エチオピア高校数学新教科書開発のためのワークショップを開催しました

2022年5月6日

2022年5月6日から8日までの3日間、エチオピア連邦教育省とJICAの共同のMUSTプロジェクト(科学技術のための算数・数学理解プロジェクト)にて、11年生と12年生の数学教科書開発に携わる大学関係者を対象としたワークショップを実施しました。参加者はアディスアベバ大学、ジンマ大学、ハワサ大学、バハルダール大学からの開発者9名とエチオピア教育省の数学専門家1名です。

MUSTチームは中等数学教科書の質保証を担当しており、新教科書のドラフト版について主に2つの問題に取り組んでいます。1つ目の問題は、教科書が授業で習ったことをすぐに演習できるような単元構成になっていないことです。授業で習ったことをすぐに演習できないのでは、生徒が新しい概念を理解したり、新しい技能を身につけたりすることが難しくなってしまいます。この問題を克服するために、MUSTの日本人専門家は、「A(Activity:活動)-D(Definition:定義)-E(Example:例題)-E(Exercise:演習)」という構造を各授業に適用することを提案しています。2つ目の問題は、例題や練習問題として出される問題が、多くの学生にとって難しすぎるということです。そこで、日本人専門家は、生徒が数学的概念を習得できるよう問題をより基本的で単純なものにすることを提案しています。MUSTではこの2つをそれぞれ「ユニット化」と「問題レベルの適正化」と呼んでいます。

今回のワークショップの目的は、「評価者やMUSTからのコメントを取り入れながら、ユニット化と問題レベルの適正化に取り組むこと」でした。初日には、MUSTの専門家が、ユニット化・問題レベルの適正化についての振り返りと、具体例を示しながらの説明を行いました。その後、2日半の間、執筆者は、コメントに従いドラフトの修正を行いました。一方で、編集者はユニット化が一通り終わった章について、例題と演習問題の対応関係の確認などを行いました。個別作業ではMUSTの専門家が参加者一人ひとりと、担当するユニットに関する問題について議論しました。

毎日最後には、参加者全員が修正とコメント反映の進捗状況を報告し、議論を行いましたが、例題と直接的に対応しない演習問題を削除するというアイデアについて議論が交わされました。教育省の数学専門家は、問題を削除することに強く反対し、十分な量の演習問題を入れるべきだ、と主張しました。エチオピアの大半の生徒が参考とする学習教材にアクセスできず、彼らにとって教科書は手に入れることのできる唯一の教材である、というのが彼の指摘です。編集者は、いくつかのレッスンには十分な問題数がないことを報告し、問題を追加するよう提案しました。また、演習問題が違う箇所に配置されており、適切なトピックの下に配置し直す必要があることも指摘されました。

開発者チームとプロジェクトは、2023年9月からの新教科書導入を目指し、今後も改訂作業継続する予定です。

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MUST副業務主任がWSの目的について説明をした。

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MUST専門家と教科書開発者でよりよい教科書を作成するために意見を交換した。

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教科書開発者同士で議論を交わし、互いを支えあった。

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教育省数学技官とMUSTメンバーは教科書開発を踏まえ、シラバスの内容や順序について議論を行った。