「中米統合機構(SICA)諸国におけるシャーガス病対策のための研究および総合的開発に関する経験の共有会」を開催

2023年3月7日

毎年1月30日は、「World Neglected Tropical Diseases Day」です。Neglected Tropical Diseases:NTDs(顧みられない熱帯病)とは、WHOが指定する20の疾患等で、主に熱帯地方に蔓延し途上国の貧困層を苦しめている病気です。
2023年1月30日、エルサルバドルの首都サンサルバドル市内にて、NTDsの一つであるシャーガス病対策のための研究および総合的開発に関する経験共有のための地域セミナーが実施されました。
本地域セミナーは、「SATREPSシャーガス病制圧のための統合的研究開発プロジェクト」の研究機関である教育科学技術省エルサルバドル国立科学技術センター(MINEDUCYT/CICES)が中心となって、中米統合機構(SICA)、中米大学高等審議会(CSUCA)、中米およびドミニカ共和国保健大臣審議会(COMISCA)、JICAにより共同開催されました。

本地域セミナーの目的は、中米地域におけるJICAの技術協力の軌跡の共有および同分野におけるSICA加盟国や他の近隣諸国との経験および意見交換を促進することで、具体的な目標は、以下の5点でした。

1)シャーガス病対策にかかるJICAの中米地域における技術協力の軌跡を共有。
2)エルサルバドルにおけるシャーガス病のベクターコントロールの歴史的発展を提示。
3)エルサルバドルのシャーガス病対策の発展を共有。
4)「SATREPSシャーガス病制圧のための統合的研究開発プロジェクト」の成果を発表。
5)SICA加盟国のシャーガス病研究に関する経験・意見の交換。

オープニングセレモニーでは、アレハンドラ・ナバロ事務局長(COMISCA)、リカルド・アルバレンガ副大臣(エルサルバドル教育・科学技術省)、カルロス・アルバラド事務総長(CSUCA)、有吉勝秀大使(在エルサルバドル日本国大使館)、城戸康年教授(大阪公立大学)および小園勝所長(JICAエルサルバドル事務所)が挨拶を行い、本分野における研究および地域一貫となった取り組みの重要性および今後の期待について述べられました。

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左から、城戸教授、有吉大使、アルバレンガ副大臣、小園所長およびナバロ事務局長

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アルバラド事務総長/オンラインにて出席

最初にNTDsに関する基調講演として、城戸康年教授がアメリカ大陸とアフリカ大陸を中心としたNTDsに苦しめられている国と地域を示すとともに、シャーガス病を公衆衛生上の問題として根絶するために講じなければならない具体的な取り組みを述べました。
次に、橋本謙・元JICA専門家より「中米におけるJICAによるシャーガス病制圧のための技術協力の軌跡」に関する講演がありました。その中で、媒介生物サシガメの戦略的な駆逐と地域住民への啓発活動、そしてそのプロジェクト成果について述べられました。
また、ホセ・ロメロ氏(エルサルバドル保健省の媒介動物監視ユニット)は、1913年からエルサルバドルにて開始されたシャーガス病に関する調査の歴史に加えて、現在の保健省が管轄するシステムによるシャーガス病の疫学調査方法について言及されました。

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会場の様子

続いて、「SATREPSシャーガス病制圧のための統合的研究開発プロジェクト」の研究者から、シャーガス病の原因となる原虫クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)の種の特定と分類、エルサルバドルの植物由来の抗T. cruzi調査などが発表され、これまでプロジェクトで得られた成果を中米各国の参加者に広く紹介する機会となりました。
最後に、本会で最も重要なセッションであるSICA諸国による経験共有が行われました。グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアおよびエルサルバドルの高等教育機関の代表者が参加し、各国で現在まで続けてこられた媒介生物の種に関する研究、感染者の診断および治療薬に関する研究に加え、コミュニティレベルの対策や森林破壊が及ぼすシャーガス病への影響など多岐にわたる情報・経験が共有されました。また、各国の今後の課題についても共通認識がもたれ、課題解決のためには中米各国が戦略的に連携し、研究・教育および地域・社会制度づくりに取り組んでいくことの重要性が確認されました。
セッションを通し、SICA諸国の大学連携の重要性が認識されたことは、本地域セミナーの成果となりました。今後、シャーガス病対策においてエルサルバドル教育科学技術省およびエルサルバドル大学が、課題解決のために主導していくことを期待しています。

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出席者の様子