティバール新港の後背地に東ティモール初の産業パークを建設する計画を進めています。