コラボレーションの波に乗る

2019年4月29日

2016年度3次隊 コミュニティ開発 工藤幸介

まず僕はシニアボランティアの岡村さんに声を掛けた。ちなみに僕は同期ということもあり、ナッティーと呼んでいる。僕がナッティーに声をかけたのは、彼女が美術の先生だからである。というのも、ディレダワ大学建築学部の教授と話していた時に、その教授が建築学部の生徒たちにデッサンやデザインの基礎を少しでも理解してもらうための美術の授業を企画したいということを知ったからだ。それなら絵心のない僕よりも遥かにナッティーの方が適任である。ナッティーも以前このボランティア通信に投稿しているのでその活動内容にもぜひとも目を通してみてほしい。絞めたニワトリを両手に不敵な笑顔を浮かべているナッティーの写真を見ることができる。そんなナッティーはこの提案にやる気満々で了承してくれ、ディレダワ大学も本腰を入れて彼女を招待してくれた。結果として、1日と短い時間ではあったが、約200名近い学生たちにデッサンやカラーコーディネーションといった美術の基本となる授業を行うことができた。ディレダワに赴任してから初めてのコラボレーション企画が成功した。

これをきっかけとして、僕は本格的にコラボレーションという波に乗っていった。図書館スタッフは、図書館の建物自体は立派であるが、その立地が市の少し外れに位置しているため住民の認知度が低いことを懸念していた。話を聴いてみると、図書館周辺に住む子どもたちを登録したリストがあり、子どもたちに連絡して図書館に集めることができるという。また、実際に建物を見物してみると、なるほど立派な建物でスペースも持て余している。そこで僕はこの図書館で、子どもたち向けに創造力向上をテーマとしたワークショップを開催しようと思った。この企画はシリーズ化し、服飾や幼児教育、美術、理科教育と様々な隊員がディレダワに来て、ビニール袋を使った洋服づくりや布ペイント、おりがみ、新聞紙を使ったゲーム、絵本の読み聞かせ、似顔絵、理科の実験など多様なワークショップを開催してくれた。その開催数は8回にも上った。このワークショップを通して、普段は「勉強とは黒板の文字をノートに写すこと」だと思っている子どもたちに、勉強することや創造することの楽しさを少しでも伝えることができたのではないかと思っている。僕自身、改めて各隊員の才能の豊かさに触れる機会ともなり、準備段階からたくさんのことを学ばせてもらった。

さらに図書館と同じ要領で、地元NGOのプレジデントと協力して、同様のワークショップを開催することができた。同NGOのターゲットは脆弱な家庭の青少年たちであり、幼児教育の隊員は、本職の対象年齢と異なるにも関わらず、集団で楽しめるゲームや身近な人に感謝の気持ちを伝えるメッセージカードづくりなどを準備してくれて好評を博した。また、このNGOは公衆衛生にも力を入れていたため、これまた以前このボランティア通信にも投稿している川村さん率いる手洗い指導部隊、自称"Wash Wash Girls"をディレダワに召喚した。さすが、エチオピアの保健大臣の前でも披露しただけのことはある。アムハラ語のキャッチーな手洗いソングと華麗な振り付けでディレダワの若者たちをたちまち虜にし、得意のドヤ顔でディレダワを後にしていった。手洗い指導の詳細についてはぜひとも川村さんの記事をご参照ありたい。このように他隊員とのコラボレーションを通じて、可能性の輪が広がっていった。

実はこのコラボレーションの波が押し寄せ始めてきた頃、僕の仕事環境における大きな変化がもう1つあった。それは僕の配属先事務所への、もう1人のコミュニティ開発隊員、ヒロくんの赴任である。彼は元々別の任地に派遣されていたのだが、同地の治安情勢の悪化により首都退避を余儀なくされていた。そしてついに任地変更!ということで、ディレダワに赴任してきてくれたのである。ヒロくんはコミュニティ開発でも特に会計を専門とし、同分野での就労経験もあり、その知識も豊富だった。このことが後に、非常に面白い活動に繋がっていくこととなる。とにかく、ヒロくんという心強い仲間が増え、僕たちはたくさんの素晴らしい隊員たちと一緒にコラボレーション企画を推進していった。やはり考えや悩みを共有し、異なる視点を持ちながらも解決策を共に練れる相手がいるということは何ともありがたいことである。とにかく良い波に乗っていた僕たちは、この時期、ほぼ毎週だれかがディレダワに来ているということに気づいた。

この流れの中、2名の服飾隊員が職業訓練校で裁縫を学ぶ生徒向けに裁縫スキルのワークショップを実施してくれた。この内容が実に好評で、噂が噂を呼び、ついには僕の配属先事務所の女性起業家支援担当者から連絡が来た。そして約1ヶ月後、縫製関係で働く女性起業家たち15名ほどを対象に、5日間のかなり本格的な縫製・裁縫ワークショップを実施することとなったのである。服飾隊員の準備してくれたワークショップは、現地の技術レベルに適したとても内容の濃いもので、実践的なスキルを学ぶ機会が乏しい現地の女性起業家たちにとってこのような機会は間違いなく貴重だったはずである。それはワークショップ中の彼女たちの真剣な眼差しを見ただけでも伝わってきたし、何より、新しい技術を習得して家路につく彼女たちの晴れやかな後ろ姿がその充実感を物語っていた。こうして少しづつではあるが、徐々に事務所外での活動が本来の僕自身の要請内容である零細小事業支援に繋がってきたのである。

やはり人間、動いてみることが大切だと痛感した。淀んでいる水は腐るだけだ。新鮮さを保つには自ら動き、流れを生み出さなくてはいけない。そこで初めて発見できることがあるのだ。今回もそうだった。この怒涛のコラボレーションのうねりの中から、今まさに零細小事業支援に繋がるであろう画期的なアイディアが生まれようとしていた。

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Wash Wash Girlsの手洗い指導

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ナッティーとのコラボレーションでは大学から民族衣装のプレゼントを頂いた

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メッセージカードづくり

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女性起業家向けの服飾ワークショップ